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取材 2016.11.26

100人100色ー被災者の言葉がきっかけに。独立後に戻った地元で、数々の縁を見つけたお花屋さん―植木淳子さんのお話し


それぞれの立場、個々の考え方によって「働く」ことへのスタンスは異なります。正解なんてありません。
「100人100色」では、100人の「働く女性」に登場いただき、等身大の姿を語っていただきます。
年齢、環境、キャリア全ての背景が異なる人たちの100とおりの『想いや生き方』の中に、きっとあなた自身にとってのヒントが見えてくるはずです。

今回は、ご自身を「まじめな花屋」と表現する、プリザーブドフラワーのフラワーアレンジメント作家や講師として活動されている植木淳子さん(47)をご紹介します。
会社を辞めて戻った地元で、日々人との縁を感じているという植木さん。独立をしてからは、なかなか伸びない売り上げに落ち込んだこともあるそうですが、どのように乗り越え、どのような将来を思い描いているのか語っていただきました。

 

―仕事の内容やそのお仕事をされるに至った経緯を教えてください。

趣味でフラワーアレンジメントを習い始めたのは20歳の頃です。
講師の資格まで取りましたが、当時はバブル絶頂期で、フラワーアレンジメント教室は講師の資格を取った方たちであふれ、講師どころかアシスタントの空きもない状況でした。そういった状況から講師になるのをあきらめてしばらくフラワーアレンジメントから離れていたのですが、妹の結婚式でブーケを作ったことがありました。いつも見慣れた妹がウェディングドレスを着て私の作ったブーケを持って美しく輝いていました。それを見てとても感動し、再びフラワーアレンジメントをしたい、ウェディングブーケを作りたいと思うようになりました。

そのしばらく後に、電機メーカーで働き始めました。たまたまデジタルカメラの部署に配属になり、その頃はまだそれほど普及していなかったデジタルカメラを扱うことができました。周りにパソコンに詳しい人が多かったので、「私にもホームページって作れるのかな?」と聞いたところ「作れるよ」と言われたので、デジカメでホームページ用の写真は撮れるし、花の市場も職場から近かったので、会社員として働きながらホームページを開設して生花のウェディングブーケの注文を取り始めました。
だた、花で食べて行くのが大変なのはわかっていたので、働きながら趣味の延長のような感じでずっとやっていました。「いつか嫁に行ったら本格的にやろう」と思っていたんです。

そんな中、2011年に東日本大震災が起き、その後三陸の仮設住宅で何回かプリザーブドフラワーのレッスンをさせていただきました。大変な時でも、花に触れている間は皆さん夢中になって楽しんでくださるのを見て、改めて花の持つ力を感じました。

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▶昨年開催した、釜石でのワークショップでの集合写真
 
一緒に三陸に行っていた報道カメラマンの友人は、本来は動物や海の生物を撮るのが好きな子だったので、被災した現実を目にして精神的にまいっていました。あるとき、被災したお母さんが友人に語りかけたんです。
「明日、津波が来るとは思わなかった。だから、今日好きな写真を撮りなさい。何も怖がることはないんだよ。」と。
みんなで泣きながら聞きました。

この出来事が、会社を辞める大きなきっかけの一つです。今は、まだ花の仕事だけで食べていけるほどにはなっていませんが、会社を辞めて花屋として独立、その後実家に戻り、家族にはかなり助けてもらっています。また、会社員時代は地元に友達はほとんどいませんでしたが、今では地元にたくさんの友達ができ、それも嬉しく思っています。

―これまでにぶつかった壁はありますか?そしてどう乗り越えましたか?

なかなか利益が伸びず「どうしたら売り上げを伸ばせるか」ということばかり考えて、メンタル的に苦しんでしまい、「このままでは病んでしまう」と思った時期がありました。

その頃、経営コンサルティングを受けていたのですが、その方から「自分に向いていることは大して努力をしなくてもうまく行くけど、向いていないことをやっていると、頑張っても頑張ってもなかなかうまく行かない。」ということを言われました。
そして「どうせ赤字なら一度休んで、バイトでもしてみたら? 息抜きになるし、新しい何かが見えるかも」と言われて、開き直りました。

それまでは、「自分が食べていけていないのに、人の心配をしている場合じゃない」と、震災後に通っていた三陸にも行かなくなったりと、おせっかいな自分を封印していましたが、コンサルタントの方のアドバイスから「自分に向いていること」が何かを考えるようになりました。その時思った、自分が得意なことは、人の応援をすること。
「おせっかいな性格の自分に正直になろう、おせっかいなのは変わらないんだから、おせっかい全開で行こう」と花屋以外の活動もしようと思うようになりました。

そこから仲間や家族に助けてもらいながらアツマル in SAKURAというイベントを開催するようになりました。アツマル in SAKURAは、地元佐倉やその周辺で活躍する店舗や作家さんに出店していただくイベントです。また、三陸でのワークショップも同年に再開しました。
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▶昨年から開催しているアツマル in SAKURAにて
 
