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取材 2017.11.20

100人100色―雑誌づくりの傍ら、ライブ活動で人に音楽を届ける。編集者・音楽家ー小林恵子さんのお話し

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それぞれの立場、個々の考え方によって「働く」ことへのスタンスは異なります。正解なんてありません。
「100人100色」では、100人の「働く女性」に登場いただき、等身大の姿を語っていただきます。
年齢、環境、キャリア全ての背景が異なる人たちの100とおりの『想いや生き方』の中に、きっとあなた自身にとってのヒントが見えてくるはずです。

今回ご紹介するのは、東京都在住の編集者・音楽家小林恵子さんです。雑誌編集者として出版社に勤務する傍らで、ジャズボーカリストとして精力的にライブ活動を行っています。多忙な日々を送るなか、時には玄人はだしの腕前で友人たちにおもてなし料理をふるまうという小林さん。魅力的なライフスタイルの秘密を伺いました。

——お住まいはどちらですか?

現在は東横線の学芸大学駅で、一人暮らしをしています。夜の音楽仕事が増えたときに独立しました。理由は都心や横浜で夜遅く終わる仕事が多かったので、どちらからもアクセスがよいことと、当時所属していた女性4人のジャズコーラスグループ(StarlightJunction)の練習場所と事務所が近かったため。東急線育ちなので、父方の実家にも近いので安心感があり、ここを選びました。実家は神奈川県にあり、ドアツードアで1時間くらいでしょうか。両親が応援してくれるのも励みになっています。

——これまでのキャリアを教えてください。

大学を卒業してすぐに都市銀行に就職しました。本当は出版に行きたいなと思っていたのですが、当時、母が祖父の家に介護の手伝いに行ったりしていて忙しそうだったので家のことも手伝えるように。それと、勤務先が比較的家の近所(システム部配属と決まっていたので)で、そんなに忙しくないという(嘘でしたが)銀行に決めました。入社してその12月には祖父が亡くなったので「ああ、もういいかな」と思い、2ヶ月後には現在の出版社に転職しました。

大学の時バンド活動にどっぷりつかって、キーボーディストとして賞などもいただいていたので、銀行に入ってからも一人でできる音楽を探そうと考えて、ジャズボーカルを習ったのが音楽活動のきっかけです。セッション(初顔合わせで楽譜を出し合っていきなり一緒に演奏する)に通っていたところでご縁があって、プロデューサー宮住俊介氏(元はアルファレコードでYMO、山下達郎、CASIOPEAなどを手がけた人で、フリープロデューサーの草分けです)企画の女子4人の女性コーラスグループStarlightJunctionに加入しました。

活動がかなり忙しくなって「これはもう会社をやめるしかないか」となったときに、社長が「これからはいろんな働き方があってもいいと思う」と言ってくださり、契約社員として仕事を続けています。出版社ではずっと、中高年向きの生活誌「明日の友(あすのとも)」誌にたずさわり、主に料理・旅行・音楽・文藝を担当しています。11時から16時がコアタイム、という感じで出社します。わがままな働き方を許していただいて、本当に感謝しています。

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▶都内を中心にソロライブ。演歌歌手の田才靖子とのユニット「ジャゼンカ」でも活動中。
 

——これまでにぶつかった壁はありますか?

ぶつかった壁が多すぎて……(笑)。どちらの世界も「努力すれば報われる!」ということがないので……ただ宝くじは買わないと当たらないのと同じで、「努力しないと絶対報われない」というのはどちらにも共通しているかな、と思います。

特に音楽の世界は絶対値というものがないので、とんちんかんな批評をしてくる人もいる。そういうときによりどころになるのは「自分が何かしらのトレーニングを積み重ねている」ということしかないので、そこだけは怠らないようにしています。

あとは、「自分にできることなんてたかがしれてるんだから、あんまり思いつめない。失敗しても次回から二度と同じことをしない。」と口に出して自分に言い聞かせます。「まぁいっか」という言葉がなければ今頃死んでると思います。あと、他人に期待しないと決めてから、いろんなことが楽になった気がします。

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▶精力的に活動しているグループの10周年。センターに立っている男性は、クリスタルキングのムッシュ吉崎さん
 

——これまでで一番忘れられない仕事のエピソードをお聞かせください。

瑣末なエピソードはたくさんあるんですが、一番となると難しい……。誰も本格的にダンスを習ったことがないのに、2週間後にディズニーシーの1時間のショーに立たなくてはいけなかった時の危機感は忘れられないです。最初のレッスンで振り付けの方が「はい、左に8カウント!」って言ったのに右に行っちゃうような状態で、1日目のレッスンが終わったあと振り付けの方は「とんでもないものを背負い込んでしまった」と女だけどトイレで男泣きしたとか……。熱心なご指導のおかげで全3回、なんとか形になりました。なせばなるなーと思いました。

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▶ディズニーシーでは皆様の多大なご尽力により、舞台に立つことができました。今となってはいい思い出です。
 

——あなたにとって「働くこと」とはどういうことですか?

