知るコト知るコト

ケノコト独自の視点から、様々な人や場所、物を取材して、WEBをはじめとする色々な場所で公開します。

食材 2017.03.21

『下仁田ねぎの本』からみえる歴史と地域に根づく食材の力

Pocket

私たちの毎日の食卓に欠かせない食材のひとつ、「ねぎ」。

原産地は中国西部ではないかとされているそうです。日本の歴史にも古くから登場しており、約1300年前の歴史書・日本書紀にも「秋葱(あきぎ)」の名前で記述されています。

また、ねぎは各産地の特色が豊かな「地野菜」としても知られており、種類が大変多いことも特徴です。大別すると「白ねぎ(根深ねぎ・長ねぎ)」と「青ねぎ(葉ねぎ)」があり、東日本では白い部分を食べる「白ねぎ」が、西日本は根元まで青く葉身を食べる「青ねぎ」が好まれています。

このように歴史深く数あるねぎの中でも、特に地域の暮らしに根付き、全国的にも有名なもののひとつが、「下仁田ねぎ」。短くて太い白根、扇のように広がる青葉が印象的な「白ねぎ」の一種です。生では非常に辛いものの、加熱することで特有の甘みと柔らかな食感が生まれるため、特に「すき焼き」などの鍋物や、煮物に最適なねぎとして重宝されています。

『下仁田ねぎの本』からみえる歴史と地域に根づく食材の力。すき焼き

下仁田ねぎのふるさと下仁田町―『下仁田ねぎの本』

下仁田ねぎは、その名の通り、群馬県南西部に位置する下仁田町を中心に栽培されています。
長野県軽井沢町など有名観光地に隣接し、2014年に世界遺産に登録された「富岡製糸場と絹産業遺産群」の構成資産のひとつ「荒船風穴」がある町です。妙義山や荒船山など周囲を標高1000メートル級の山々に囲まれたのどかな土地が広がっています。

『下仁田ねぎの本』からみえる歴史と地域に根づく食材の力。ねぎ畑

この町と「下仁田ねぎ」にフォーカスしたご当地本が、『下仁田ねぎの本』(上毛新聞社発行)です。
本書では下仁田ねぎの成り立ちから特徴、歴史上のエピソード、料理レシピ・加工品のほか、下仁田ねぎを愛する人々の暮らしや想いなど、下仁田ねぎに関するあらゆる情報をひもとくことができます。

「下仁田ねぎは下仁田におけ」―『下仁田ねぎの本』

下仁田ねぎは下仁田町とその近郊のごく限られた地域でしか美味しく育たない、ということが本書には語られています。
その昔、群馬県のその他の地域や長野県でも栽培が試みられたものの、育ちが悪かったり、逆に育ちすぎて葉が固くなってしまったりと、いずれも美味しいねぎをつくることができなかったのだとか。

『下仁田ねぎの本』からみえる歴史と地域に根づく食材の力。畑にあるねぎ

品種改良が進んだ現在では、他地域でも栽培できる“新たな下仁田ねぎ”が生まれているそうですが、見た目を似せることはできても、その味・食感までをも似せることはできなかったとのこと。

そのはっきりとした理由は分かりませんが、「下仁田ねぎは下仁田におけ」という言葉もあるようで、その土地でした育たない下仁田ねぎと下仁田町の切っても切り離せない関係性が感じられますね。

「殿様ねぎ」といわれるゆえん―『下仁田ねぎの本』

下仁田ねぎは古くから人々に珍重されていた、ということも綴られています。

江戸時代後期の文化2(1805)年には、なんと江戸幕府城内から地元の名主宛に「ネギ200本至急送れ」という手紙が送られていたとのこと。
その後、江戸幕府への年末年始の贈答品としても利用されるようになり、下仁田ねぎは「殿様ねぎ」とも言われることとなりました。

『下仁田ねぎの本』からみえる歴史と地域に根づく食材の力。殿様ねぎ

昭和9(1934)年と16(1941)年には、皇室にも献上されたという下仁田ねぎ。
私たちのはるか以前の時代に生きた人々も、きっと同じようにその味に舌鼓を打っていたのでしょう。

下仁田ねぎを使った伝統の郷土料理―『下仁田ねぎの本』

地元温泉宿が提供する、下仁田ねぎを使った郷土料理も紹介されています。

熱湯の中にその白根をくぐらせ青葉までひたし、ザクザクと豪快に切って“ぬた”を添えれば「ねぎぬた」に。「ネギって、こんなにおいしかったの!」と、皆さん驚くのだとか。

『下仁田ねぎの本』からみえる歴史と地域に根づく食材の力。ねぎぬた

大きく切った下仁田ねぎと人参の「かきあげ」。下仁田の温泉は全国でも珍しい炭酸泉ということで、その温泉水でかきあげの粉を溶くことでふっくら柔らかく揚がるそうです。
温泉水でつくる天ぷらなんて、なんだかとっても贅沢ですね。
『下仁田ねぎの本』からみえる歴史と地域に根づく食材の力。天ぷら

