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取材 2016.11.30

日本のものづくり職人が語る『日本一の中華鍋/山田工業所 後編』

日本中にはものづくりに情熱を注ぐ職人たちがいます。
神奈川県金沢区の工業地帯にある山田工業所は、ドラム缶の底を抜いて叩いてフライパンを造っていた事からはじまり、今では日本一の中華鍋と呼ばれています。
「人ってのは見た目じゃないんだよ。嫌いな人をつくるなってのが俺の基本。必ずいいところがあるから。そうすると、そのひとたちも色んな知恵貸して助けてくれるから。」
中華鍋に限らず広い範囲でものづくりを行っている山田工業所の社長はそう話します。戦後から今まで、山田工業所の技術を求めてやってくる数々の依頼の背景にはものづくりへの信念、そしてメークドラマがあるようです。
前編はこちら:日本のものづくり職人が語る『日本一の中華鍋/山田工業所 前編』

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来る人は困っているんだ。すべて断るなと言っている

―――いろんなものを引き受け相手の要望を叶えてこられましたが、それらの一番の理由は技術部分が大きいですか?

まあ、そうだね。うちの技術にちょうど合ったものが来るからできるのであって、理由のひとつに技術はありますよね。あと、うちが息子たちによく言っているのは”すべて断るな”ということだね。来る人は困っているんだという話なんだ。それはなぜかって言うと、この工業地帯の中に500もの会社があるんだよ。それもほとんどがものづくりの会社だから、その500をうちの会社だと俺は思っているんだ。だから何か困った内容が来ても、どこかができるという考え方なんだよ。

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▲じゅうたんを編むことができるハンディ織機。山田工業所が依頼されて製造した

―――なるほどですね。自分たちが、それをやらなくても、どうにか解決することができるということですね。

うん、ここは工業団地だからね。宇宙へ飛び立つロケットや新幹線の特殊なベアリングをつくる会社もあるし、色んなものづくりがあるんだよ。

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▲横浜シーサイドライン 福浦駅からみた金沢区の工業団地

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―――この金沢区の工業団地は昔からものづくりが栄えていたんでしょうか?

35年くらい前に埋め立てをして、それでみんながここに集まってきたんだ。もともとは海だったんだよ。
ここの地域って、いろんなところの親会社があって下請けをやっていて、俺は人によくこの中が日本経済の縮図だって話すんだよ。バブルの頃、バブルになる1年前にこの辺はみんな残業がはじまるんだよ。そしてバブルが終わる1年前はこっちは静かになって仕事がなくなるんだよ。世の中がバブルで浮かれる頃にね。そのぐらいわかりやすいんだ。

―――消費には売るものが必要で、ものが仕上がるには部品が必要で、その1年前には繁忙期なんだけど、国内の経済が低下するときにはまたそれも映し出されるんですね。

まわりの情報から、そんなこともわかる。ただ、みんなそのことに気がついてないんだよ。隣のものづくりをあまり知らない場合があるんだ。ものづくりっておもしろいんだよ。隣が分からないようじゃ世の中わからない。福浦の工業地帯、素晴らしいところでしょ。

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▲500社のうちのひとつがつくっている、具入りスープを一定量出すポンプ(ステンレス製)

相手の要望をちゃんと聞くことによって本物にする

戦後、ほとんど中華鍋しかつくってこなかった。これまで続けてこれたのは本当にラッキーだと思うんだよ。
我々がいろんなもののアシストをしたり、いろんな商品をつくってみるのはうちの技術を上げる為なんだ。そのときに色んなことを息子たちに教えておくことで、中華鍋と違う発想でものづくりができる、こういうことなんだ。それってはじめてやることもいっぱいあって、必ず失敗もあるわけなんだよ。失敗しても息子たちに教えてることができるんだ。
何かの学校へ行くんだったら月謝と言うのが発生する、だけれどもトライすることは失敗しても学びしかないんだよ。

オンリーワンにはふたつの意味があるんだ

たとえば初めて会って仕事をする人に注文を貰う場合(中華鍋以外)、これ出来ますか?と言われたら、やらせてくださいと。それでつくって、でも相手からお金は最初にとらない。偽物をつくりたくないんだよ。
それを納めてまずは使ってもらう、行ったり来たりして要望を言われ続ける、それで向こうが納得したときに御代をもらうんだ。そうすると本物になるんだよ。

他の会社の人にたまにこの話をすると、余裕があるからだと言われるんだよ。だけど余裕があるからじゃないんだよ、そういう風にしないと余裕が生まれないんだよ。

―――山田工業所の中華鍋は値段も他と比べて手頃な価格ですよね。それって何か理由があるのでしょうか?