社会との接点とか自己実現とかいろいろあるのかもしれないのですが、つきつめれば自立の手段。これに尽きます。その方法をみんなが模索、選択しているということだと思う。わたしの場合は「やりたくない仕事をしなくてもいい程度」に稼げればいいので。自分が努力して身につけた力に対する対価をいただくことかな、と思います。

——働いている時のあなたを「色」にたとえると?

編集者のときはなるべく白。読者と筆者の間の邪魔をしないように。ライブの企画を考えるときも白。私が私がではなく、聴きにいらしてくださる方が楽しんでくれることを第一に考えるように。

ステージ上では真っ赤のきらっきら。非日常を楽しんでいただけるように。小さい会場のライブのときは寄り添う感じ、と思っていますが、ホールコンサートなどはできるだけ派手に!と思っています。

——今後、あなたが「こうありたい」と思う姿について教えてください。

昔はああなりたい、こうなりたい、と欲もありましたが、記事で担当しているヨガのセティ秀子先生と話していて「行き過ぎた努力も欲になる」みたいなことをおっしゃったことがあり、それからあまりそういうことは考えないようになったように思います。バブル世代でつねに「頑張れ、頑張れ、頑張ればいいことある!」と言われていたわたしたちにとってはちょっと衝撃の言葉でした。

ガツガツしなくても目の前に出てくることにきちんと向き合えば、自分の身の丈にあった人生が送れるんじゃないかなーと。20代の時からずっと中高年向けの雑誌の編集に携わっているので、どんなに貯蓄しても、いろいろ備えても、自分の思う通りにはいかないのが人生なんだな、と身にしみています。なので、何かあっても動じずに自分で道を拓けるように、力をつけていたいと心がけています。編集者も歌手も人付き合いと気合が大事なので、健康には気をつけています。(といっても食生活であまり無茶をしないことと、睡眠をきちんととること、週3、4回のジム通いくらいですが)

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▶夜はどうしても外食が多いので、昼はお弁当を持っていく。不足しがちな緑黄色野菜を多めに、自家製の梅干しも欠かせない。
 

——これからチャレンジしたいことは?

演歌歌手とのユニット、ジャゼンカというのをしております。例えばジャズスタンダードのサマータイムがいつのまにか「りんご追分」に変わったり、ムーンリバーが星影のワルツになったり。豪華客船やお年寄り多めの会場での仕事が大変好評なのですが、このユニットでもっといろいろな地域に行って人に笑っていただきたい。

あと、全然関係ないんですが、音楽の仕事で豪華客船に乗ると「これって本当にお年を召した方に理想的な旅行スタイルだわー」と思うので両親を乗せてあげたい(わたしなんかが乗せてあげなくても彼らの方が経済的には余裕があるんですが、なんとなく乗せてあげて「うむ、いい娘に育った」と思われたいのです)。

——あなたの息抜きやストレス発散の方法を教えてください。

日頃お世話になっているミュージシャンや長年のつきあいの友達などを招いて、うちで宴会をすること。中高時代を自由学園で過ごし寮にも入っていたので(最近新潮社から『自由学園 最高の「お食事」』という料理本がでたくらい、料理が盛んな学校です)、たまに「あーー!どかすかばんばん料理したい!」と思うことがあります。あの人とあの人ならあうかなーとか考えながら誘う人を決め、メニューを考え、狭くてぼろい我が家に8人くらい集まり、次の日ボーリングができるくらいの酒瓶を見るとやり遂げた感があります。(酒瓶を捨てに行くのは恥ずかしいけど)それが縁でカップルになった人とかもいるんですよ。

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▶人が来た日。この日は5人。盛り付けを考えるのも楽しい。全て手作りです。

あとは、「乙女遠足」と称して1日、近郊に一人で遠足に行くこと。これはもうほんっとに思いついて「あ、今日急ぎの用事がない!」と思ったら、さくっと出かけます。

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▶乙女遠足。6月の熱海はジャカランタとブーゲンビリアが咲き乱れる。ジャズボーカルのほんごさとこさんと。

お気に入りコースは横浜から京急で久里浜に行き、ビールとコロッケサンド(これがなんとなく定番)を買ってバスに乗り、久里浜港へ。そこから東京湾フェリーで千葉の金谷に渡り、ロープウェイで鋸山山頂へ。そこからずーっと下山して(かなりアップダウンが激しい)、金谷の温泉に入り、内房線で帰ってくるもの。乗り物に乗るのが好きなので、バス、電車、船、ロープウェイと、充実のラインナップになるので好きなのです。

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▶飛騨高山 これは飛騨高山の農民衣装。表情もつくってみました。
 

——日課や習慣にしていることはありますか?

