
正しいアトピー事知っていますか?『アトピー性皮膚炎のケアの秘訣とステロイド』
目次
多くの人を悩ませ続けているアトピー性皮膚炎。周りに少なからず1人以上はいらっしゃるのではないでしょうか。
生死に関わる病ではないものの、絶え間ないかゆみに襲われるなど当事者の苦しみは計り知れません。また、アトピー性皮膚炎の子どもを育てる親たちも、症状の変化に、日々一喜一憂されていることでしょう。
アトピー性皮膚炎の治療はできるだけ症状を悪化させないように、気長に付き合っていく必要があるといいますが、「ステロイドって危険なの…?」「ステロイドっていつから使うべき?」
アトピーにまつわる正しい知識と、そのケア方法について、じっくり詳しくお伝えします。
アトピー性皮膚炎、どうして起こるの?
日本皮膚科学会によると、アトピー性皮膚炎とは、「増悪、寛解を繰り返す、掻痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ」と定義される、皮膚疾患のひとつです。アトピー素因とは、1.家族歴・ 既往歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちいずれか,あるいは複数の疾患) があること、または、2. IgE 抗体を産生しやすい素因をさす、と記載されています
(日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2016年版)。
つまり、遺伝や何らかの外的要因などにより、アレルギー性の機序で発生する皮膚炎です。外的要因は、ダニや花粉、カビなどの環境要因と、卵白や牛乳、米、小麦などの食餌要因に大きく分けられます。
また、これまでの研究で、アトピー性皮膚炎には皮膚のバリア機能低下が密接に関わっていることがわかっています(Watanabe ,M et al.:Arch Dermatol 127:1689,1991など)。皮膚のバリア機能には、角質にあるセラミドなどの角質層間の脂質や天然保湿因子、角質を覆っているスクワレンなどが重要な役割を果たしていて、これらが何らかの原因で少なくなるとバリア機能が低下し、皮膚が乾燥してしまい、ひび割れた角質の隙間から細菌などが侵入しやすくなります。バリア機能が低下しやすいかどうかには、遺伝子による関与も疑われています。
つい先日、理化学研究所が、サイトカインのシグナル伝達をするJAK1という分子をコードする遺伝子に変異が生じると、アトピーを発症しやすくなることを突き止めたというニュースがありました(理化学研究所のプレスリリースはこちら)。こういった新しい研究成果を、今後の治療薬開発に活かしていってほしいですね。
年齢によって異なるアトピー性皮膚炎の症状
痒みを伴った湿疹を生じるという点ではどの年代でも共通しているのですが、年齢によって症状の現れ方に違いがあります。
乳児期には、はじめは頭や顔に、その後全身に、じくじくした湿疹が現れます。幼児期になると、皮膚が全体に乾燥し、首の周囲や肘や膝の内側といった特徴的な場所に湿疹が現れます。大人になると、皮膚のごわごわが進み、炎症を繰り返すことによる色素沈着を起こすこともあります。また、成人の特徴として、上半身に症状が強く出るというものがあります。
炎症が軽いうちのケアが大切
繰り返してしまうアトピー性皮膚炎、なんとしても、悪くなるのを避けたいものです。体質に原因があるので、治るのは難しいかもしれませんが、症状が軽い状態で長くつきあうことを目指すとよいかもしれません。
皮膚に炎症があると、引っ掻いたり、また、他の外的刺激により(洗剤に含まれる界面活性剤やエアコンなどによる乾燥など)、余計に炎症が悪くなって、さらにそれがさらなる外的刺激を呼びこみ、さらに悪くなってしまうという悪循環が起こってしまいます。そうならないために、できるだけ炎症が軽いうちにケアをしてゆくことが大切になります。
治療は、
1. スキンケア
2. 薬物療法
3. 増悪因子(食餌や接触によるアレルギー)
の除去の3つになります。
アトピー患者にとって乾燥は大敵です。アトピー性皮膚炎の方は皮膚が乾燥するとヒビ割れたりしてバリアの破綻が起こりやすくなります。入浴のあとはワセリンをぬるなど、十分な保湿に努めましょう。界面活性剤の入っているボディソープなどはさけて、入っていない石鹸を使って体を洗うのがよいでしょう。特に顔などは、冬場はお湯で流すだけでもよいと思われます。
食餌のアレルギーがみつかった場合には、除去食にするなど工夫をします。衣類の摩擦などの刺激で悪化する場合は、服やタオル、寝具などの素材を刺激の少ないものに変えます。そのような日常生活における工夫も、薬などによる治療効果に合わせて有効となる場合があります。
また、必要に応じて、抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬を使用することで、痒みをおさえることもできるといわれています。
薬物療法で重要な役割を占めるステロイドとは?
