
「写真にしかできない事」 〜部屋から母親が出てこない。娘の見たその光景とは〜
半年振りに帰省した私。
なかなか親に顔を見せられない事を悪いなとは思いながらも、仕事が忙しいという言い訳を繰り返し、やっと帰ってくる事ができたのが半年振りだった。せめてもと思い今回は、1週間は家にいるように休暇を取った。
「家が綺麗な方が居心地いいでしょ?真衣が帰ってくる数日前から要らないものを整理しようと大掃除してるけど進まなくてね。今日こそ、部屋を片付けるね。」
と2階に上がった母親。
ふと気づくと、あれから2時間経つ。まだ母は降りてこない。
少し心配になり、部屋をそぉっと覗いてみると。
全く片付いていない部屋の隅で床に座って母は何かを見ている。
よく見ると、彼女のすぐそばには、積み上がったフォトアルバム。
少し色褪せた、昔ながらのあの分厚いフォトアルバムだ。
私の存在に気づいた母が申し訳なさそうに
「ごめん!もうこんな時間!晩御飯作らなきゃね。数日前からいらないものを整理しようと大掃除してるけど進まなくてね。」と言った。
私は大丈夫だよ。と言いながら近づき、アルバムを開いた。
そこには、全く記憶にもない産まれたての私写真からなんとなく思い出せるような時期の写真がズラッとある。
母親の変わらない癖字で
【真衣の3歳の誕生日!】
【おじいちゃんにもらったぬいぐるみをもらった瞬間、食べ物と間違ってお口にいれたね!】
【真衣、組体操の練習頑張って良かったね!】
と書いてある。
そして、亡くなったおばあちゃんにぎゅうっと抱っこされた写真や忘れかけていた家族旅行の写真も。
ここ数日、このアルバムを見てたから片付けが捗らなかったのだろうなと、簡単に想像できた。
今まであまり気づかなかったが写真の母と今の母を見比べると身体が一回り小さくなっている。
昔から付けている指輪も少しすかすかになってきた。
そして、昔に比べて本当に穏やかに静かでゆっくりになった。
そんな母の背中を見ると、真衣は急に涙が溢れてきた。
写真を見なければ忘れかけていた、この25年間の愛。
頭の中ではうっすら覚えているような思い出も写真を見るとこんなにも鮮明に思い出される。
写真とは、これほどにも大事な時間を蘇らせてくれる。
離れている間も「さみしいな。」「会いたいな。」とも言わずに
帰りを待ってくれていんだよね。
「真衣ちゃんがしんどい時はいつでも連絡してきなさいよ。」
というくせに、自分がしんどい時は絶対隠すんだよね。自分がしんどくても、まだ私の心配をするんだから。
私の帰る時には必ず、大好きな、筑前煮を炊いてる。
毎回帰宅すると筑前煮。
「たまには他のものも食べたいんだよ。」
と言いたくもなるけれど、それが喜ぶと思い込んでいつも作っている母親が愛おしい。
誰かが言ってた、離れて暮らす親と会える回数って、50回くらいしかないんだよって。
1番自分を大事に、必要に感じてくれている親。
考えたくもないが”親は自分よりも先に死んでしまう”という事実。
写真を見て改めて気づいた。
こうやって過ぎていく時の中で私は、大切な人を本当に大切にできているのだろうか?
その時に「ご飯ができたよ!温かいうちに食べなさい!」と母が言った。
今日も筑前煮のいい香りがしている。
<完>
文/藤本真衣
キッズ時計ホームページ
キッズ時計 プランナー 藤本真衣
キッズ時計で、たくさんのご家族のストーリーや素敵や写真を見て、改めて自分の家族の大事さを実感しています。ケノコトのコンセプトでもある”ココにある暮らし”をみなさんと共有し温かく育てたいと思います。
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