
暮らしの歳時記『年越し蕎麦の由来あれこれ』
目次
一年間の締めくくりである大晦日。子どもの頃、この日だけは夜更かしを許されて除夜の鐘が響き渡る中、眠気を堪えて日付が変わるのを待ちわびたものです。
夜遅くに家族揃って食べる年越し蕎麦には特別感があり、子供ながらにワクワクしながら食べた記憶が残っています。日本人の食文化として深く根付いている「年越し蕎麦」に込められた意味とはどのようなものなのかご存知でしょうか?
年越し蕎麦の様々な由来
健康長寿
蕎麦が細くて長い形状であることから「長寿延命」の願いを込めて大晦日に食べるようになったという説は最も広く知られている由来です。また、家系が末永く続くようにという「家運長命」の願掛けであるとも言われています。
災厄や借金を断ち切る
蕎麦は他の麺類に比べてブツブツと切れやすいことから、「今年一年の災厄を断ち切って新年を幸せに迎える」という意味が込められています。
また、年越し蕎麦の風習が根付いた江戸時代には、生活用品の支払いはツケ払いが一般的で、一年分の精算を行う年末には借金の返済に追われて頭を悩ませる人が多かったのだとか。「来年こそは借金とは縁を断ち切りたい」という願いを込めてそばを食べていたという説もあります。
金運UP
かつて金細工職人が飛び散った金粉を片付けるのに、そば粉を練ったものを使っていたことから「金を集める」という願掛けがあります。
無病息災
蕎麦は荒れた土地でも育ち、雨風に晒されても日光に当たれば元気に蘇る植物。「蕎麦のように強く健康でありますように」という願いが込められています。
年越し蕎麦を食べるタイミングは、大晦日であればいつでも良いと言われています。ただし、年が明けてしまうと災難や借金を断ち切れずに新年に持ち越してしまうとも考えられているので、年が変わる前に食べるようにしましょう。
縁起のいい具材といっしょに召し上がれ
家庭や地域によって年越し蕎麦に乗せる具材も様々。せっかくなら縁起が良い具材を選んで験担ぎしてみてはいかがでしょうか。
ねぎ
「ねぐ」という言葉から新年の幸福を「願い」、一年の労苦を「ねぎらう」という意味があります。また、ネギは体を温めて風邪を予防してくれる食材です。
大根おろし
「厄を落とす」として縁起が良く、胃腸にも優しい具材。
海老
腰が曲がる海老は長寿の象徴とされる食材です。海老の天ぷらにしてのせても良いですね。
ニシン
語呂合わせで「二親」からたくさんの子供が生まれるようにと、子宝祈願の意味があります。京都の蕎麦の具材には甘辛く炊いたニシンは定番です。
鶏肉
新年の一番初めに鳴くのが鶏とされているため縁起が良い食材です。出汁も取れるため、全国的に定番の具材と言えます。
油揚げ
「きつね」とも言い商売繁盛の神様であるお稲荷さんの大好物。金運、仕事運が上がるようにという意味が込められています。
たまご
黄身が金色に見えることから手に入りやすい縁起物の食材として重宝されています。温かい蕎麦に生卵を落として月見にしても、玉子焼きにして乗せてもきれいです。
年越し蕎麦は、温かくても冷たいものでもどちらでもお好みで大丈夫です。
大晦日にお節を仕込む人は、かまぼこや伊達巻や海老など、詰め切れなかった食材を年越し蕎麦の具としてトッピングしてしまうのも食材を無駄にしないエコな手段ですよ。
今年一年間に起こったあんなことやこんなことを家族と語らいながら年越し蕎麦をすすって、温かい気持ちで新しい年を迎えましょう。
コラム / わたなべ さやか
大学卒業後、BEAMSに10年勤務。店舗開発担当として日本各地に出向き、服やモノを通してカルチャー発信するライフスタイルショップの店づくりに携わる。その後日本料理一二三庵が主宰する料理教室のアシスタントに転身し和食の世界の扉を開く。2014年には日本橋茅場町に日本酒とおばんざいの店「煮炊きや おわん」を仲間と立ち上げ、初代女将を務めた。現在は食や暮らしにまつわるイベント企画や、執筆活動を行っている。
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