「いいふうみ」でこぼれる人々の笑顔―『下仁田ねぎの本』

11月23日は「いいふうみ」と語呂合わせできることから、地元農園により「下仁田ねぎの日」と制定され、下仁田町では毎年「農業祭・下仁田ねぎ祭り」を行っています。その見どころは「巨大ねぎま」。旬の下仁田ねぎを使って、参加者のみなさんで長~いねぎまを焼き上げる。地元の方も観光で訪れた方も分け隔てなく、下仁田ねぎを通じて美味しい笑顔でつながる瞬間です。

『下仁田ねぎの本』からみえる歴史と地域に根づく食材の力。ねぎ祭り1

『下仁田ねぎの本』からみえる歴史と地域に根づく食材の力。ねぎ祭り2

『下仁田ねぎの本』からみえる歴史と地域に根づく食材の力。ねぎ祭り3

長い歴史の中で愛され続け、地域の生活や文化に深く根付くほどの力をもった食材「下仁田ねぎ」。ご紹介しきれないほど、下仁田ねぎに関するたくさんのコトが、まだまだ本書にはつまっています。そしてこの本を読んだ後に下仁田ねぎを食べれば、きっといっそう美味しく感じられることでしょう。

『下仁田ねぎの本』からみえる歴史と地域に根づく食材の力。本
出版社:上毛新聞社

記事/たびのたね
12903461_898326880278329_554774143_o
「たびのたね」は、旅行ガイドや観光地を特集した雑誌、日本全国各地の出版社が発行する「ご当地本」を購入できる電子書籍ストアです。
「記事を部分的に欲しい」というニーズにもお応えできるよう、エリアや特集単位でお得に購入できる「抜粋版」電子書籍もラインナップしています。
ホームページ

その他のおすすめ記事

『信州の発酵食』からみえる丁寧な暮らし方のヒント

『信州の発酵食』からみえる丁寧な暮らし方のヒント

『続・名古屋の喫茶店』からみえる名古屋人の喫茶愛と足し算文化

『続・名古屋の喫茶店』からみえる名古屋人の喫茶愛と足し算文化

『家庭でつくる 沖縄の漬物とおやつ』から感じるおばぁのぬくもりと島の飾らない家庭の味

『家庭でつくる 沖縄の漬物とおやつ』から感じるおばぁのぬくもりと島の飾らない家庭の味

Pocket

コメント

コメント欄


次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>

instagram-iconみんなのInstagram

人気の記事

2018.05.13

かける!漬ける!合わせる!色々使える『新玉ねぎの万能ソース』

2018.05.07

卵・乳製品・砂糖不使用『みりんレーズンのスコーン風』

2018.05.06

【参加者募集】初夏のグリーンテーブルリースを作ろうー自由学園明日館・東京ー

2018.05.04

夏本番前にやっておきたい!食費の節約や時短につながる『冷蔵庫整理』

2018.05.02

覚えておきたいおやつレシピ『バナナキャラメルマフィン』

2018.05.01

すりおろして混ぜるだけ!『人参ドレッシング』

2018.04.27

子どもと一緒に楽しむ『端午の節句』

2018.04.21

【締切】【会員優待イベント】初夏のピクニックパーティーを開催します

2018.04.20

発達障害ってなぁに?シリーズ その3『困った行動をこんな風にみてみよう!家庭編』

2018.04.19

日本の暮らし色『晩春を彩る柔らかな藤の色』日本の女性を美しく装ってきた色

編集部おすすめ記事

2018.05.14

買うより幸せ。『焼きのりで簡単!海苔の佃煮』

2018.05.08

「旬花」心にしみるような青い絨毯『ネモフィラ』~皐月の暮らし~

2018.05.04

旬の野菜を味わおう!春の手仕事Part.4『ホワイトアスパラ』

2018.05.02

里山からのお便り『合鴨のお米づくり』その1〜ハートフルシェア田とは〜

2018.04.18

パーソナルショッピングアプリ『pickss』が大幅リニューアル!

2018.04.15

掃除機だけでは限界!プロお墨付き『究極の絨毯お掃除術』

2018.04.13

旬の野菜を味わおう!『若竹煮』

2018.04.12

バイン・ミーにも♪エスニックな香りがおいしい『ベトナム風煮豚』

2018.04.11

乳フリー!ボウル1つで作る『ざくざくチョコナッツクッキー』

2018.04.07

春の行楽に持っていきたい『紅芯大根の手毬寿司』

月間人気記事

2017.03.15

管理栄養士が教える『デトックスウォーターの美容効果と注意点』

2017.07.16

こんな症状は危険かも『スマホのウイルス感染症状7つをチェック』

2017.04.01

脇の下を押すと痛くない?『脇コリの解消は 肩こり解消にもつながる』

2018.03.31

編集部おすすめ『週に1度の作り置きレシピ「玉ねぎ」の常備菜』

2017.04.06

どんなおやつを選択してる?『低GIなお菓子を選んでみよう』

2016.08.21

この夏のBBQの定番間違いなし!『仕込みスペアリブで絶品BBQごちそう』

2017.09.14

指先のカサカサを直したい!『指先の乾燥の原因とケア方法』

2017.08.24

編集部おすすめ『週に1度の作り置きレシピ「キャベツ」の常備菜』

2017.09.05

編集部おすすめ『週に1度の作り置きレシピ「豚肉」の常備菜』

2017.09.19

編集部おすすめ『週に1度の作り置きレシピ「なす」の常備菜』