また友人でフリーダイバーの岡本美鈴選手を支援する「岡本美鈴サポーターズクラブ」を2010年に立ち上げ、事務局長をつとめています。
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▶岡本美鈴サポーターズクラブ、懇親会での集合写真
 
世界一を目指してストイックに努力する友人が身近にいて、そのサポートをすることができるのは、非常に貴重な経験です。
マイナースポーツはスポンサーを獲得することが難しく、海外遠征や日頃のトレーニング、安全対策等に係る費用は全て自己負担となってしまいます。
少しでも岡本選手を支援できるよう、クラブ会員の募集活動をしています。

こんな風に自分を受け入れ、仕事以外の活動もしていくにつれ、あまり「売上、売上」と思い悩むことはなくなり、売上も少しずつ伸びています。

―あなたの生活の中でのこだわりや、お気に入りがあれば教えてください。

すぐ近所にある「Grenier Voyage(グルニエ ボヤージュ)」というお店。
オーナーの岸部さんが直接仕入れてくる、フランスのアンティークや、作家さんのアクセサリーやバッグ、お洋服、雑貨などを扱っているとても素敵なお店です。

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▶お気に入りのお店、Grenier Voyageにて。オーナーのわよさんこと、岸部さんと、スタッフのまめちゃん
 
お気に入りのお洋服や、ディスプレイに使うための小道具、ちょっとしたお礼の品などを見つけられるので、とても頼りになるお店です。
こちらのお店でも数々のご縁をいただいていて、本当に感謝しています。
いつも、いろいろな話を聞いていただいたり、相談にのっていただいたりしています。

―あなたにとって「働く」こととはなんですか?

自分の力が誰かのために役に立つこと。
世の中の誰か、または会社の中の誰か、私の場合はお客様ということもありますし、家族のためになることもあると思います。
それは、自分が社会に対して貢献していることにもなると思います。

私の場合は花を扱っていますので、花の贈り物の場合、送り主の方の想いを花にして代わりにお届けするのが私の仕事だと思っています。自分の作品を作るというよりは、お客様の想いを大切にして行きたいですし、お客様に喜んでいただけたときは、とてもうれしいです。
若くして亡くなられたお友達へに供える花を注文してくださった方から、お手紙をいただいた時のことは忘れられません。読んで泣いてしまいました。
「お客様から泣けるほどの感想をいただける仕事ってあるだろうか?」と思い、この仕事の素晴らしさを再確認しました。

―働いている時の貴方を「色」に例えると?

無色かな?
お客様からのリクエストに合わせた花を作るようにしているので、その時はなるべく自分の色を消すようにしています。

―幸せだと思う時間や瞬間はどんなときですか?

友達とおいしいものを食べておいしいお酒を飲んでいるときは、仕事のことも忘れて笑える時間。ストレスの発散になるし、友達との関係をあたためられるいい時間です。
また、家族が健康なことには本当に感謝していて、私がこうして自分のやりたいことにチャレンジできるのも両親や兄弟が健康なおかげで、幸せなことだなあと思っています。
お客様に喜んでいただけた時もほんとうに嬉しい瞬間です。涙が出るほどうれしい感想をもらえる仕事ってそうそうないと思います。
海を見ているときは、ただそれだけで幸せです。海が好きでずっとスキューバダイビングをしていました。
海は広大で人間はちっぽけな存在です。海に潜ると、地球に戻っていくような、地球に抱かれているような感覚を味わうことができます。
こんな時間に幸せを感じます。

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▶大好きな海をイメージしたラインナップ。プルメリアを使ったアレンジメントやブーケが人気
 

―今後、あなたがありたい姿と、そのために行っていることがあれば教えてください。

幸いなことにとても素晴らしい先輩たちとの出会いに恵まれていて、目標にしている女性たちが周りにいます。彼女たちはいつも明るく前向きで心が広く、頑張っている人を心から応援してくれて、そして元気なのです!
私もそんな風になりたいなと思います。
その第一歩として、困っている人や悩んでいる人や迷っている人がいるときに、自分が経験してきたことや学んできたことをシェアすることでサポートできるなら、そういう場合は惜しまず伝えるようにしています。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
東日本大震災の被災者の方の言葉がターニングポイントになったという植木さん。その豊かな感受性と、周囲の人への真剣なまなざしで、一つ一つの作品や出会いに向き合っているのだと感じました。
現在の状況を「必死すぎる」と語る彼女ですが、きっと一歩ずつ、地面を踏みしめるように確実に前進していくのだろうと感じずにはいられません。

 
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いろんな女性の働く・暮らすを知ること 『100人100色』は、SAISON CHIENOWAとケノコトの共同記事です。

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