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取材 2017.10.07

100人100色―故郷の金沢にUターン。企画会社を設立し里山の活性化に関わる経営者ー小杉裕香さんのお話し

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それぞれの立場、個々の考え方によって「働く」ことへのスタンスは異なります。正解なんてありません。
「100人100色」では、100人の「働く女性」に登場いただき、等身大の姿を語っていただきます。
年齢、環境、キャリア全ての背景が異なる人たちの100とおりの『想いや生き方』の中に、きっとあなた自身にとってのヒントが見えてくるはずです。

今回ご紹介するのは、石川県金沢市在住の小杉裕香さん(35)です。アメリカの大学で学んだ後、東京での就職を経て故郷金沢にUターンした小杉さん。里山で受け継がれる人々の暮らしや現状を目の当たりにして、自ら会社を設立し、地域活性化の事業に携わっています。小杉さんは里山への想いをどのように仕事に結びつけていったのでしょうか。子育てをしながら仕事に奔走する小杉さんにお話しを伺いました。

——お住まいはどちらですか?

石川県金沢市です。金沢で生まれ育ち、高校卒業後に金沢を離れて2010年に転職と父の病気がきっかけで東京からUターンしました。

昔からいつか金沢に戻って仕事がしたいとぼんやりと考えていました。金沢は食べるものはおいしいし、自然が常に近くにあってとても住みやすい場所です。
空と夕陽をゆっくりと見る時間があるのは、とても豊かだと感じています。

——これまでのキャリアについて教えてください。

高校を卒業後にアメリカのロサンゼルスに5年間留学して、民族学を専攻しました。国際関係や紛争などを主に勉強していましたが、民族学を専攻する留学生などほぼいなくて、「なぜ民族学なんだ」と何回も尋ねられました。

その後仕事を始め、東京で5年間飲食店で海外からのお客様の担当を主にした後、金沢にUターンして父の会社を手伝い、2011年にイベント企画制作会社(株)G−VOICEを設立しました。

プライベートでは金沢と東京と遠距離結婚して、昨年第一子を出産しました。子育ては絶対に金沢でしたい!と強く思っていて、昨年旦那に金沢に移住してもらいました。現在は子育てをしながらできる範囲でイベントの制作や、地域活性化のお仕事をしています。

——これまでにぶつかった壁はありますか?

石川県が里山里海に力を入れていることもあり、現在里山に関わる仕事をする機会を多く頂いています。

というのも、私自身学生の頃、戦争や国際関係に重点を置いた民族学を勉強していて、複雑な社会システムの中で「平和」とはなにか良く分からなくなっていました。

あらためて社会の根源を考えなおすことの重要性を感じて、それが日本の里山に興味を持つきっかけになりました。

父の会社を手伝いに金沢にUターンし里山に関わる仕事に就きましたが、1年3ヵ月後に父が他界。プロジェクトも存続が難しくなりました。しかし私自身、里山の厳しい現状や、昔から受け継がれる人の営みや豊かな知恵を広く伝えることを続けていきたいと強く思ったため、会社を立ち上げることを決意しました。

その後も経営のことなどわからないことだらけで壁ばかりだったとは思いますが、成功も失敗もすべて結果的にはプラス、という精神のもと、周りの支えのおかげで楽しく進めて行くことができました。今は子育てと仕事の両立の壁にぶつかり中です。

——これまでで一番忘れられない仕事のエピソードをお聞かせください。

石川県の白山麓の木滑(きなめり)という里山集落で行っている活性化事業についてですが、最初はよそ者に対してやはり警戒心があるし批判もあったと思うのですが、今は集落の約40世帯みなさんの顔がわかるし、私の子供もかわいがってもらいながら仕事をしています。

過疎高齢化が進んだ里山集落ですが、みんなが家族のような、私が今まで経験したことのない密な社会。山のふもとで自然と向き合いながら、精神的に豊かな暮らしをしていて、おじいちゃんもおばあちゃんもとても元気で私はみなさんが大好きです。

その集落の中でこの7年間活性化事業を続け、「山笑い」という里山のお祭りを一緒に開催できていることは、とてもありがたいことで、私の人生の中でとても重要なことです。

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▶里山集落で行っているイベント里山祭「山笑い」。年3回のお祭りで、写真は春の田植えの様子。
 

——あなたにとって「働くこと」とはどういうことですか?

