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新しいコト 2016.10.29

プロダクトデザイナーに聞く、心地よい美しい暮らし『焼き物との新しい付き合い方』GL21後編

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難しいとされてきた焼き物のリサイクル。しかしそれが『GL21プロジェクト』によって浸透し始めています。プロダクトデザイナーとして暮らしに馴染む数々の作品を生み出している、ヨシタ手工業デザインもそのひとつ。ヨシタ手工業デザイン室のTRIPWAREがリサイクルによってつくられています。
そのプロダクトデザイナーである、吉田守孝さんにお話を伺いました。
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GL21プロジェクトの大きなポイントは、美濃の研究技術により土器以外のほとんどのうつわを回収することができ、その食器くずをリサイクルして新しいうつわをつくることが可能なこと。しかしリサイクル土は作り手側の従来の使用環境にそぐわず業界内での需要が少ないこと、消費者からの需要を創造しにくいことが分かりました。

そんな風土のちからでできたリサイクル土を使ってカタチにしたい、関わりたいというプロダクトデザイナーの吉田守孝さん。お話しを伺うと普通とはちょっと異なる、デザイナーならではのモノの見え方がありました。

手仕事と工業製品は近しい!?

ーー今回は取材させていただき、ありがとうございました。実はうつわを買うとき、食器棚の大きさもあるし、このまま買い続けていいのだろうかと悩んでいました。そのタイミングでGL21のことを知って、焼き物好きとして興味をもち岐阜まで同行取材させていただきました。それにしても岐阜の大窯業地帯のスケール感はすごいですね!

吉田守孝さん (以下=ヨシタさん)  そうですね、今回のGL21のプロジェクトでは、岐阜県の瑞浪市にある製陶所で商品を製造してもらっています。焼き物の大量生産の方法は鋳込み(注1)をはじめ様々な技法があって、多くは型を使った製法です。その型は陶磁器の製造工場ではなく、原形や型を専門につくる型屋さんがつくっているのです。分業など産地形成によって大量にものをつくっているわけなんです。
GL21はこういう産地だからこそできる取組みなんですよね。機械力を使って製造する工業製品でも手仕事でも、もののつくりかたや規模が違うだけで、ものづくりの原理はだいたい同じなんです。素材と技術を活かしながら、大きなメーカーも、小さい会社や個人の作家さんも産地形成されている中でものづくりをやっている。

ーーそれは手仕事と工業製品がつながっているということでしょうか?

ヨシタさん そうなんです。実家は「手仕事」の家で分業の様子を見てきたけど、柳事務所(注2)に入り工業デザインの仕事をするようになっていろんな産地に行ったことで「工業製品」もみんな同じように分業していている事がわかった。それが僕の中でそれがかなり面白くて、いまの仕事につながっていると思います。

ーー手仕事と工業製品がつながっていると伺い、確かに産地に行って現場のひとつひとつを見て、私もそう感じます。なんだかヨシタ手工業デザイン室の「手工業」はそんな意味も含まれるように思えてきました。

ヨシタさん あはは。 そうかもしれないね(笑)

注1: 石膏で作った型に液状にした土を流し込んで成形をする焼き物
注2:インダストリアルデザイナー柳宗理の事務所。戦後の日本を代表するインダストリアルデザイナーの1人で日本のデザイン界に大きな功績を残した。

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一度窯元を旅立ち、食卓で使われてまた時を経て戻ってくるというイメージから名付けられた「TRIP WARE」

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今回、市原製陶とともにヨシタ手工業デザイン室「TRIP WARE」の製造を行う小田陶器株式会社

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「TRIP WARE」の最終形について議論を尽くす吉田さんと美濃のプロたち
左からヨシタ手工業デザイン室の吉田さん、製造・販売の市原製陶 金津さん、
製造の一部を担当する小田陶器の天野さん

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回収食器が粉砕される岐阜県土岐市内にある神明リフラックス
GL21プロジェクトも産地内で「回収」「粉砕」「坏土作製」「成形・焼成」「製品・流通」と分業している

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食器が回収され粉砕している現場を見る吉田さん。後ろには大量の回収食器が並んでいる

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無意識に使える、使いやすい生活道具を選ぶ

ーー今回、ヨシタさんはどんなきっかけでGL21プロジェクトに参加されたのですか?

