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ケノコト独自の視点から、様々な人や場所、物を取材して、WEBをはじめとする色々な場所で公開します。

取材 2016.12.07

100人100色―歌う楽しさ、成長する喜びを感じて欲しい。音楽を人生の仕事にしたボイストレーナー白壁慶子さんのお話し

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それぞれの立場、個々の考え方によって「働く」ことへのスタンスは異なります。正解なんてありません。
「100人100色」では、100人の「働く女性」に登場いただき、等身大の姿を語っていただきます。
年齢、環境、キャリア全ての背景が異なる人たちの100とおりの『想いや生き方』の中に、きっとあなた自身にとってのヒントが見えてくるはずです。

今回は東京都在住の、ボイストレーナー白壁慶子さんを紹介します。長年の趣味だった音楽を仕事にした白壁さん。二子玉川で「歌と声の教室 VOICE QUE」を主宰し、ボイストレーニングや歌のレッスンを行っています。「発声というメカニズムをちゃんと使いこなせるようになれば、誰でもいい声で、気持ちのいい歌が歌えるんです」と語る白壁さんに、これまでのキャリアと歌への想いを伺いました。

 

―白壁さんのこれまでの仕事の道のりについて教えて下さい

9年半の大手生命保険会社勤務ののち、学生時代からずっと趣味でやっていた音楽を人生の柱にしようと退職。2004年2月に、二子玉川にフランチャイズのボーカル教室を立ち上げました。数名の先生を雇い、オーナーとしてボーカル教室を経営しながら、やってみたいことをいろいろやりました。いくつかのサルサバンドのボーカリストとして地方公演に行ったり、営業したり、サルサダンスのイベントを開催したり。音楽以外の仕事もいろいろやりました。

私の歌のキャリアは中学時代の合唱部から始まって、大学からはバンドなど、歌うことはほぼ独学。だから人に教えるにあたっては、たくさんの教材や外国の教則DVDを何枚も取り寄せて試しました。ボイストレーニング、フィジカルトレーニングや呼吸に関する本、発声や発音、言語学の本を何十冊も読みまくり、解剖学もかじりました。その上で、筋トレやストレッチ、ヨガ、呼吸法、演劇ワークショップ、朗読、英語の発音などを学びに行きました。動物や赤ちゃんの声を真似たりすることも……これは今でもよくやりますね。あんな小さくて柔らかくて非力なのに、なぜあんなに大きな声を出せるのだろう?という素朴な疑問から、とても軽い力で少ない息で、力強い声を出す方法を見つけたりもしました。

とにかく声を出すことならなんでも興味があるんです。だから、2013年にフランチャイズから独立した時、屋号を「歌と声の教室」としました。
発声というメカニズムをちゃんと使いこなせるようになれば、誰でもいい声で、気持ちのいい歌が歌えるんです。生徒さんはアマチュアの方、10歳から76歳までいらっしゃいます。歌が苦手だと思っている人が、勇気を出して体験レッスンに来てくださると、すごく感激します。

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▶教室のエントランス。ドアはデザインを考え、木で作ってもらった。看板は陶板を焼いて制作、壁には石を貼っている。

仕事は週に4日か5日。週末はレッスンと、バンドのリハーサルやライブ。
夫は週末休みの会社勤めなので、すれ違い夫婦っぽいですね(笑)。でも彼もミュージシャンでピアニストでもあるので、一緒のバンドで演奏したり、教室の発表会ではいろいろ手伝ってくれたりします。音楽のことも仕事のことも相談できる、最高のパートナーです。ほんと、30代後半まで結婚を待っていた甲斐がありました(笑)。
今後は夫とのライブを企画しようと思っています。研究したり教えることに夢中になっていたんですが「自分自身ももっと歌っていかないと」と思い始めてます。

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▶気持ちの上がるレッスンルーム。床は憧れのヘリンボーン。奥のソファは1850年代のフレンチアンティーク。
 

―白壁さんの仕事に対するこだわりについて教えて下さい。

この仕事をしながら意識しているのは、私の仕事は教授業ではなく、一種のエンターテインメント業であるということでしょうか。歌う喜びだけでなく、成長する感覚を楽しんでもらうこと。生徒さんの生活の中で、レッスンの1時間が楽しい時間であること。これが絶対です。逆に言うと、それさえ満たしていれば、なんなら歌わなくてもいいんです。実際、1時間悩みの相談に乗ったり、愚痴を聞いたりということもあります「話せてスッキリしました!」でもいい(笑)。それも私の役割のひとつだと考えています。モヤモヤしていたり疲れている時は、いい呼吸も発声もできませんしね!

ただ、毎日レッスンが終わるたびに思うんです。「こんなに楽しくて気持ち良くて、自分も成長できて、しかも感謝されてお金がいただけるなんて、いったいどういうことだろう??」って。声を出すこと、生徒さんとコミュニケーションすること、知識や技能を高めること、それをわかりやすく教えること。全部、私自身が楽しいことばかりなので、「働いている」という感覚はあまりないというのが、正直なところです。
あと、もうひとつ、歌を教えることは物を売るのとは違って、私自身が価値の源泉。とてもシンプルなビジネスです。自分自身を高めること、曇らせないこと、そしてもちろん健康を維持することが最重要です。日々の生活やインプット、アウトプット全てが私を作り、それが歌やレッスンにそのまま反映すると思うと、人生に手を抜くことはできないなって思いますね。

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▶レッスン風景。基本的にマンツーマンでレッスンしている。
 

―仕事でこれまでにぶつかった壁はありますか?