小さい頃に中耳炎になった時の話なのですが、すごく痛くて近所のお医者さんに連れていってもらうと一瞬で痛みがなくなりました。
子供ながらに、この世界はみんなが助け合って成り立っているんだと、心から感謝したのを覚えています。本当に痛かったから。

働くとは、社会の一部となって誰かの何かの瞬間に役立つことかなと思います。
私はイベント会社をしているので、スムーズにシンポジウムなどが進んだり、悦びの時間を共有できるイベントができれば自分自身もとても嬉しく思います。
あと『日本の文脈』という本の中で、「労働とはすでに贈与を受けたことに対する返礼なんです」とあります。すごく共感できて、そういう気持ちで働けている瞬間はとても気持ち良いと思います。

——働いている時のあなたを「色」にたとえると?

オレンジ。自分自身がエネルギーに溢れていて、明るくいなければならないと思っていますが、ちゃんと全体の動きや流れを考えながら動く必要性があるので、黄色よりも少しどっしりした色かなと思いました。

ただステージなどのイベントに関しては影武者として「黒」にもならねばならない時もあります。見えない部分をしっかり支えて、光の当たる部分を強調できればと思っています。

——今後、あなたが「こうありたい」と思う姿について教えてください。

自分の人生でやりたいことは、次世代に残したいものをきちんと自分が今の時代に紡いでいくことです。
それは昔からの伝統であったり、小さな集落であったり、子供であったり色々あると思いますが。

イベントは一過性のものであるように見えますが、人の心に何かを残したり、何かを考えるきっかけになったりもするので、そういうきっかけを作れる人になれたら良いなと思います。あと、ありたい姿として、母としてうまく時間を使うことを学びたい!

——これからチャレンジしたいことは?

縄文時代が好きで、古地図をもって北陸の遺跡をめぐるワークショップをしたいとずっと思っています。

縄文好きな仲間は増えてきましたが、準備が整わないまま妊娠出産期に入ってしまい叶わずにいます。でも能登半島をはじめ北陸は面白い場所なので絶対開催したいと思っています。

自分の好きなことを含め、地域のことを深く知る機会となるイベントを企画していきたいと思っています。

——あなたなりの息抜きやストレス発散の方法を教えてください。

カフェで音楽を聴きながら、本を読むこと。出産後はなかなかそういう自分だけの時間が取れていませんが、音楽と本が混ざり合うと、かなり現実から離れた旅ができます。自分の想像の世界に入るのは、とてもストレス発散になります。あとは神社に行くこと。気持ちがスッキリします。

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▶家族と神社へ。気持ちがスッキリする時間です。
 

——日課や習慣にしていることはありますか?

日記とメモを取りながら読書をすることです。自分が感じたことを文章にすると気持ちが落ち着くし、後々仕事のヒントになったりする場合もあります。

——あなたの生活の中でのこだわりや、お気に入りについて教えてください。

お気に入りというのも少し違うのですが、南方熊楠さんを尊敬しているので、クマグスに関わる本を読みます。

生物多様性や日本人の思想という幅広い観点から神社合祀反対を訴えた方で、日本で初めてエコロジーの概念を唱えた人です。彼から学ぶことはとても大きくて、南方熊楠が見た世界、見た宇宙はどんな姿だろうと想像します。仕事や生活に息詰まった時に読むと元気になれます。やる気の源泉になっています。

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▶南方熊楠の本たち。
 

——幸せだと思う時間や瞬間はどんなときですか?

毎日、子供が笑う瞬間、眠る姿を見る時が至福の時です。そして仕事で関わる方々の笑顔が見られたとき。おじいちゃん、おばあちゃんから話を聞くときは、とても貴重で楽しい幸せな時間です。

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▶大好きな91歳のじいちゃん。たくさん昔の話をききたいと思っています。今しかきけないことばかり。

あとは山の中や、大自然の中に立った時は最高に幸せで気持ち良い瞬間です。

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▶一面雪の世界。大自然の中、気持ち良い瞬間です。
 

——自分の人生で一番大切にしていることはなんですか?

家族です。家族を大切にすることが、あらゆる人やモノ、社会を大切にする原点だと思っています。
家族と一緒に思い切り笑っている瞬間が一番大切。唄っていたら、なおさら幸せ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
故郷の金沢で里山の魅力に気づいた小杉さん。子育てに忙しい中でも会社を経営し、里山の活性化事業に打ち込んでいます。原動力となっているのは、小杉さんが「あらゆる人やモノ、社会を大切にする原点」と語る“家族”の存在。「次世代に残したいものを今の時代に紡いでいく」——その想いは、里山の事業にも、家族との生活にも貫かれています。

 
取材・記事/
いろんな女性の働く・暮らすを知ること 『100人100色』は、SAISON CHIENOWAとケノコトの共同記事です。

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