知るコト知るコト
旅行・おでかけ 2017.08.14

動物たちの野生を感じる『”動物が見つけづらい”動物園のヒミツ』

遠くサバンナや熱帯地方に暮らす動物たちを間近で観察することが出来る、動物園。訪れると、子供だけでなく、大人もつい夢中になって楽しんでしまいますが、さらにユニークな展示方法で、訪れる人を楽しませてくれる動物園があるのだとか。そのユニークさは、動物に優しい配慮から来るものなのだそうですよ。

ーーーーーーーーー
「アジアの熱帯林」に足を踏み入れると、生い茂る木々で太陽の光が一瞬、遮られた。ちょうど雨がぱらついてきて、土のにおいが漂ってくる。世界一美しいと言われるサル、アカアシドゥクラングールに大きな目で見つめられると、ここが都心からそう遠くない場所であることを忘れてしまう。
国内最大級の動物園として知られる「よこはま動物園ズーラシア」は、国内で先陣を切って、動物の生態に配慮した飼育・展示を行ってきた。「生息環境展示」と呼ばれるこの展示法は欧米ではスタンダードだけれど日本ではまだそれほど知られていない。

7アカアシドゥクラングール。膝から足首あたりまでの毛は栗色や茶色

隠れた動物を見つけるワクワク

滝や藪を取り入れ急峻な山あいをイメージしたニホンツキノワグマの展示場で、一頭のクマが岩陰に身を潜めて休んでいた。小学生の親子が「どこにいる?」「見つけた! 薮の陰に黒いのが」と探し合う。

6藪に身を潜めるニホンツキノワグマ(画像中央右)

飼育展示第一係長の須田朱美さんは、「多くの動物にとって大切なのは、土の地面を自由に動き回れて、身を隠せる植物や岩があること」と話す。アジアの熱帯林、日本の山里、アマゾンの密林……と分けた8つのエリアごとに草木まで再現。お客さんは、動物の暮らしをのぞかせてもらう、という感覚になる。

5大きく深い池、岩場がたくさんある展示場を歩くホッキョクグマ

動物が安心して暮らせるよう気を配ったことで、「開園当初は『動物が見えづらい動物園』と言われたくらい」と須田さんは笑う。試行錯誤を経て、隠れた動物も“発見”できるよう作り変えてきた。吊るされたオモチャのボールを笹の陰から狙う子どものトラ、倒木の陰に身を潜めるチーターの姿など、動物本来の姿をのぞけるように工夫されている。

より野生に近い環境を再現したのが、15年に全面オープンした「アフリカのサバンナ」。キリンにグラントシマウマ、エランド、チーターが昼間は同じスペースで暮らしている。

44種の混合展示は日本でズーラシアだけ。シマウマとエランドの後ろ、倒木の陰に佇むチーター

肉食動物と草食動物を一緒にして大丈夫なのかと心配になるけれど、いちばん力が弱いのは、体が小さいチーターだ。野生のチーターは自分より小さいトムソンガゼルやイボイノシシを獲物にするので、大型の草食動物は襲わない。

チーターがじゃれ合いのつもりでシマウマにちょっかいを出そうものなら、集団で動く性質を持つシマウマたちに追いかけ返されてしまうことも。チーターは大型の動物たちが跳び越えていけない倒木の裏で休んでいることが多い。

いちばん手をかけるのは寝室

ところで、4種混合展示と言いながら“チーターがお休み”の日も。日によって展示場に出す動物を変えるので、よく見ると展示場に出ていない個体もたくさんいる。

「動物を豊かに飼育する」というズーラシアの信念がよく現れているのが、バックヤードの作り方。展示場に出ていない動物が過ごすサブパドック(非公開の運動場)は広大な敷地のかなりの割合を占める。

3バックヤードで水浴びをするスマトラトラ

「24時間のうち開園時間は7時間。残りの17時間も動物たちが風通しのいい場所で健康的に過ごせるように」と須田さんは話す。

さらに、いちばん居心地がいい場所は寝室。木の上で巣を作って寝るチンパンジーには毎日、巣の材料になるワラと枝を用意。寝室に帰れば飼育員とたくさん遊んでもらえるという特典もあるから、彼らは寝室が大好きだ。