週3、4回のジム通い。2日に一度は大汗をかくようにしています(食べて飲むのが好きなので。特にラーメンと肉が好き、という感じなので)。

あと全然上達しないのですが、ラテンの音楽が好きなので、スペイン語を習っています。2週に1度のゆるいレッスンで、毎回おいしいお菓子が食べられるのが楽しい……あとは、踊るのが好きで、以前はちょいちょいサルサを踊りに行っていたのですが、最近船で経験した社交ダンスに若干はまり、有楽町の東宝ダンスホールに行ったりしております。

——あなたの生活の中でのこだわりや、お気に入りを教えてください。

「生活は趣味ではない」と思っているので、あんまりこだわりとかはないです。が、お気に入りは「圧力鍋」。実家に初めて圧力鍋がやってきたとき、母が「これはとても危ないの。扱いを間違えると爆発するのよ」「蓋を勝手にあけたら大惨事になるからね」と、わたしが「だめよ」と言われたすべてのことを一度確かめてみないと気が済まない子だったので過剰に言ったのでしょうが、わたしのなかには「圧力鍋=兵器」くらいの印象が植えつけられていました。

でも一人暮らしを始め、いろんな方から「便利だよー」と言われ、兜を脱いで購入しました。最初は怖かったので、シュンシュンいってる鍋が爆発した時に怪我をしないように、まわりのガラスを段ボールで覆ったりしてビクビクしていたんですが、忙しく過ごす毎日の中、今はなくてはならない相棒です。

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▶作り置き。土曜日の朝に、手帳をみながら「来週どれだけ家で食事するか、お弁当を何日持っていくか」考えてざっくり献立を立ててから買い物に行き、土日のあき時間を使って作り置き。
 

——幸せだと思う時間や瞬間はどんなときですか?

ライブのあとに、「楽しかったよ!また来るね!」と言われたとき。わたしが音楽をやめられないのは、多分このためだと思います。

ちょっと話はそれますが、「どうして音楽を始めたんですか」という質問をよく受けます。それにいつも「4歳でピアノを習い始めたからです」としか答えようがなく、「18歳の夏、ラジオから流れてきたビリー・ホリデイを聴いて体に電流が流れました」みたいなかっこいいエピソードを聞いて「いいなー、かっこいい動機で。わたしもなんか捏造しようかしら、山田詠美みたいなやつ……」と思ってたんです。ただ音楽をやめなかった理由はなんだろう、と考えると、僭越ながら「自分が演奏することで、喜んでくれる人がまわりにたくさんいたから」だと思いました。

プロでクラシックの過酷なトレーニングを積んでいらっしゃる方からすれば「ぷ!」っていう話かもしれないんですが、自分がピアノを弾けば、歌を歌えば、まずは両親が喜び、学校の友達が喜び(わたしは昔からいわゆる耳コピが得意だったので、小学校の教室で歌謡曲などを弾いてウケをとっていた)、中学高校、大学、そして社会人になってからも、喜んでくれる人がいた。自分がしたことで、人が自然に笑ってくれたり、喜んでくれること。それが嬉しいし、その手段がわたしにとっては音楽なのかな、と思います。同様に、自分が書いた記事、企画などの評判がいいと、嬉しいです。

——自分の人生で一番大切にしていることはなんですか?

月並みですが、人間関係。音楽も雑誌作りも人付き合いがうまくいかないと仕事にならないので。人付き合いにけちくさい人は何をやってもうまくいかないと思います。人付き合いにけちくさいというのは、自分からは何も発信せずに、付き合いが悪いのではなく、いつも人にのっかろう、旨味を吸おう、みたいな人のこと。だんだんそういう人の匂いがわかるようになったので、やんわり拒絶できるようになりましたが、お互いに有機的な関係を築ける人との関係を大事にしていきたいです。

ーーーーーーーーーーーー
編集者と音楽家という二足のわらじで充実した日々を送る小林さん。編集者としての仕事と音楽活動の両立はさぞや大変では?と思いましたが、小林さんはどちらも楽しみ、全力投球で打ち込んでいます。そのエネルギーの源は、「人が自然に笑ってくれたり、喜んでくれることが嬉しい」という気持ち。料理で周囲の人々をおもてなしするなど、「人を喜ばせたい」という小林さんの純粋な想いが、あたたかい人の輪を広げているのでしょうね。

 
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いろんな女性の働く・暮らすを知ること 『100人100色』は、SAISON CHIENOWAとケノコトの共同記事です。

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