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取材 2016.11.24

100人100色ー「誰もが自分を癒やす力を持っている」悩みを抱える親子の心に寄り添う臨床心理士ー坂野由美子さんのお話し

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それぞれの立場、個々の考え方によって「働く」ことへのスタンスは異なります。正解なんてありません。
「100人100色」では、100人の「働く女性」に登場いただき、等身大の姿を語っていただきます。
年齢、環境、キャリア全ての背景が異なる人たちの100とおりの『想いや生き方』の中に、きっとあなた自身にとってのヒントが見えてくるはずです。

今回は東京都世田谷区在住の坂野由美子さん(41)をご紹介します。
学校での問題に悩む子どもや、子育てのさまざまな局面に悩むママ。心に悩みを抱えたときに、心を許して話せる場があったら……そんな風に考える人も多いのではないでしょうか。坂野さんは臨床心理士として、さまざまな場で悩める親子に手を差し伸べてきました。英語力を活かして異文化不適応の子どもへのカウンセリングを行うなど、活動の場を広げる坂野さんの仕事への思いを語っていただきました。

 

―臨床心理士として活躍中の坂野さん。これまでの仕事の道のりについて教えて下さい。

大学・大学院で心理学を学び、20代で「臨床心理士」の資格を取りました。当時はまだマイナーな仕事で、誰も「臨床心理士」という名前すら知らない時代でした。

社会的な地位もなく、経験を積むためにも、いろんな場で非常勤の仕事を掛け持ちして働きました。区の教育相談、小児科、保健所と、さまざまな場で、さまざまな年齢の親子と出会いました。今思うと、その経験はとても役に立っています。
30代では、外国人家族のためのカウンセリングセンターに関わり、異文化不適応や英語でのカウンセリングにも挑戦しました。私自身、幼少時に10年ほど父の仕事の関係でアメリカに暮らした経験があり、海外帰国子女なんです。だからこれは、その時の経験と仕事を合わせた試みですね。
現在は、東京都の幼稚園から高校までの私立一貫校に勤め、英語でカウンセリングの必要な生徒のケアも含めて学校臨床に従事しています。

2年前より東京・神楽坂にて、火曜日限定で子どものこと・家族のことで悩んでいるママのための相談室「TherapyRoomこころん神楽坂」を開業しました。相談室には、家族の問題を抱えるママ、不登校を抱えるママ、思春期の課題に悩むママなど、我が子のために、そして我が子を通して自分自身も成長しようと頑張っているママが来てくれています。最近は思春期の子どもを抱えるママ向けの思春期講座なども定期的に開催しています。

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▶「TherapyRoomこころん神楽坂」の相談室
 

―これまでで一番忘れられない仕事のエピソードをお聞かせください。

駆け出しの頃に、かなり深刻なケースのカウンセリングを担当していました。私自身がまだ大学院卒業したての青二才だったので(笑)、クライアントさんの心の揺れに一緒にぐらぐらと揺れながらのセッションの連続でした。

その時、忘れられなかったのは私が所属する職場のサポートです。通常自分が担当するケースは自分で責任を持って対応するのですが、このときに、私のカウンセリング技術のサポートを諸先輩が、私の心のサポートを同僚が、そして、それを組織として上司が見守ってくれました。このケースを通して、自分の実力でなんだって頑張れば乗り越えられると過信していた私は、どんなことも自分ひとりの力ではないということ、ひとりでやらなくてもよいということを学ばせてもらい、感謝の気持ちでいっぱいでした。それからは、どの職場でも常にいろんな人の力を借りて仕事ができていることを意識するようにしています。

―これまでにぶつかった人生の壁はありますか?

30歳の時に離婚を経験しました。親子や家族関係の専門家でもあるのに自分自身はうまくいかなかった……と当時はとても自信をなくし、周囲の反応ばかり気にしてしまう時期もありました。この頃は仕事も将来のことも不安で仕方がなかったですね。
でも、家族や友人がどんな私でもそのまま受け入れてくれたことで、不安いっぱいで情けない自分を初めて受け入れることができました。大切な人を失った悲しさと向き合う時間もたくさんもらいました。人に心尽くしてサポートしてもらう体験を経たおかげで、本当の意味で等身大の自分を好きになりました。不思議と仕事もどんどんチャンスが増え、プライベートにも転機が訪れました。セラピーは以前に比べて幅も広がっていったし、何より、セラピストとして心を平穏に保つ力もつきました。今があるのは、あの時の体験と時間のおかげかもしれません。

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▶カウンセリングでは、まずは笑顔で接することを心がけている
 

―いまチャレンジしていること、これからチャレンジしたいことはありますか?

