
ブラジルの暮らしから『新鮮野菜と元気をくれるファーマーズマーケットのコト』
私たちが住む日本という国は、世界からみると小さな国です。そんな小さな国を飛び出して、世界各地で生活している日本人もたくさんいます。
言語や習慣は違えど、世界中どこへ行っても与えられた「1日」という時間は一緒。そんな毎日の当たり前にある海外の日常をすこしのぞいてみましょう。案外、共通した部分があるのかも知れませんよ。
日本の真裏に位置するブラジルに移住したあき子さんにその暮らしぶりをお聞きしました。
きっかけはファーマーズ
結婚を機にブラジルに引っ越してきてしばらく経ったころ、人とのちょっとした会話を恋しく思うようになりました。毎日、主人とは会話をしているし、SNSでは日本の友人とのやりとりがあるものの、家を一歩出ればそこはまだ見知らぬ場所。この街に、私の居場所はまだない。そんな時期に、心が照らされたような思いがした出来事があります。それは、近所のファーマーズマーケットで、
「おはよう!今日も元気?」と声をかけてもらったことでした。
毎週水曜と土曜の早朝に、ブラジリアの街角で開催されているファーマーズマーケット。我が家からは、歩いて10分ほど。出店しているのは1団体のみで、規模こそ大きくないけれど、とびきり新鮮な野菜が種類豊富に揃っています。地元の人達にとても人気で、レジの前には行列ができることもしばしば。ショッピングバックからあふれるほど買い込んでいる人がたくさんいるのです。
何度か通ううちに、ようやく、“ここに来たら、絶対に外せないもの”が何かがわかってきました。
たとえば、レタス。畑に植わっている姿が想像できるくらい、葉の先までシャキッとみずみずしく、よそでは買えなくなったほどです。サニーレタスやロメインレタスなど種類も豊富。数種を合わせたサラダを、その日の朝食に早速頂きます。一口かむと、レタスがたくわえた水分が、じゅわーっと口のなかに広がって、まさに至福!さわやかな気分にしてくれるのです。
そして、玉子も欠かせません。早い時間に行かないと売り切れ必須で、実はチャンスを逃したことも何度かあります。
殻を割ると、ボウルの中でプリッと盛り上がる新鮮さ。シンプルにゆで玉子や目玉焼きにして、「玉子そのものを頂く」というのも、ファーマーズマーケットに出かけた日の特別メニューとしてやめられないお楽しみのひとときです。
マーケットにはみたことのない野菜も
初めて見る種類の野菜との出会いも沢山あります。小ナスのような形をした、緑色の野菜。一見、ほうれん草のようだけど、全体的にトゲトゲしたうぶ毛が生えているもの。また、バナナも、青いものや、ひとさし指ほどの長さのものなど、種類がたくさんあります。主人が知っているものであれば、買って調理して食べてみます。
▶︎Jiló(ジロ)というナス科の野菜。ゴーヤのような苦みがあります。炒める、煮るなど火を通して食べます。
「これはキュウリみたいな味」「これは苦い」など教えてもらうものの、どんな味がするのか想像できる範囲は限られているので、実際に食べてみるのが一番。毎回、ちょっとしたヒヤヒヤしながら、実験のような気分で試しています。ときに、ブラジル人の主人でも知らない種類のものもあり、それはこちらの暮らしにもうちょっと慣れてから試そうと、後のお楽しみとして留めています。
一方で、海外での暮らしで、日本で見慣れた食材を手にとれることもまた、うれしいこと。日本から移民としてブラジルにやってきた先人達が普及してくれたおかげで、白菜やニラ、大根や茸類など、日本食に欠かせない野菜も新鮮なものが手に入ることは、海外での暮らしでは大きな喜びです。ちなみに、しめじやエリンギをニラと一緒にバターで炒めたものは、ブラジル人も大好きで、こちらの日本料理屋では大人気の一品料理だそう。
人とのつながりを与えてくれる場所
ブラジルの公用語であるポルトガル語での会話に自信がなく、引っ越してきたばかりの頃はかならず主人と一緒に通っていました。何度か通ううちにお店の方々が顔と名前を覚えてくれて、今では
“Bom dia,Akiko!Tudo bem?(おはよう、アキコ。元気ですか。)”
と、笑顔で挨拶をしてくれます。初めて名前を呼ばれた時に、ふいに安心感で満たされたことを覚えています。慣れない土地で自分でも知らぬ間に緊張が続いていたのだと、その時初めて気がつきました。今では、お店のおじさんに自分から挨拶ができるようになり、もともと朝が弱い主人を残して、ひとりで行くことも多くなりました。
▶︎ある日の買い物。数日〜1週間分。
それでも、挨拶のほかに会話が続くわけでもなく、あとは好きに野菜を選び、会計をして“Tchau!(さようなら)”と言っておしまい。ほがらかな温かさと、さっぱりした距離感をここち良く感じます。
“ファーマーズマーケットに通うこと”が日常になっていくにつれて、この街で暮らして行くのだな、と思えるようになったのです。
朝日で照らされた道を歩いて向かっていると、「よし、今日も1日が始まるぞ」今朝も元気がわいてきます。
国は違えど、文化は違えど、人とのつながりこそが日々の暮らしをより豊かにさせてくれるのは、きっと万国共通。日本でもすこしずつマーケットが定期的に開かれるようになりましたね。このブラジルのマーケットのように、暮らしに密着した温かみを感じられる場所であることが、人々から愛される理由のひとつなのかもしれませんね。
記事/ペルフェイトあき子
広島県生まれ。フリーランスで「食と人をつなぐ」サポート業に携わる。早稲田大学卒業後、商社および海外進出支援団体に所属するかたわら、国内外の農場をめぐり、働き方・生き方に対する視野を拡げる。退職後、2016年9月よりブラジル在住。現在、ブラジリア大学にてポルトガル語を習得中。
ブログ:SLEEPY CITY BUGS
このカテゴリの記事

【七十二侯のコト】第六侯「草木萌動」

インテリアで恋を呼ぶ『恋愛運をあげる風水のポイント』

専門家に聞きました~不妊症・不妊治療のコト~

【七十二侯のコト】第五侯「霞始靆」
関連記事

動物たちの野生を感じる『”動物が見つけづらい”動物園のヒミツ』

100人100色―専業主婦を経て45歳で会社を起業。「食」と「料理」に関わる事業を展開するー福島利香さんのお話し

家庭料理は国と国とまで繋いでくれる親善大使

いつ、誰に何を贈ればいいの?『お歳暮の贈り方とまめ知識』

上質なリネンと紡ぐ、シンプルな暮らし-『fog linen work』普段使いのリネン

コメント