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ケノコト独自の視点から、様々な人や場所、物を取材して、WEBをはじめとする色々な場所で公開します。

取材 2017.04.01

100人100色―「子どもが好き」という気持ちを仕事に。新しい保育の形をめざす保育士―春原裕香さんのお話し

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それぞれの立場、個々の考え方によって「働く」ことへのスタンスは異なります。正解なんてありません。
「100人100色」では、100人の「働く女性」に登場いただき、等身大の姿を語っていただきます。
年齢、環境、キャリア全ての背景が異なる人たちの100とおりの『想いや生き方』の中に、きっとあなた自身にとってのヒントが見えてくるはずです。

今回ご紹介するのは、東京都渋谷区在住の春原裕香さん(39)。マーケティングリサーチや広告代理店勤務を経て再就職活動をしていた頃、「子どもが好き」という自分の気持ちに気づきます。一念発起して保育士資格を取得し、保育士として働き始めました。保育園やこども園を経て、念願の子育て支援のサポートという取り組みにチャレンジする春原さんに、これまでの人生やこれからの夢について語っていただきました。

ー春原さんの住んでいる場所について教えてください。

生まれたのは、母の実家のある横浜ですが、渋谷区代々木が私の生まれ育った環境です。明治時代に生まれた長野県上田市出身の祖父たちが戦後に居を構えた場所が代々木だった、ただそれだけなのですが、「そんなところに実家があるの?」と驚かれることも多いですね。

明治神宮・代々木公園・新宿御苑・神宮外苑。本当に贅沢な場所だと思いますが、徒歩圏内で自然あふれる環境が多く、ここに住んでいられることをありがたいと思っています。三人兄弟の長女で下に弟が二人いますが、二人とも結婚後仕事の関係などで家を出ており、今は両親と私の三人暮らしです。

ー春原さんのこれまでのキャリアを教えてください。

大学で養護教諭(保健室の先生)の資格を取りました。理由は学校で唯一「成績」をつけない先生だったから。でも、私が就職した2000年という年代はまだ保健室の先生は学校に一人という時期。ベビーブームの終盤の就職活動も困難で、父の縁も頼ってマーケティングリサーチの会社に就職しました..

マーケティングの会社で、人事情報のデータベース管理を4年経験しました。ちょうど個人情報がシビアになりつつある頃でしたが、「社長○○氏、部長を××氏退任」といった調査表の検票(チェック)をしたり、新聞紙面の人事発表に基づいてパソコンでデータを修正する仕事をしていました。自分よりはるかに年齢が上の派遣さんたちに囲まれ、しかも業務の管理やチェックする立場。面白いくらい異空間な職場環境でしたが、結構おじさま・おばさまウケは良かったようです。

データベース管理の業務からコールセンターに異動となり、お客様相談センターの電話応対の評価調査を担当しました。いわゆる「覆面調査」と言われるもので、お客様のふりをして電話をかけ、お客様相談センターの電話応対を評価する調査です。個人の応対に対して点数をつけるのではなく、電話対応によってその企業の好感度やイメージも影響することも学べたり、相手の企業様に応対の実例を元に提案をしていきながら信頼関係を築く流れは、本当に勉強になりました。

そして、そのマーケティングの会社を辞めた後、広告代理店、文字起こしやキャンペーン事務局代行会社の事務職を経て、保育士の資格を取りました。

ー保育士の資格を取ろうと思った理由は何ですか?

保育士になろうと思ったのは、再就職活動をしているころ、地域のファミリーサポートという子育て支援を通して、「やっぱり子どもが好き!」と気づいたからです。一念発起して保育士試験を受験、取得後保育園に就職しました。公立保育園、私立保育園を経て、今は公立こども園で仕事をしています。

