
備えあれば憂いなし『AEDを正しく知って、もしもに備える』
目次
目の前で人が倒れたとき、あなたはどのような行動を取りますか? きっと多くの方が戸惑い、焦ってオロオロしてしまうことでしょう。もし近くに「AED」が設置されていて、その使い方を知っていれば、尊い人命をあなたの手で救える可能性も高まります。今回は、実は身近な存在である私たちの命綱・AEDについてご紹介いたします。
身近になったAED
AEDの正式名称は「自動体外式除細動器」といいます。「Automated External Defibrillator」の頭文字を取って「AED」と名付けられています。心停止した際にAEDを使うことで自動的に心臓の状態を解析し、心臓機能を正常にする医療機器です。除細動という電気ショックを与えるものですが、医療知識のない一般市民でも使えるように設計されています。
日本でAEDの設置が開始された2004年ごろは、まだ価格が高額だったこともあり、あまり普及しませんでした。しかし、2007年ごろから価格も安定して、公共機関・空港・学校など広く設置されるように。1機あたり月額5,000円程度でレンタルも可能になり、AEDは急速に普及しました。
それにともなって、私たちが実際にAEDを使用する可能性も高まったといえます。
AEDが心臓機能を戻す仕組みとは?
心停止には2つのタイプがあります。1つは、心臓が細かく震える心室細動で、電気ショックを与えることで回復します。もう1つは、不整脈によって血液を送り出す力が失われた状態で、電気ショックでは回復できません。
AEDの優れているポイントは、心臓がどのような状態か心電図解析し、電気ショック適応な症状か判別する機能を備えているところです。心室細動と判断した場合、速やかに電気ショック(除細動)を与えて正常な状態へ戻します。AEDが自動的に判断して施術を行いますので、医療知識がない一般市民でも安全に使うことができるのです。
心室細動は発症してからすぐに処置することが望ましく、1分遅れるごとに救命率が7~10%低下すると言われています。救急隊が到着するまで平均所要時間は7分。救急隊の到着前にAEDを行うことが非常に重要です。実際に、AEDの普及で一般市民による救命率が上がったという報告があります。
2015年に5年ぶりに改訂された心肺蘇生法ガイドラインでは、呼吸確認が困難な場合、迷わず胸骨圧迫するという項目が追加され、利用者によりわかりやすい内容になりました。インターネット上でもオンライン版の心肺蘇生法ガイドラインを確認できますので、ぜひ参考にしてみてください。
【日本蘇生協議会サイト】
いざというときに困らないAEDの使い方
AEDは自動音声と画像により指示を出すので、初めて使う方でも操作可能です。しかし、いざ目の前で人が倒れた場合、パニックを起こしてうまく操作できないこともあります。基本的な使い方を身につけ、万が一に備えることは自分の大切な人を守ることにもつながるでしょう。
1. AEDに電源を入れます。ふたを開くことで自動的に電源が入る仕組みのものも導入されています。
2. 救助する人の胸元の衣類をはだけさせ、AED内にある電極パッドを右上胸と左下胸に貼り付けてください。素肌に直接貼り付けるのがポイントです。
3.「離れてください。解析中です」という自動音声に続いて、 AEDによる心電図解析が始まります。
4. 電気ショックを与える必要があると判断した場合、自動音声で教えてくれます。周囲の人が触れていないことを確認し、ショックボタンを押してください。
5. AEDの電極パッドは、救急隊が到着するまで取り外さないでおきます。AEDの電源も切らずに待ちます。
6. AEDと並行して胸骨圧迫による心肺蘇生を行います。電気ショックを与える間はいったん胸骨圧迫をやめ、電気ショック後に再び行います。AEDが指示を出しますので、2分間隔で心肺蘇生とAEDを繰り返してください。
AEDを使う際の注意点
心肺蘇生したと勘違いするケースも
AEDでは、電気ショック不要という判断の自動音声が流れることがあります。心肺蘇生したと勘違いするケースもあるのですが、除細動の適応ではない心停止の場合もこの音声が流れます。
AEDからこのような自動音声が流れたら、救助する人の動きを確認してみましょう。手足に動きが見られる場合、AEDを装着したまま救急隊を待ちます。しかし、反応があまり見られず、普段どおりの呼吸がないと思ったら、胸骨圧迫を繰り返して心肺蘇生を行う必要があります。
体の状態を確認して電極パッドの貼り付けを
高齢者など、皮膚が極度に乾燥している場合、汚れや皮脂を皮膚前処理剤等で取り除いてから、電極パッドを貼り付けてください。胸の表面が汗などで濡れている場合も、電気ショックが伝わりにくくなりますので、タオルなどで拭きとってから貼り付けを行います。
ペースメーカーを埋め込んでいる場合、手術痕やふくらみで判断できます。真上に電極パッドを貼り付けると、ペースメーカー故障の原因にもつながるので、埋め込み部分から8cmほど離して貼り付けてください。ペースメーカーの位置により、左右反対に電極パッドを貼り付けることも可能です。
未就学児(1歳未満を含む)には、機種に切り替え機能があれば「小児モード」に切り替え、ない場合は、小児用電極パッドを使用します。しかし、切り替え機能が見当たらず、小児用電極パッドもない場合は、成人用電極パッドを代用してください。※小学生には成人用バッドを使います。
意外と知られていないAEDの仕組みや正しい使い方。見かけることはあっても、その重要性や必要性を意識することはあまりないかもしれません。でも、AEDの正しい使い方を知り、とっさのときに焦らず対処することが尊い人命を救う糸口になります。
一人でも多くの方がAEDへの関心と理解を深めてくれますように。
その行動が、尊い人命をあなたの手で救えることがあるかもしれません。
記事提供/治療note
参考記事:目の前で人が倒れたら、どうする…? AEDの知っておきたい使い方と注意点
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