ヨシタさん  GLの取組みにはかなり前から関心があり、GLの中心人物でもある岐阜県セラミックス研究所の長谷川善一さんと交流は継続していました。非常に良い取組みだと思っていたので、今回、長谷川さんからリサイクル土をつかった商品開発のお話をいただき、すぐに参加を決めました。

ーーモノをつくるいちばん最初は何を考えるのでしょうか?

ヨシタさん 素材として面白いと感じるかどうかですよね。そこには新しいものができるかもしれないという考えがあります。あとは日本的な習慣を大事にしたい、手で使っている様子がちゃんと浮かぶというのも僕のつくりたい道具です。モノをつくるときは、ちゃんと自分が欲しいと思うもの。それは使うだけじゃなくて、洗うことや棚にしまうときのことも考えます。

ーー確かに「使う」ってモノを管理することも含まれますね。洗う時や食器棚にしまう時なども、使いやすさの判断になっていて、結局は商品を気に入る理由になっているのですよね。

ヨシタさん そうなんです。道具は使いやすく、無意識に使ってしまうものじゃないといけない。そこまで用途に忠実に使われるものじゃないんですよ。置かれているときにもう機能しているんですね。

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ーー言われてみるといい道具は無意識に使っていますね。使ってみないとわからない、見えないデザインなんですよね。

ヨシタさん 見えているところは結果なのです。デザインは見えないところをカタチにするのが大事。極端に言えば、使い勝手の良さだけを追求しても必ずしも美しくはなりません。使いやすさと美しさの両方を高い次元でバランスさせたいんです。

ーーなるほど、ヨシタさんのものづくりのヒントに近づいてきました。では、うつわなど生活道具の進化ってあるのでしょうか?

ヨシタさん いまの価値観というのがあって、例えばレードルだとキッチンだけじゃなくてテーブルでも使う。盛り付けて配膳して食べることもあるし、食卓の中で調理して食べる生活は多様化している。両方使えるサイズ感が大事だと考えたり。また、道具がなければあるもので代用したり、少々使いにくくても人間は柔軟で道具に寄り添って対応したりします。でもあるとき良い道具に出会うと、今まで使っていたのは何だったんだろうと気付くんですね。

ーーなるほどですね。”人間は道具に寄り添ってしまう”ですか。確かに言われてみるとそうかもしれないですね。では、なぜそこから使いやすさを供えた洗練されたものができるんでしょうか?

ヨシタさん ものの捉え方をそぎ落とすんです。余計なものをはずして明確にする。この間ナイフをつくったんですけど、ナイフじゃなくて「切る道具」と目的だけを考えるんですね。

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ヨシタ手工業デザイン室 ラウンドバーシリーズの新作 ナイフ

「洗う」「棚にしまう」「使う」を考えて、
「捨てる」にも注目する

ーー今回の取材で知ったのですが、現在美濃焼で使われている粘土〔(蛙目(がえろめ)粘土・木節(きぶし)粘土〕は、700万年前から300万年前ごろまで東海地方にあった「東海湖」という湖に堆積したものとお聞きしました。
焼き物は、世界で最も古いといわれる低火度で焼かれた縄文土器(1万年以上前)が、いまだ土にもどらずそのまま出土するそうですね。簡単には土にもどらないことが理解できます。
そんな中、今回ヨシタさんが食器を「捨てる」部分に注目して、リサイクル土を使ってつくったのは「TRIP WARE 旅するうつわ」という保存容器ですね。

ヨシタさん 保存容器ではなくて、保存性の機能のある食器をデザインしました。生活の実態を考えたとき、良く使われている保存容器はふつうに食卓に出したくないものが多い。家でごはんをつくる層でうつわを気にする人に使ってもらいたいと考えました。保存やあたために使うラップは非常に便利だけれど何度も使えるものじゃないし、これもまた捨てなきゃいけない。結局そこからうつわに盛ったりしていると、洗い物も増えていく。食卓と冷蔵庫の行き来を何回もする、保存性の機能を持った食器ができないかと考えました。完全に密閉できなくても乾燥を防げたり、置いてても虫が寄らない、保存機能があるふだん使いの器として提案するのが「TRIP WARE」です。