今年の4月からFacebookで「ママと子の交換日記」というページを立ち上げました。臨床心理士の立場から、親子に関する記事をあれこれ書いて発信しています。日々頑張っているママがホッと肩の力を抜いて一息つける——そんな場になってくれたらという想いをこめて。
「ママと子の交換日記」の延長で、いつか親向けの本を書いたり、絵本を作ったり、親子でコミュニケーションを育むためのアプリを作ったりということにチャレンジしてみたいです。出版のこと、アプリ開発はまだまだ私の専門外で、雲の上のような話ですが、多くの親子が癒されたり、愛を感じたり、幸せになってくれることをいつも応援したいので、きっかけを作れるように頑張っていきたいですね。

また、今年AEDPというアメリカの心理療法に出会い、そのすばらしい手法に一目惚れしました。現在、定期的にニューヨークまで学びに行っています。次は12月に1週間、来年の4月にもう1週間集中トレーニングです。日本だけでなく、世界の心理臨床家ともつながっていきたいし、広い視野で親子の心理療法、親子の幸せをとらえていきたいです。日本にはまだAEDP認定セラピストがいないので、トレーニングを積んで、資格をとって、日本でも活用できるようにしていきたいなと思っています。

―坂野さんにとって「働く」こととはなんですか?

私にとって「働く」とは、「人の光を見ること」です。誰にでも自分を癒す力があります。私はその力を心底信じてクライアントさんと対面するので、働く(カウンセリングをする)=「人の光を見ること」だと思っています。こんなやりがいがあり、かけがえのない体験は他にないのではないかと思います。特に子どもたちは、純粋なだけに本質をハートでわかっているので、こちらが学ぶことも多いです。私自身も成長させてもらい、みんなの光を見せてもらえる、とても魅力的な仕事です。もう他の仕事はできませんね(笑)。

―坂野さんのプライベートについて教えて下さい。最近夢中になっていることはありますか?

4年前に友人に誘われて乗鞍岳に登ったところ、数年来の当たり年の紅葉を目の当たりにし、その時の美しさにすっかり魅了されました。それ以来、山登りにはまっています。ここ数年はテント登山にはまり、大きな荷物を背負って頂上を目指しています。去年は奥穂高岳を登り、雄大な北アルプスの山々の景色を前にして、ますます自然の大きさに心奪われました。まだまだ登りたい山がたくさんあるので、体力をつけたいですね。山登りを通じて、ボルダリングと出会ったり、ランニングが好きになったり、それからカメラにも興味が出てきました。山を通して、40代で新たにたくさんの山友達にも恵まれました。

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▶雪渓にて
 
ただ、何事もあまりストイックにならないように気をつけています。自分が楽しむこと、その喜びを分かち合う仲間との時間が何よりの息抜きになっているので、その点はゆるくをモットーに(笑)。

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▶雄大な北アルプスの姿に魅了される
 

―ご自身の悩みや課題はありますか?

私は睡眠をしっかりと取らないと体力がもたない体質で「時間が足りない!!」とついつい思っちゃうんです。寝ないであの本読みたいなと思っても、気づいたら夢の中……。でも、結局は質の良い睡眠が取れているから、こうして元気に働いたり、遊んだりできているのだと思います。会いたい人と会いたいし、いろんな勉強もしたいし、山も行きたい、ゴロゴロしたい、カフェでのんびりしたい、などなどやりたいことはいつもたくさん。時間の使い方が、自分にとってはいつも課題ですね。

―幸せだと思う時間や瞬間はどんなときですか?

実家がすぐ近所なのがとても幸せです。実家には、弟家族も暮らしているので、1歳になる姪っ子と遊んで、飼っているイヌやネコに癒されています。私にとって実家は温泉につかるような、優しい温かいぬくもりです。

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▶実家の愛猫キキ
 
親子のカウンセリングをする上でも、自分自身の家族関係に愛が詰まっていることはとても大きなエネルギーです。私が関わる子どもたちにも、このエネルギーを還していきたいなと思っています。

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▶ 実家の愛犬ララ
 

―坂野さんが人生で一番大切にしていることはなんですか?

「人」です。家族、友人、職場の仲間、クライアントさん、すべてです。人との出会いは私のかけがえのない財産です。私には子どもがいませんが、これまで出会った何千人という子どもたちが自分の子どもだと思っているくらい。あと大切にしているのは、仕事も大切ですが同じくらいオフの時間も大事にしています。人生に「遊び」もとても大事。土日は山に行ったり、家族と過ごしたり、友人たちと遊びに出かけたり、みんなでマラソン大会に出たりと、仕事とは別にワクワクすることを生活に取り入れています。

 
 
柔らかな、人を包み込むような笑顔が印象的な坂野さん。「最近は、年季が入ってしわくちゃスマイル(笑)ですが、私の笑顔を見たいと来てくださるクライアントさんがたくさんいる限りは、笑顔を絶やさず続けていきたいです」と、茶目っ気たっぷりに語ります。「どんなに辛く困難な問題を抱えていても、どんな方にも“より成長していきたい”という気持ちとパワーがあります」その力を信じて、クライアントの心に寄り添う坂野さん。彼女の信念が、人の心の奥深くに眠るパワーを引き出していくのでしょう。

 
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いろんな女性の働く・暮らすを知ること 『100人100色』は、SAISON CHIENOWAとケノコトの共同記事です。

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