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▶散歩先で、子どもたちと。

「こども食堂」のボランティアをきっかけにご縁をいただき、今年の4月からはミライ∞ラボというところで託児所の立ち上げからお手伝いをします。私が一番やりたかった子育て支援のサポートをそちらで実践していくつもりです。「0歳~100歳のこどもたちのためのあったらいいな♪を叶えるオモチャhaco」その素敵な理念に心惹かれて、経営者の「託児を始めます」という言葉に「手伝わせてください!」と扉を叩いて飛び込んだ感じです。託児の場が渋谷という立地もさることながら、のびのびした空間に広がる芝生と、子どもが楽しめる遊具もいっぱいある素敵なところ。ボルダリングにブランコ、スラックスライン。大人でも子どもでもまた訪れたくなる場所で、知人を連れて行くたびにファンが増えています。今は、ここで新たに始める託児の運営をいろいろ考える時、子どもたちやお母さんたちの笑顔が増えると思うと本当に楽しみで仕方ありません。

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▶ラボの託児室でのクリスマスイベント。
 

ーこれまでで一番忘れられない仕事のエピソードをお聞かせください。

保育士資格を取り、保育園で初めて担当した女の子が卒園するという年、彼女が描いた将来の夢が「保育士」でした。私は彼女とは1歳児の時しか関わる機会がなかったのですが、これこそ、「仕事冥利に尽きる」というものだと実感した瞬間でした。

ーこれまでの人生でぶつかった壁はありますか?

仕事で大きくぶつかった壁という認識があまり無いので、持病の話をします。
学生時代は剣道をやっていて、中学生の頃は皆勤賞を取るくらいの健康優良児でした。中学二年生の時、放課後バスケを友達と一生懸命やっていて、激しすぎたのか、自分の心臓が追いつかなくなって発作性頻脈にかかり、救急車で運ばれ……でも翌日に半日入院して、「皆勤賞逃したくない!」と午後から通学したくらい、元気真っ盛りな女子でした。

会社勤めを始め、二社目の広告代理店での業務と相性が合わず、血尿から軽度でしたが「うつ病」にもかかりました。幸い、薬も少量お世話になっただけですぐに復帰でき、次の職場へ転職できましたが。ちょうど職場復帰をした頃だったと思いますが、左右の視野の明るさに異変が出てきて、眼科へ。幸い異変に気づいてくれた先生からもすぐに脳神経内科への受診を勧められ、大学病院へ。診断された病名は、「多発性硬化症」。難病指定されている病気で、もう50年くらいこの病気は研究されていますが、完治する薬はまだないそうです。「多発」と言われるくらい、症状はさまざま。私の場合は、幸いまだ大きな症状も出ておらず、週に一度の筋肉注射で経過観察をしています。

この病気で気をつけるべきことは、「風邪をひかないこと」、「ストレスをためないこと」、「頑張りすぎないこと」。
私はもともと「全力疾走」の塊だったのですが、この病気を発症してから、少しだけその「無謀さ」を控えるようになったような気がします。あまり張り切りすぎないこと、それだけは大切にするようになりました。

ーあなたにとって「働くこと」とはどういうことですか?

新卒で仕事をしているとき、「仕事でお金をバンバン稼ぐ!」それしか考えていませんでした。だから親の伝手を頼ってでも、仕事をとにかくしていればいい……と。

うつになったとき「こんなにしんどいこと、どうしてやっているんだろう?」ってボロボロ泣いて。療養して、退職して、また復職して。

そんなころに出会ったのが、保育士という職と「やっぱり子どもが好き」という気持ち。自分の気持ちと一番素直に向き合えた時、私にとっての「働くこと」は、自分が「やりたいことを自分なりの形にして人に魅せていく」ことなのかなと思っています。

ー働いている時のあなたを「色」にたとえると?

オレンジと白です。太陽と月をイメージしているのでしょうか。オレンジは、仕事をしているとき、いつも「子どもと120%遊ぶこと」を心がけているから。お日様に当てて自分も相手も元気にしたい。笑顔でいたい、ワクワクをあげたい、そんな気持ちでいっぱいなので。

白については、相手が子どもであれ大人であれ、対話する時はまったく色を見せず、相手や状況に応じて色の度合いを変えることもある気がします。子育てに完璧はないし、子どもの成長にも完璧はない。自分自身もずっと同じ色に染まっていたくない、そんな意味合いも含めています。

ー今後、あなたがこうありたいと思う姿はありますか?