フランチャイズのボーカル教室を運営していた2011年頃、経営状況が悪くなったことがあるんです。いろいろな理由がありましたが、生徒さんの数がガクンと減り、家賃と人件費、そしてフランチャイズの上納金が重く、赤字ギリギリに。この先どうしよう、いっそ教室を畳んでしまえば、肩の荷がおりるかも……という考えが頭によぎりました。他の仕事の収入もあったし、やめてしまうのが一番簡単だ、と。

でも、よくよく考え、当時まだ結婚したばかりだった夫とも話し合って、なんとか教室を続けてみようと決心しました。その時雇用していた先生は解雇せざるをえず、それを伝えるのが本当に辛かったですね。

私が1人で全クラスを担当し、2013年にはフランチャイズから独立しました……そうなると本当に1人です。でも、不安と闘いつつもがいてみたら、すべてがいい方向に回りはじめたのです。大家さんからすごくいい条件で、同じビル内の小さいけれど安い部屋に移動しないかという話をいただいたり、ご紹介で生徒さんがどんどん増えたり。きっとあれは、私に決意をさせるための試練だったんですね。あの時もし逃げていたら、今の私はなかったと思います。

―働いているときの白壁さんを色にたとえると?

難しい質問ですね(笑)。色ではないのですが、ステージで歌う仕事の時は、色というよりは光を放っていたいという感覚。逆にレッスンの時は、生徒さんの光を反射させようとしている感覚です。自分の色よりも、生徒さん自身の色を受け取って、生徒さんに光を放ってほしいですね。

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▶︎毎年夏に、湘南の海沿いにあるレストランで開催されるサルサパーティで歌っている。
 

―白壁さんのプライベートについてお伺いします。お住まいはどんなところですか?

結婚が決まって、生涯住む家を買おうと思った時、東急東横線の渋谷寄りの地域を探しました。東急沿線は環境もいいし、二子玉川の教室への通勤にも便利。そしてなにより渋谷に近いので、友達が遊びに来てくれるんですよ。
私がお休みの平日夜に、仕事帰りの音楽友達がよく遊びに来ています。一緒にごはんを食べたりしてますね。あと、バンドの打ち合わせや宴会を我が家でやったり。私は出不精なのに寂しがりなので、みんなが気軽に来やすいエリアにして正解でした。

―日頃から習慣にしていることはありますか?

毎日やっているのは、深い呼吸。発声練習はしなくても、舌回しや唇、表情筋などのトレーニングやストレッチは必ずやります。ヨガのクラスにも定期的に通っています。呼吸と体幹のトレーニング、そして瞑想のような効果もあると感じています。
あとは毎日、25分のスカイプ英会話レッスンをここ1年半ほぼ欠かさず受けています。仕事で英会話が必要なわけではありませんが、こういうベーシックなスキルは、筋トレと同じで時間をかけて積み上げないといけないので、とにかく続けています。基本的には仕事のためではなく、自分の可能性を高めるためという感じですが、知り合ったばかりのニュージーランド人にボイストレーニングレッスンをやったり、インターナショナルスピーチクラブでボイトレワークショップを担当したりというお仕事にもつながりました。

―息抜きやリラックスの方法を教えて下さい。

まずは深呼吸。呼吸がしっかり深まれば、心が静かになっていきます。そしてお気に入りのポータブルチェアを持って、多摩川の河川敷や代々木公園などの広いところで、のんびり座って本を読んだりぼんやりしたりすると、大概のことはOKに。

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▶お気に入りのポータブルチェア。本と飲み物を持って、公園でチルアウト。

それでも気持ちの乱れが収まらない場合は、キッチンで大量のミートソースを作ります。玉ねぎとニンジンをひたすらみじん切りしていると、刃物を使っている緊張感もあって、ある種の瞑想状態になれるんでしょうね。美味しいごはんもできて、一石二鳥(笑)!

―これからチャレンジしたいことはありますか?

仕事とはぜんぜん関係ないんですけど……キャンプ!この夏の終わり頃から、キャンプしたくてたまらないんですよ(笑)。衣食住を背負って移動して、いろんなところで生きる活動をする……人生をより濃くしてくれる予感がするんです。

―白壁さんが「こうありたい」と思う姿について教えて下さい。

実践者でありたいですね。
好奇心を持ち、なんでも一度は自分でやってみて、失敗して、そこから何かを学ぶこと。そこにこそ本当の価値がある。実践には過去も未来もなくて、とにかく今、ここでアクションする以外はない。
具体的には、生活のこまごましたことも含めて、意識を持って行うこと。生活、仕事、人生で、何か改善できることはないか、常に考えること。そしてもちろん、それを楽しむこと!……やっぱり、キャンプやりたいなあ(笑)

―白壁さんが幸せだと思う時間や瞬間はどんなときですか?

なんといっても、私のレッスンが生徒さんに響いて、しかも自分の歌が変わったと本人が実感してくれた時!その嬉しそうな表情は大好物です!いいレッスンができると、私もなかなかやるなーと悦に入って、ニンマリしちゃいます(笑)。そして家に帰って、そんな私の話をゆるゆると聞いてくれる夫がいることは幸せですね。

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仕事をしている白壁さんの「色」について尋ねたときの「歌っているときは、色というよりは光を放っていたい」という返答に、聴衆の前でのびやかに歌を歌う白壁さんのキラキラした姿が思い浮かびました。そしてレッスンの時は「自分の色よりも、生徒さん自身の色を受け取って、生徒さんに光を放ってほしいですね」と語る白壁さん。歌を心から愛する白壁さんの情熱が、生徒さんの魅力を引き出し、ともに輝きを増していくのでしょう。

 
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いろんな女性の働く・暮らすを知ること 『100人100色』は、SAISON CHIENOWAとケノコトの共同記事です。

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