
いつものご飯をさらに美味しく『おひつのある暮らし』
目次
ふっくらと炊いたご飯を詰めて、旅館の朝ごはんにお出ましにな流、おひつ。おひつに入っているだけで、不思議とさらにご飯が美味しそうに見えませんか?では、普段の暮らしで使う、おひつはどうでしょうか。炊飯器が壊れたことをきっかけに、おひつ生活を始めてみましたよ。
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長年使ってきた電気炊飯器が壊れて、土鍋でご飯を炊くようになってずいぶん経ったある日のこと。夫が「炊飯器で炊いたご飯のほうがおいしかった」と、ぽつりと言った。
土鍋で炊くごはんはおいしく、私も子どもたちも満足していたので、この夫の一言には驚いた。が、考えてみれば炊きたてのごはんを食べられるのは、私や子どもたちの特権。夫が帰宅する頃には、ごはんは土鍋の中でだいぶ冷めていたので、炊飯器で炊いてそのまま保温しておいたごはんのほうがおいしいと感じたのかもしれない。
とはいえ、ただ便利なものよりも、本物の道具を使いたいと考えていた私は、炊飯器に戻るという考えはなかった。そこで考えついたのが、前々から気になっていた「おひつ」。ごはんをおいしく保存するための道具だ。夫に相談して、晴れて「おひつ」を購入することになった。
一口におひつといっても、種類はさまざま。冷蔵庫や電子レンジでも手軽に使えるセラミック製のおひつもあれば、木製のおひつでは木曽サワラを使った江戸びつや、秋田杉の曲げわっぱなどもある。さんざん迷ってわが家に迎えることにしたのは、柴田慶信商店の秋田杉の曲げわっぱのおひつだ。
職人の手で一つひとつ―『おひつのある暮らし』
樹齢200年を超える天然の秋田杉。その貴重な「柾(まさ)目材」をお湯に浸し、職人の手によって一つひとつ曲げて作られるおひつは、秋田県大館市の工芸品だ。
木目は細かく、白木のまま仕上げられた木肌はなめらか。山桜の皮で丁寧に綴じられた継ぎ目も、丸みを帯びた形も美しい。木目がほぼ並行かつ均等に並んでいる柾目材は、反りや割れを起こしにくく、吸湿性が高いため、ごはんの余分な水分を取って保存するのに適しているそう。
ごはんをすくいやすいよう、おひつの底は丸みを持っている
おひつの内側をさっと濡らし、乾いたふきんでふき取ってから、炊き立てのご飯を移す。初めて手にしたときに驚いた、厚みのある蓋をかぶせておけば、ごはんはべたつかずふっくらとおいしく仕上がる。私は、おひつに移して20分ほど置いたころのごはんをいただくのが気に入っている。
ごはんがおいしくなる―『おひつのある暮らし』
時間が経ってもごはんはもちもち。冷めても乾燥せず、おいしいままだ。杉の香りがほんのり移ったごはんは、食欲をそそる。この香りは、使い始めて半年ほどの、期間限定の贅沢だ。
杉には抗菌効果もあるため、おひつに入れたごはんは、一昼夜、常温で保存できるという。おひつが来てからは、わが家ではごはんを5合炊く。炊きたてのごはんをおひつに移して、まずはそのときに。残りはそのまま保存して、次の日にいただく。
冷やごはんが好きな家族はそのまま。好みで飯椀によそってからレンジで温めても、まるで炊き立てのように、いや、炊きたて以上においしくて、つい食べすぎてしまう。夏場でなければ、夜に炊いたごはんを次の日のお弁当に入れることも。むしろ、炊きたてをお弁当箱に詰めるよりも、余分な水分が飛んでいておいしいと家族は言う。
手入れは意外に簡単―『おひつのある暮らし』
道具はきちんと手入れをして、長く使い続けていきたいもの。白木は手入れが難しそうに思えるが、おひつの手入れは思ったよりも簡単だ。
たわしを使ってごしごし洗う
おひつは基本ごはんを入れるものだから、油や汚れがつくことは少ない。ただ、杉から出るタンニンとごはんのでんぷんとが反応して、長く使ううちに黒ずんでくることがあるという。黒ずみの予防には、使用後はよくごはんを落とすことと、毎回よく乾燥させることが大事だ。
使った後は、お湯を注いで5分ほど置いてから、たわしとクレンザーを使って、新しい木肌を出すようなつもりで木目に沿ってごしごし洗う。そして早く乾燥させるために、熱いお湯をかけてから乾かす……というのが柴田流。
同じ秋田杉の曲げわっぱの作り手でも、まったく違った方法を推奨している場合があるが、①よく汚れを落とすことと、②しっかり乾燥させること、という点では一致している。
私は、アクリル毛糸を編んで作ったアクリルたわしを使い、ぬるま湯でごしごしとこすり洗いをしている。洗ったら水気を拭き取り、立てかけて乾かすだけ。次に使うまでにはまる一日は乾かしたほうがいいそうなので、それは守るようにしている。使い始めて1年3カ月ほど経った現在、黒ずみは全く出ていない。基本さえ守れば、案外おおらかなのかもしれない。
一生モノの道具―『おひつのある暮らし』
使い続けて、万一黒ずみがひどくなった場合、柴田慶信商店では、磨きをかけて新しい木肌を出すことが可能だ。長年使い続けて生地が薄くなったものであれば、今度はシバキ塗りを施すこともできる。渋柿を下地に塗り、その上に漆(うるし)を塗って仕上げる「シバキ塗り」にすれば、そこからまた何十年も使い続けることができる。一生モノとは、まさにこんな道具をいうのだろう。
暮らしにおひつを取り入れると、ごはんをおひつに移すひと手間、お手入れをするひと手間が必要になる。けれど、間違いなくごはんはおいしくなる。炊いたごはんをしゃもじでおひつに移す作業は、慌ただしい毎日にちょっとしたゆとりをもたらしてくれる。
用と美を兼ね備えたおひつのたたずまい。背筋をしゃんと伸ばして丁寧に扱わなければ、という気持ちにさせてくれる。
文/吉井 謡子
記事/ハレタル
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