2チンパンジーの親子

さまざまな動物が生きてゆける世界

手間もおカネもかけて生息環境展示を行ってきた背景には、「動物を取り巻く社会的な問題にも目を向けてもらいたい」(須田さん)という思いがある。

ズーラシアではベトナム戦争の枯れ葉剤の影響で数が激減したアカアシドゥクラングールをはじめ、マレーバクやオカピなど希少動物をたくさん飼育・展示する。絶滅危惧種や熱帯雨林の破壊といった生物・環境にまつわる問題提起のパネルは、園内の至るところに掲示されている。

1オカピ。国内初公開に当たり、米サンディエゴ動物園でスタッフが研修を受けた

動物たちがありのままの姿で暮らすズーラシアを歩けば、私たちもヒトという動物であり、同じ世界に共存しているのだということを考えさせられる。

文/前野 裕香
記事/ハレタル
haretal-b
ママ時間からわたし時間へトリップ。
「何かしたい」「新しい自分を見つけたい」「一歩踏み出したい」――。
『ハレタル』はそんなみなさんの「モヤモヤ」に寄り添い、新たな気づきを提供する情報発信メディアです。
ホームページ

その他のおすすめ記事

育てて摘んで食べて知る『食べられるお花「エディブルフラワー」のコト』

育てて摘んで食べて知る『食べられるお花「エディブルフラワー」のコト』

“助け合い”の気持ちが溶け込む『フィンランドのやさしい暮らし』

“助け合い”の気持ちが溶け込む『フィンランドのやさしい暮らし』

夏こそ始めたい『ぬか漬けのある暮らし』

夏こそ始めたい『ぬか漬けのある暮らし』

コメント

コメント欄


人気の記事

2021.06.13

ピーマンと調味料だけで完成!食べる手が止まらない『ピーマンのはちみつ醤油炒め』

2021.06.10

シンプルが美味しい!『アスパラガスのオープンサンド』

2021.06.05

そら豆の味と食感を楽しむ『そら豆のクリームチーズパスタ』

2021.06.05

季節の手仕事『自家製キウイシロップ観察日記』

2021.06.04

季節の手仕事『夏の常備菜らっきょうしごと』

2021.06.03

きんぴら大変身!豆腐1丁で『特大がんものご馳走あんかけ』

2021.06.02

作り置き常備菜シリーズ『酢たまねぎ』とアレンジレシピ

2021.06.01

混ぜて冷蔵庫に入れるだけ『さっぱりホタテのマリネ』

2021.05.28

和えるだけ!生で食べて栄養たっぷり『新玉ねぎのおかかサラダ』

2021.05.27

手作りの味は格別『生いちごのマシュマロ』

編集部おすすめ記事

2021.06.11

さっと作ることができて保存が効く!夏の常備菜『きゅうりの炒めナムル』

2021.06.11

干して戻してうまみがぎゅーっとおいしい乾物を愉しむ 『うまみと磯の香りが溢れるひじきの肉そぼろ』

2021.06.10

発酵食品で免疫力UP!第7弾『鮎のコンフィ・シソジェノベーゼソース』

2021.06.09

季節の手しごと『ピンクジンジャーシロップ』

2021.06.09

こまめなお手入れで畳のある暮らしを心地よく『< 基本&しみ抜き >畳のお手入れ方法』

2021.06.08

こどもと作ろう!『パステルカラーの彩り白玉ポンチ』

2021.06.07

季節を感じる贅沢、雨の日は『梅仕事』を始めてみませんか

2021.06.07

たっぷりの大葉を味わおう!アレンジ自在『大葉ベーゼ』

2021.06.06

季節の仕込みゴト『まるごときゅうり』

2021.05.30

食欲がない日でも食べやすい!黒七味香る『シソ醤油』

月間人気記事

2020.06.17

こんな症状は危険かも『スマホのウイルス感染症状7つをチェック』

2018.07.12

知らなかった!こんなにも多い『ウリ科の野菜の種類とあれこれ』

2017.03.15

管理栄養士が教える『デトックスウォーターの美容効果と注意点』

2020.06.15

編集部おすすめ『週に1度の作り置きレシピ「玉ねぎ」の常備菜』

2018.08.08

なす、トマト、ピーマン、ししとう…あの野菜も?!『ナス科の野菜の種類とあれこれ』

2021.06.05

季節の手仕事『自家製キウイシロップ観察日記』

2021.03.08

元美容部員が教える『自分の肌に合う化粧水の選び方』

2017.06.01

漬けて使う・合わせて使う『梅味噌の活用レシピ』

2020.11.18

栄養士直伝!「食」から喘息を改善しよう『おすすめの食材&レシピ』

2020.02.11

豆腐、納豆だけじゃない!どれくらい知ってる?『大豆製品』の種類