
正しい知識を知りたいから『がんと年齢と進行度のホントのところ』
「がんは若いほど進行が速い」とよく言われていますが、果たしてこれは本当なのでしょうか?様々な情報がまわりにあふれている中、特に健康に関わる情報は確かな事実を知っておきたいですね。
迷信などに惑わされず、自分自身が見識を高めることは自分や家族を守ることにもつながるはずですから。
「がんは若いほど進行が速い」は本当?
「若い人のがんは進行が速い」とよく言われ、たしかにそんな印象があるかもしれません。進行が速い理由としては、「若い人のがん細胞は増殖が活発だから」というものがよくあげられます。しかしこの説は、科学的には根拠が無いと言われています。年齢が若くても進行の遅い人はいるし、逆に高齢でもあっという間に進行してしまう人もいます。
がんの進行速度は何で決まるの?
では、がんの進行速度を決めるものはなんでしょうか?
まずは「病期」が挙げられます。がんになったり、近親者のがんを経験された方であれば、「ステージ」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。病期とステージとは同じものです。
次に、がんの「組織型」があげられます。同じ乳がんや胃がんであっても、いくつかの組織型に分類され、進行の遅い比較的大人しいがんから、急速に進行するタイプまで様々です。
病期とは?
「病期」はがんがどこまで進行しているかを判断する指標です。
TNM分類と呼ばれる国際分類によって、がんを局所臓器(T因子)、リンパ節(N因子)、遠隔転移の有無(M因子)に分けて分類し、これによって病期を0、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳに分けます。早期がん、進行がんの定義は臓器により違いますが、いずれのがんでも0期に近いほど早期、Ⅳ期に近いほど進行したがんと言うことができます。一般的に0期のがんは、上皮内がんと言われるような浸潤のないがんです。対してⅣ期は、遠隔転移や多数のリンパ節転移があるなど著明に進行したがんです。その間で、大きさやリンパ節転移の有無によりⅠ−Ⅲ期に分けられます。病期によって、5年生存率、10年生存率などの生命予後が変わってきます。
例えば乳がんの10年生存率は、Ⅰ期93.5%、Ⅱ期85.5%、Ⅲ期53.8%、 Ⅳ期15.6%(「全がん協生存率」より、2004-2007年診断症例)となっており、胃がんの5年生存率は、Ⅰ期97.2%、Ⅱ期 65.7%、 Ⅲ期47.1%、Ⅳ期7.2%です。いずれも、病期に応じてかなり予後に差がでています。
これらのデータからも、早期発見の大切さがわかりますね。若い人は、検診の対象にならないことが多く、病院に行く機会も少ないため、進行して症状が出てようやく見つかるといった事情もあるのかもしれません。
組織型とは?
がんの診断では、専門の病理医が針生検や手術により採取した臓器の細胞を顕微鏡で見て病理診断を行います。同じ臓器のがんでも、がん化している細胞の種類や分化度などにより、いくつかの種類に分けられます。これを「組織型」といいます。
胃がんなどの腺がんであれば、低分化腺がん、中分化腺がん、高分化腺がんに分けられ、低分化なものほどリンパ節転移などの頻度が高く予後が悪いと考えられています(「胃癌治療ガイドライン、早期胃癌に対するESD」より)。胃がんでは、スキルス胃がんと呼ばれる未分化型のがんがあり、胃壁を這うように胃全体に浸潤するがんで、発見された時にはすでに進行していることが多く、手術ができた場合でも5年生存率が10-20%程度といわれています。若い女性に発症しやすいという報告があり、黒木奈々さんもこのタイプでした。
また、乳がんでは、組織型に加えて、ホルモン受容体や、細胞増殖にかかわる膜タンパクであるHer2の発現状態によって分ける「サブタイプ」と呼ばれる分類が採用されており、この種類によって予後が変わります。ホルモン受容体が陽性であれば比較的予後が良く、ホルモン受容体が陰性であったりHer2が陽性であったりすれば予後が悪いとされています。
若年で発症する乳がんには、予後の悪いトリプルネガティブタイプ(ホルモン受容体陰性、Her2も陰性)やHer2タイプ(ホルモン受容体は陰性、Her2陽性)が多いというデータがあり、比較的早期のがんでは、若年者の予後が非若年者よりも悪いことが報告されています。ですが、比較的進行したがんでは両者の間に差は見られていません(「厚生労働省 若年乳がん患者のサバイバーシップ支援プログラム」より)。つまり、若年者に悪性度の高い乳がんが発生しやすく、予後に影響している可能性があるといえそうです。
このように、がんによっては若い人に悪性度の高い組織のタイプが発生しやすいものがありますが、甲状腺がんのように、同じ組織型、同程度の大きさ・リンパ節転移の程度であれば若年者のほうが予後が良いとされているがんもあります(「甲状腺腫瘍診断ガイドライン」より)。
年齢にかかわらず、早期発見の努力と適切な治療を
若さとがんの進行の速さに直接的な関係があるわけではないこと、おわかりでしょうか。
年齢が若いからといって、すべてのがんが急激に進行するわけではありませんので、がんと診断された場合には、進行度や組織型を念頭に置きつつ、情報収集をし、治療について主治医としっかり話し合うことが必要です。
何より重要なのは早期発見すること。定期的ながん検診を当たり前にして、自分を守る努力を惜しまないで暮らしたいですね。
記事提供/治療note
参考記事:「がんは若いと進行が速い」は迷信!? がんと年齢と進行度についてのホントの話
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