薬物療法には、ステロイドや免疫抑制剤があります。ステロイド治療がその中心になりますが、「ステロイドは危険」という印象をお持ちの方は少なくないと思います(重い副作用を思い浮かべる方もいらっしゃるのではないでしょうか?)。
しかし、ステロイドは、もともと私たちの体に少量存在するホルモンで、量や投与法を間違えなければただちに副作用に結びつく、というわけではありません。
点滴、内服、塗布で副作用のリスクは異なる
ステロイドにはいくつか投与法があります。内服、塗布、点滴の治療法のうち、副作用を発生するのは大量のステロイドを急速に体内に入れる点滴による場合が多いです。
内服治療も副作用を起こしますが、アトピー性皮膚炎ではかなり重篤な状態に一時的に使うことはあっても、ずっと内服を続けることはありません。
治療には主に外用剤の軟膏が多く使われますが、ステロイド軟膏は、吸収された後の血中濃度も低く、重大な副作用は起こさないことがほとんどです。
参考までに点滴や内服によるステロイドの副作用をあげますと、ムーンフェイス、肥満、免疫不全による易感染性、高血糖、白内障、骨粗しょう症、消化性潰瘍などがあります。
これらの重い副作用は外用薬ではほぼ起こりません。
ただし、外用薬でも皮膚を主体とした副作用は起こることがあります。皮膚が薄くなったり、多毛になったり、にきびができやすくなる、皮疹などがありますが、これらも必ず起こるというものではありません。
また、ステロイド外用剤治療におけるステロイドにはランク分けがあり、弱いものから強いものまで様々です。弱いものを使えば、副作用を避けられる可能性が高いでしょう。ステロイドの副作用と、アトピー性皮膚炎の悪化自体がよく混同されがちなので、もしかして副作用かも・・・・・・と思っても、自分だけで判断せず、皮膚科医の判断を仰ぐようにしましょう。
やや注意しておくべき副作用に緑内障、白内障があります。ですが、これらも弱いランクの軟膏では発症するリスクは低いとされています。また、白内障はステロイドそのものよりもアトピーによる炎症によって増悪する可能性があると言われています。目の合併症が懸念されるようなときには、眼科受診を考慮しましょう。
ステロイドを使用するタイミングは?
では、どのくらいの症状であればステロイドを使用するのでしょうか?
診療ガイドラインでは、軽度の発疹や皮膚のはがれが少しある状態であれば、ミディアムクラス以下の比較的弱いステロイドを使用することになっています。乾燥のみであれば保湿剤などで治療の効果や症状の改善を期待できますが、炎症が初期段階であっても、早めにステロイドを使ったほうがその後の増悪を防ぐことができると現在は考えられています。
もちろん、長期にわたり使用すると副作用が出る可能性が高くなります。特に皮膚の薄い顔面では長期使用は避けましょう。とくにステロイド外用治療におけるステロイドを長期的に使用した場合、その依存性に注意が必要と言われています。その他にも、皮膚萎縮と言い、皮膚が薄く弱くなることや、毛細血管が網の目のように拡張する症状があらわれる場合があります。しかし、だからといって湿疹がおさまらないうちに自己判断でやめてしまうと、また悪くなる恐れもあるので、いつまで使用するかはきちんと皮膚科の医師に確認するようにしましょう。
また、ステロイド薬以外の薬物療法として、免疫抑制剤のタクロリムスがあり、2歳から使用できます。適宜ステロイドを組み合わせて使用されます。
状態にあった治療で快適な生活を
実は、筆者の子供も2歳のときに軽いアトピー性皮膚炎と診断されました。
まずボディーソープを変え、目の周りの皮膚が乾燥して赤くなっていたため、顔はお湯だけで洗うようにしました。入浴後には弱い抗炎症作用を持つアズノール軟膏を乾いたところに塗り、湿疹のあるところには弱いクラスのステロイドを使用しました。それらの処置でずいぶん良くなり、一年以上経った今は皮膚科の受診も半年に一回ほどになりました。
ただし、アトピー性皮膚炎は人によって症状や経過が異なり、その状態に合った治療が必要です。また、一度良くなったとしても、すっきり治るということが難しいのが実情ですが、できるだけ症状が出ない、あるいは軽い状態を長く保ち、快適に暮らしたいものですね。
記事提供/治療note
参考記事:アトピー性皮膚炎をひどくしないためには? ケアの秘訣とステロイドの使用について
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