
大切な人の喜ぶ顔がみたいと思うコトはありませんか?祖父が使う「優しい嘘」
みなさんはどんな思い出を刻んできたのでしょうか。
ふと写真を見たときに思い出す過去の記憶。
改めて家族の大切さを感じる、そんなストーリーをご紹介します。
祖父が入院しました。胃癌です。
88歳と高齢で認知症も進み、彼自身の冷静な判断は難しいのですが、祖父の希望を尊重し、私たち家族は手術をする事を決断しました。
癌の宣告は本人、そして家族にとってとても辛いものです。
これからどうなるんだろう。
癌の進行からすると”胃全摘”だという事。
大好きなおじいちゃんです。
幼い頃からずっと近くに住み、生活を共にしてきたおじいちゃんです。
美味しいもの、特に甘いものが大好きなおじいちゃん。
高齢なのに手術に耐えられるのだろうか?
全摘すると、ご飯って、もう食べられないのか?
次々と溢れてくる不安が頭の中をよぎります。
おじいちゃんは、小さい頃から手をつなぐと、親指で私の手をさするのがくせでした。
少しザラザラした手で力も強く、少し痛かったのを覚えています。
甘い物が大好きで
いつも大きめのアイスクリームを買って
お風呂をあがるとお皿に好きなだけ盛って食べるのが習慣でした。
お風呂上がりのおじいちゃんに近寄っては、アイスクリームをもらったものでした。
いつも、いつも、おじいちゃんはわたしに美味しいものを与えてくれました。
「真衣ちゃん、これ美味しいから一口食べてしまったけど、あとは残しておいたから食べなさいよ」
「熱しんどいか?なにやったら食べれるんや?リンゴか?買ってきてやろう。待っておきなさい」
「今日は外食しよう。どこがええんや?じいちゃんに聞く必要ない、真衣ちゃんの食べたいもの言うたらええ、じいちゃんなんでもええからな」
中でもよく覚えているのが、私に物心がついてきて”遠慮”というものを覚えた頃です。
おじいちゃんは「お腹いっぱいだから食べてくれるか」と言ってくるようになりました。
わたしが遠慮しないように心配りをしてくれてる。幼心に気づいていました。
私が美味しそうに食べるのを見ては
「美味しいか?良かった良かった」と笑っていました。
そのすぐ後、台所で他のものを摘んで食べてたりするんですよね。
今でも、その姿はハッキリと脳裏に浮かびます。
美味しいものを、自分じゃなく相手に食べさせたいと思う。
これは、究極の愛なのではないでしょうか。
今日、病院にお見舞いに行くと
母親がおじいちゃんの爪を切ってあげていました。
いつも自分で爪を切っていたのに、切れなくなってる。
もうそれだけで私の心は張り裂けそうになります。
この日のおじいちゃんも、私が到着したときの第一声が
「真衣ちゃん、お腹いっぱいやから、そこのカステラ食べてくれるか」
ティッシュに丁寧に包んだカステラがそこにはありました。
おじいちゃん、お願いだから食べて。
私はまだいつでも食べる事ができるからさ。
そう思いながらも、きっとおじいちゃんは
「美味しい!」という私の喜んだ顔が好きだから
私は、ありがとう!と食べました。
少し乾燥してしまったカステラでしたが
その乾燥したカステラの舌触りがとても愛おしく
それがトドメになって涙が溢れてきました。
おじいちゃん、もっと時間ってあったはずだよね。
お願いだから元気になってね。
文/藤本真衣
キッズ時計ホームページ
キッズ時計 プランナー 藤本真衣
キッズ時計で、たくさんのご家族のストーリーや素敵や写真を見て、改めて自分の家族の大事さを実感しています。ケノコトのコンセプトでもある”ココにある暮らし”をみなさんと共有し温かく育てたいと思います。
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