人間って欲がいっぱいあるけれど、欲だけじゃね。うちは二十年以上、値上げもしていないしね。
人間は欲のかたまりがあるから、やっぱり儲かりそうだと色んな事業をやりたいと思うことが多いんだ、大きなメーカーが家づくりをしたりね。
だけどそれらは、お金の余裕があるからできるわけなんだよ。だけど、なんで真似されないものづくりがあるかというと、さっき言ったようにこんな安い値段して設備してだと商売が成り立たない。
消費財と違うから、フライパンの需要は限られているんだよ。

オンリーワンって俺はふたつの意味があると思っていて、他人が真似できない技術、人が真似したくても採算がとれない値段もオンリーワンなんですよ。

物事って上っ面じゃないんだよ
モノや人というのは味が違うんだ。比べるものじゃない

うちは打ち出し式の中華鍋だけれど、これだってこの工業地帯にいろんな会社があって、昔、打ち出しの自動機をつくろうとしたら手をあげてやってくれる人が出たんだよ。
俺の親父は無理だと言ったんだ。だけど、電気関係に強い人がいて、機械関係に強い人がいて、みんな仲間になって自動機ができたんだ。

―――そうだったんですか。機械をつくるのもまた知恵が集めた日本のものづくりですね。

本当にそうなんだよ。俺はうちの会社に大学卒業して入社して大学前からアルバイトやっていたんだけど、その中に指のない人、手のない人がいたんだ。
当時って俺わからないから、なんで雇ってるんだろうと思ったんだ。就職して一緒にやったときに、手が無くても同じように仕事できるんだよ。脇で挟んで中華鍋をかかえて、鍋の取っ手はコークス(注1)と言うのを使って、下から風を送って赤くして、鍋に取っ手をつけていたんだけど。
ペアで作業するから俺がつぶす役でその人が俺のところに赤くしたものを送る役をやるわけ。脇に抱えて置くから、すごく顔が近くなって真っ赤な顔をして俺に間に合わすようにその人はやるんだ。
そのとき、この人本当にすごいなって思ったんだ。
そしたら、今度その人が打ち出しの自動機になる機械をつくってくれたんだよ。ものって上っ面じゃないんだよ。そのひとたちのおかげで、いま会社が成り立っているんだ。

子供たちにもそれを言い伝えで残しておきたいなと思っているんだよ。人ってのは見た目じゃないんだよ。嫌いな人をつくるなってのが俺の基本。必ずいいところがあるから。そうすると、そのひとたちも色んな知恵貸して助けてくれるから。

(注1:石炭を乾留(蒸し焼き)して炭素部分だけを残した燃料)

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山田工業所
創業は昭和32年(1957)、山田豊明社長の父である先代社長が保土ヶ谷区西久保町に中華鍋を作る工場を建てたのが始まり。戦後で当時は材料となる鉄が不足しており、ドラム缶の鉄底をハンマーで叩いてひとつひとつ鍋を作っていたのが打ち出し製法のはじまりである。
1983(昭和58)年には現所在地へ工場を移転。父親のもとで職人として働いていた豊明さんが社長を受け継ぎ、型を必要とするプレスとは異なり、厚さを調整する事ができる山田工業所特注の機械ハンマーで叩いて製造。安価で使い心地の良い製品を生み出している。

前編はこちら:日本のものづくり職人が語る『日本一の中華鍋/山田工業所 前編』

【今回の記事に登場した道具】
山田工業所 片手鍋1.2mm30cm/ニス塗
山田工業所 両手鍋1.2mm30cm/ニス塗

記事/REALJAPANPROJECT
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REALJAPANPROJECT
REALJAPANPROJECTは日本のものづくり・地域産業のブランドづくりをサポートするプロジェクト。
“日本のものづくりをもっと身近に”という想いから、2009年にプロジェクトを発足し、日本各地のものづくりの現場に足を運びながら、ものづくりの本質を未来へとつないでいきます。

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