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取材 2016.11.29

日本のものづくり職人が語る『日本一の中華鍋/山田工業所 前編』

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日本中にはものづくりに情熱を注ぐ職人たちがいます。
その中でも、中華料理のプロから、主婦、料理男子までもが絶大な信頼を寄せる山田工業所の中華鍋。
創業当初ドラム缶の底を抜いて叩いてフライパンをつくった事からはじまり、いまでは”日本一の中華鍋”と呼ばれる山田工業所のものづくりの背景には、受け継いだ家業をまるで大冒険のように楽しみ、熱気あふれるドラマを生み出す山田豊明社長の姿がありました。
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言う事を聞くようになる道具のヒミツ

――山田社長、「鉄」は自分のものに育てていける素材と聞きました。そうなんでしょうか?

うん、そうなんだよ。油が鍋の外側の底にどんどんたまってきて、カーボン化してくる。
綺麗好きな人はその油を落としていくのが普通だけど、またはそれを落とさないで厚くしていく人もいるんだよ。そうするとどうなるかというと中華鍋の場合はうらっかわの底に、油がなじんでいる。油がなじんでいると、遠赤みたいな形で火があたってくれるんだ。なかの料理がまろやかになるんだ。見た目は油のカスがたまっているようで汚いんだけど、中華鍋のうらっかわにこだわる人もいる。びっくりしたなあ、アレには。

――表面も裏面もそれぞれのこだわりで、油を馴染ませていくと、買った道具を大切にしていけるんですね。

うん、そう。基本的に油がなじむと、焦げづらくなるんです。テフロン素材というのもあるけれど、鉄は油を馴染ませることによって使いやすくなって長く使えるんだ。素材を育てることで、言うことを聞く道具になるんだよ。

――山田工業所でつくっているのは、全て鉄鍋や鉄フライパンでしょうか?

業務用で使う人が多いんだけど、チタン製の中華鍋もあるんだよ。他にも、全体の1、2%位だけれど鍋以外のものもつくっているね。チタン鍋は修理の時に、そのこびりついた油をとらないと修理できないから取ってしまうんだけど、取っていいものなのかな?と思うくらいだよ。

引退した料理人が社会復帰するチタン鍋
ドラマがあるからものづくりは面白い

――チタン製の鍋もつくっていらっしゃるんですね。鉄鍋とはどう違ってくるのですか?

これを持ってみたらわかるよ、チタンは鉄の6割くらいの重さでとても軽いんだ。チタン製の鍋は熱伝導は悪いの。熱伝導が悪いんだけれど、要は網の上に食材を置いているような感じで焼けて、焼肉をやっているようなものなんだよ。
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▲チタン製の中華鍋(左)と鉄の中華鍋(右)。チタン製の鍋は鉄の4割程軽いそうだが、体感はもっと軽い

――焼肉をやっているような感じですか!鉄は温めた後、その熱を使って一気に早くいためられる利点がありますよね。チタンの場合はどうなんでしょうか?

もっと早いの。たとえば、もやし。もやしって水分が多いでしょ。チタンの場合、もやしの水分が出る前に水分に熱が入るから、包んじゃうんだよ。

――ということは、野菜炒めがベチャベチャしないということなんですね。

そう、しないんだ。具の青臭さも全部なくなるんだよ。ただ難しいのは味付け。
家庭用としてこのチタン鍋を売ろうと思って展示会に出したんだけど、ほとんどの人が業務用として使う人から問い合わせがあったんですよ。ほとんどの人がお年寄り。要は鉄鍋って業務用だと大きいサイズを使うから、振るのに相当身体の関節に来ちゃうんだ。ところがチタンを使ったらまた復帰できたってお礼の手紙をもらったんです。それで家庭用でやろうと思ったのを、業務用に変更したんだよ。嬉しかったねえ、あの時は。

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――チタン鍋はお値段的にはどうなんですか?加工はしやすいんでしょうか?

チタンはめちゃめちゃ高いんだ、加工が難しいんだよ。この湾曲加工はいろんな大手メーカーでやったんだけれども難しかった。だけれど、はじめてうちでできたんだ。素材が鉄の時は、トントンたたいていたら、まったく古いつくりかたをしているねえ、なんかもっとハイテクなこと考えた方がいいんじゃないかよって言われていたんだよ。ところが、素材変えてチタンを湾曲してこれをつくったと言ったら、途端にハイテク産業ですねって!本当にいい加減なもんでしょ(笑)

――あはは、そうですね。鉄じゃないとこんなにも反応が変わると(笑)

売れる売れない関係なく、そうやってチタンの中華鍋を喜んで料理人が社会復帰できた、それが嬉しいんだよ。

――そうですよね。数字では見えない内容の価値があるってことですよね。届かなかったひとに届けられたという。

そうなんだよ。生涯、中華鍋を使って中華料理でやってきた人が、体の不調があって社会復帰するって他の仕事はしにくいかもしれない。ところが、この鍋をつくったおかげでまた戻れたと。ほんとうに嬉しいね。
お礼の電話が来たり、手紙が来たんだよ。普通は売る側にいる我々がお客様にお礼言うんだよ!20年前の話だから、そのあとどうしているかはわからないんだけど。
そういうドラマが生まれてくるんだ。だから、ものづくりって楽しいんだよね。

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「ものというのは味が違う。比べるものじゃない」と語る山田社長。
日本のものづくり職人が語る『日本一の中華鍋/山田工業所 後編』もお楽しみに

【今回の記事に登場した道具】
山田工業所 片手鍋1.2mm30cm/ニス塗
山田工業所 両手鍋1.2mm30cm/ニス塗

記事/REALJAPANPROJECT
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REALJAPANPROJECT
REALJAPANPROJECTは日本のものづくり・地域産業のブランドづくりをサポートするプロジェクト。
“日本のものづくりをもっと身近に”という想いから、2009年にプロジェクトを発足し、日本各地のものづくりの現場に足を運びながら、ものづくりの本質を未来へとつないでいきます。

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