保育園やこども園で働いてみて思うのは、子どもと向き合っている仕事といえば「遊んでいる」印象が強いのに、実際は事務作業が非常に多いこと。今の時代でも記録の基本は手書きで、アナログな業務が本当に多いです。
また、こんな言い方をしていいのか悩ましいですが、さまざまなカリキュラムに縛られすぎた保育・幼児教育が多いようにも感じます。小学校に上がるまでの「就学時前」の準備をするところという位置づけですが、もう少し子どもが遊びから学べる時間を乳幼児期に作ることはできないのだろうか?と葛藤するようになりました。保育園、保育士が足りないその状況を変えるための一つのきっかけとして、動けることを少しずつできたらいいな、と思っています。

ーこれからチャレンジしたいことを教えてください。

保育現場の異端児になろう!と思い始めています。それなりに企業の現場を見てきてからの保育という現場。まだまだ手弁当、改善・改革できることがたくさんあるような気がして。保育が今、「もやっとしている」その部分をもっと明るくしたいのです。

「保育ドリームプランプレゼンテーション」というプレゼン大会の実行委員を立ち上げから手伝い、3年目を迎えました。プレゼンでは、保育に対する思いや夢を語ります。そのプレゼンで描かれる内容の背景にはきっと、園のまわりの環境や業務の改善など、夢の実現が困難な問題点が見え隠れしているのではないかと。私自身もまだ不勉強なところも多いので、いろんな現状、いろいろな場を見に行ったり、発信したり提案できたりしないかな……なんて思い始めているところです。いろんな業界や団体の人たちと手を繋ぎながら、新しい手法を考えることにチャレンジしたいです。

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▶保育ドリプラ大会前日準備に集まった実行委員メンバーと。
 

ー日課や習慣にしていることはありますか?

4年くらい通い続けているスポーツジムがあります。ホットヨガとプールを中心に利用しています。平日の朝限定で利用するのですが、毎朝同じ時間に起きて、ジムでリフレッシュしてから、仕事に出かけています。仕事のシフトに応じてお風呂だけで出かける日もありますが、朝から目覚めも良いし、結構気に入っています。ヨガも始めてから、睡眠の質もよくなり、体を休めるノウハウも会得している気がします。

ーあなたなりの息抜きやストレス発散の方法を教えてください。

とある親子キャンプで知り合った仲間が2014年末に立ち上げたNPO法人D‒SHiPS32(ディーシップスミニ)に関わることになり、障がい児の子どもたちと一緒にキャンプの引率に参加しています。会場となっているのが「ユニバーサルビレッジきっかける103(とうみ)」というプロジェクト。長野県東御市で長く休眠していた畑を開墾しなお
し、車イスでも入れる畑を完成させました。その場所で農作物の植え付け、収穫やキャンプ、今後は古民家の再生なども企画しています。

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▶D-ShiPS32の「車イススポGOMI」での1コマ

東京生まれ東京育ちの典型的都会っ子で、友達が盆暮れ正月に「田舎に帰るね!」という話を聞くたびに羨ましかったので、私の憧れていた「田舎」をココで体現させてもらっています。帰れる田舎が出来たこと。それが私の息抜きであり、ストレス発散の場にもなっています。

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▶「ユニバーサルビレッジきっかける103(とうみ)」のイベントで。
 

ー幸せだと思う時間や瞬間はどんなときですか?

ワクワクすることを考えて、それが笑顔につながったとき。人へのサプライズを考えるのが特に好きです。「こんなことやったら、どんな風に喜んでくれるかな?」それを考えているとき、一番ワクワクで「幸せ」を感じられる最高な瞬間です。

ー自分の人生で一番大切にしていることはなんですか?

カッコイイ可愛いおばあちゃんになりたいんです。今から?って突っ込まれそうですが。そのために、「人生楽しく生きる!」、そして「太く短く生きる!」(笑)

ーーーーーーーーーーーーーーーー
さまざまな仕事を経て、保育士という天職に出会った春原さん。「保育士の異端児でありたい」という言葉には、子どもの成長を一番に考え、これからの時代に合った保育をめざしたいという春原さんの熱い想いがこもっていました。保育の現状と問題点を探り、よりよい方向に変えていこうという気持ちが、新しい保育の形となって実現する日も近いでしょう。

 
取材・記事/
いろんな女性の働く・暮らすを知ること 『100人100色』は、SAISON CHIENOWAとケノコトの共同記事です。

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​D-SHiPS32

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