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新しいコト 2017.11.10

押しつけない、決めつけない『心が動くことをしよう』

この経験があるから、昔やっていたから…過去の経験も大切だけど、それだけにすがって自分のことを決めつけてしまうのはもったいない。心が自然と動くことを始めてみませんか?

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この春、わが家では夫の転職をきっかけに夫婦の役割分担を変えた。私が新しく分け持つことになった役割は、家計の一部を支えること。そして私は、「医療福祉エンターテインメントを通じてあらゆる人々の積極的社会参加を目指す」を掲げるNPO法人Ubdobe(ウブドベ)ではたらくことになった。与えられた業務は広報担当。いままで経験したことのない職種だけれど、やってみれば何とかなるだろうと飛び込んだ。

ところが、だ。それがどうにもうまくいかない。何をしたらいいのかわからない。試行錯誤しながらも、迷い、日を追うごとに焦りは増すばかり……。

しばらく悩んだ末に、広報ではなく営業担当に変えてほしいと申し出た。営業なら10年ほどの経験がある。これならできるだろうという自信があった。しかし、ここでも結果を出せない。結果を出したいと焦る一心で1日中あちこち営業活動に回る日々が続き、体の疲労も限界。障害をもつ7歳の二女の真心(まこ)に抱っこをせがまれても、すぐに対応できない有り様だった。

4Photo by MARIA

こんなはずではなかったのに――。

私の中に生まれた焦りや迷いは、家族にも伝わった。小学4年生になる長女のゆとりからは、「仕事辞めたら?」「そんなに楽しくなさそうに仕事してるんだったら家にいてよ」、はては「お母さん嫌い」とまで言われるようになった。私はいったい何のために仕事しているんだろう……。まったくわからなくなってしまった。

私が本当にしたいことは何だろう

私は、本当にやりたいと思うことを実行しているときの、うきうきと心軽く動ける自分を知っている。それと比べると、この心の重さはどうしたことだろう。広報や営業の仕事に心が動いていないのだ。

「仕事なんだから」「お給料をもらっているんだから」と考えたところで、心も体もついてこない。それならば、本当にしたいことを見つけて仕事にするしかない。「私は本当は何をやりたいのだろう?」と自らに問いかける日々が続いた。

3Photo by MARIA

そんなある時、ウブドベのメンバーから「インタラクティブなデジタルアートを何かに活用できないか」という話が出た。デジタルアートとは、コンピューターを使った光や音で表現する芸術作品のこと。最近では「チームラボ」の展示などで有名だけれど、インタラクティブなデジタルアートは、観客の動作やタッチパネルの操作などに呼応してアートが変化していく。ウブドベが以前イベントで活用したデジタルアートも、そのインタラクティブ性が、子どもたちにもとても好評だった。そこでひらめいた。

リハビリを受ける子どもたちに向けて、デジタルアートを使ったリハビリプログラムをつくったら楽しくない?

そこから話は一気に盛り上がり、「Digital Interactive Rehabilitation System(デジリハ)」という一つのプロジェクトが生まれた。

心が動いた瞬間、視界が開けた

このプロジェクトには、私のやりたいことが詰まっている。一つは、子どものリハビリを少しでも楽しくしたいという思い。

リハビリは大人でもツラいしつまらない。そのモチベーションを保つのは難しい。でも、子どもたちの好きなことやしたいと思うことをリハビリプログラムに反映できたら、子どもたちが自発的に動きたいと思えるのではないか。デジタルアートを使えばきっとそれができるはず。

2Photo by MARIA

もう一つは、病気や障がいをもつ子どもたちと健常児のタッチポイントをもっともっと作りたいという思い。

いまの日本では、健常児の通う普通学校と、病児・障がい児の通う支援学校は分かれていて、支援学校に進学した真心にはいろいろな子どもとの出会いがなくなってしまった。病院に行っても親や医療従事者などの大人たちばかりで、子どもの過ごす世界としては狭すぎる。

デジリハでは、プログラミング教室に通う子どもたちもデジタルアートのプログラミングを担う。プログラミングの過程では、リハビリを必要とする子どもたちのことを知ることになるし、一緒に作業することだってあるはず。そうした場は、普段なかなか得られないコミュニケーションの場になるんじゃないかと思っている。

「私は、こういうことをやるためにここに入ったんだ!」と気づいたら、目の前がパーッと明るくなった。やっと心が動いたのだ。

できないと決めつけず、心の動く方向に

私はデジタルアートにはまったく詳しくないし、プログラミングもできない。でも、このプロジェクトについては、アイデアがぽんぽん生まれてくるし、動くべきことが山のように見つかる。心が動く仕事に出合ったと気づいてから、物事がスムーズに進む。仕事をしているという事実も、毎日のように帰りが遅いことも変わらないのに、家族も応援してくれるようになった。

1Photo by MARIA

過去の経験は頼りになるし、自分の自信の源にもなるけれど、すがれるものではなかった。「私にはこれしかできないから」「これならできるはず」という思いは、行動を縛る決めつけになってしまうこともある。

「何かうまくいかないな」と感じたら、そうしたものをいったん全部クリアにして、「いま」を考えてみよう。そうすることで、本当に自分がやりたいことが見えてくるかもしれない。「できない」と決めつけないでトライしてみよう。

文/加藤 さくら
記事/ハレタル
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