ーーフタ付きの陶器だからこその使い方ができそうですね。大きいサイズはお漬物やおかず用、小さいサイズは茶碗蒸しやプリンなどに良さそう。

ヨシタさん 「家族の食事の時間がずれてしまう」「多めに作ってまた明日のおかずに」など、保存容器が欲しいシーンはいろいろあります。そんな時に味気なくならず、食器としても使えるうつわとして今回デザインしました。

ーー私はうつわが好きで、まだまだ焼き物を購入したい気持ちがたくさんあります。洗い物も少なくなるのも嬉しいし、保存容器をうつわに変えるところから始めようと思います! 焼き物って本当に食卓の雰囲気を変えてくれますよね。

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フタもお皿として使え、盛り付けたその上にボウルを伏せたら盛り付けそのままで保存が可能

ーー今回のリサイクル土でつくった「TRIP WARE」の色はどうやって決めたんでしょうか?

ヨシタさん 色は家で長年買い集めてきた焼き物を参考に考えました。奥さんのセレクトが多いから、民芸が多いですね。

ーーそうだったんですね、やわらかい感じもあってうつわ好きの食卓に合いそうな色合いですね。 3色の中からどの保存容器を使うか選ぶのも楽しそうです!

ヨシタさん ありがとうございます。

ーー今回のGL21プロジェクトを知って、いま持っているうつわを大事に使うこと、保存容器をうつわに変えたりうつわを回収してもらったり、GL21の取組みに参加すること、道具の良さを見極めてムダな買い物がないようにしたいと思います。

ヨシタさん 「用の美」(注3)という、使い勝手を追求していくとものは自然に美しくなっている、という言葉があるけれど、この言葉の「用」をふみこんで考えるように、ものをつくるときに、使いやすいものは試さなきゃいけないし、使い勝手の違いを知ることが大事だと思っています。柳宗理先生は世の中に対して正しい仕事をしていた。正しいというのは、推考に推考を重ねてつくる必要があるかどうか判断する。つくる必要があるかどうかの判断は、だんだんものがつまらないものにみえてくるという点なんです。僕は柳先生が目標だし、そういう正しい仕事をしていきたいですね。

注3:日常的な暮らしの中で使われてきた手仕事の日用品の中に「用の美」を見出し、活用する日本独自の運動を民芸運動という

ヨシタ手工業デザイン室 吉田守孝

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1965年、石川県小松市生まれ。金沢美術工芸大学工業デザイン科を卒業後、(財)柳工業デザイン研究会に入所。財)柳工業デザイン研究会所員として、佐藤商事(株)「柳宗理デザイン」シリーズのステンレス鍋、フライパン、キッチンツール、ストレーナー、カトラリー、包丁、耐熱ガラスボール等の製品デザインに関わる。
2011年12月にヨシタ手工業デザイン室を設立。セルフプロデュースにより、ステンレスラウンドバー素材を使用したキッチンツールや木製トレイ、コドモノコトプロジェクトのお茶碗とお椀「くーわん」と「ふーわん」のデザインを行う。暮らしの中での道具の立ち位置を深く掘り下げ、素材の良さを引出したデザインは、現代のプロダクトデザインとしても注目されている。http://www.yoshitadesign.com/

使うことで日常に彩りを見せてくれるうつわたち。食卓を囲む時間に、わたしたちの心や食事を楽しませてくれますが、それらがリサイクルによって生み出され、環境に優しいものたちだったら、もっともっと、優しい気持ちで食事を迎えられるのかもしれませんね。

<前編はこちら>うつわ好きなら知っておきたい!焼き物の大産地 『美濃焼のエコプロジェクト GL21前編』
<中編はこちら>ふだん使いの食器「美濃焼」から取り組む『うつわリサイクル』

 

記事/REALJAPANPROJECT
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REALJAPANPROJECT
REALJAPANPROJECTは日本のものづくり・地域産業のブランドづくりをサポートするプロジェクト。
“日本のものづくりをもっと身近に”という想いから、2009年にプロジェクトを発足し、日本各地のものづくりの現場に足を運びながら、ものづくりの本質を未来へとつないでいきます。

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