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取材 2018.03.07

100人100色―地域と共に生きる。梶賀のあぶりで地に足着いた「産業振興」を。ー中川美佳子さんのお話

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それぞれの立場、個々の考え方によって「働く」ことへのスタンスは異なります。正解なんてありません。
「100人100色」では、100人の「働く女性」に登場いただき、等身大の姿を語っていただきます。
年齢、環境、キャリア全ての背景が異なる人たちの100とおりの『想いや生き方』の中に、きっとあなた自身にとってのヒントが見えてくるはずです。

今回ご紹介するのは三重県・尾鷲市在住の中川美佳子さん(38)です。都内の大手企業に勤務していた中川さんは、中小企業診断士の資格を取得したことをきっかけに、中小企業を経営する面白さに惹かれていったそうです。もともとご実家が三重県の津市ということもあり、三重県尾鷲市の小さな漁師町・梶賀町にUターン。現在は経営者・地域おこし協力隊・三重県6次産業プランナーの3つの顔をお持ちです。
中川さんがキャリア構築の過程で大事にしてきたことや、梶賀町の産業に感じる可能性、そして梶賀町での暮らしについてうかがいました。

——これまでのキャリアについて教えてください。

2001年に新卒で都内の金融系企業に入社し、管理部門を経験した後経営企画部に異動。子会社設立に携わりました。その子会社に転籍し、事業計画策定や親会社による経営管理の応対などを担当。業務に役立つと思い、中小企業診断士の資格を取得しました。資格の実習で、たくさんの中小企業経営者のお話を聞く機会があり、大企業でずっと勤務していた私には、PDCAサイクルを自分で回せて、組織の成長をダイレクトに感じられることがとても魅力に思えました。特に印象に残っているのは、とあるオフィスビルのメンテナンス会社の社長さんのお話です。70歳手前の社長が、仕事への誇りと想いをイキイキと少年のように語り、「社員たちと一緒にまだまだ頑張るんだ!」と話す姿に憧憬を抱きました。
2014年に本社の営業企画部に異動し、ブランド管理や海外のベンチャー企業との業務提携を担当。仕事にやりがいを感じながらも、実家の家業や親の健康問題も気になり始め、2016年、三重県尾鷲市の地域おこし協力隊を募集するという情報をキャッチしUターンのため応募。採用され、尾鷲市最南端の小さな漁師町・梶賀町の特産品の事業化のミッションを負いました。梶賀町に住むことが採用条件でしたので、今は空き家(一軒家)を借りて住んでいます。任期は3年。
会社員時代の子会社立ち上げの経験から、最初は漠然と「2年くらいしたら自分の会社を立ち上げよう」と思っていましたが、縁あって1年で起業することになりました。2017年4月に、地元町民の出資を募り株式会社梶賀コーポレーション(KAJICO)を設立し、梶賀町の特産品を製造・販売しています。今、力を入れているのは「梶賀のあぶり」。サバやブリなど、尾鷲近海の魚を、薪でじっくり2時間以上あぶった商品です。

②梶賀のあぶりを作る
▶「梶賀のあぶり」を作っているところ。薪火でじっくりと焼き上げる

現在は協力隊としての活動をしながら、KAJICOの事業を拡大し、梶賀町の特産品が全国で愛され、梶賀町における雇用の拡大に貢献できるように日々奮闘しています。幸いにもその経験を評価していただき、資格を持っていたこともプラスになって、三重県から「三重県6次産業化プランナー」として任命されました。なので、今では3つの肩書きがあります(笑)。「6次産業化」とは、地域で獲れる農作物などの資源を地域で加工し、さらに流通や販売まで地域で行う動きのことです。三重県の農林漁業を盛り上げていけたらと思っています。

③網の元家にて
▶運営している和カフェ兼売店「梶賀 網元ノ家」にて。

——どんな働き方が理想ですか?

大企業にいたときに強く感じたのは、「ローテーションで様々な専門領域を学べるのが面白いな、でも全部身に付けてみたいな」ということでした。どこか1点に偏らない、ハイブリッド型の人間になりたいと思って働いています。
梶賀にいる定置網の漁師のおじいちゃんたちなんて、すごくパワフルですよ。70歳で定年しても小船を出して自分で釣りをしてイセエビやカツオを売る。こんな田舎でも、働き方は先進的だと思いませんか?(笑)
私のほうが学ばせてもらうことが多いです。

④ハラソ祭り
▶古式捕鯨を伝えるハラソ祭りの様子。漁師さんの熱気がすごい

——梶賀町にお住まいということですが、どんなところが魅力ですか?

とにかく、人が温かいところです! 梶賀町は、140人くらいの集落なんです。なので、誰がどこに住んでいて、今何しているか全部筒抜けで(笑)。梶賀に来たばかりのときは、飲み会や婦人会の集まりにとにかく参加するようにしていました。梶賀のことをもっと知りたい、もっと町の皆さんと仲良くなりたいって思っていました。コミュニティの中に入っていけるか、不安があったんです。でも、本当に温かく気さくな人ばかりで、家の玄関先にめはり寿司の差し入れがポコッと置いてあったり、「今日はどっか行っとったんか?」と声をかけられたり。東京にいたときは考えられないコミュニケーションがたくさん(笑)。お客さん扱いされなくなってきたな、と感じたのは、半年くらい経った頃でした。町の人に道端でばったり会って、「今日、飲み行くか?」と初めて誘われたときは嬉しかったですね。今となっては男衆の飲み会に私ひとりでも、まったく臆せず飲めます。三重県の酒造メーカーさんが作ったキンミヤ焼酎で、ホッピーをよく飲みます!

⑤ハラソ祭りの打ち上げの様子
▶ハラソ祭りの打ち上げ。

——仕事をする上で大切にしていることを教えてください。

双方向コミュニケーションを大事にしています。前職時代のことなのですが、役員にプレゼンテーションする内容を、現場のひとりひとりの声を拾って作り上げていたのですが、自分が媒介者となって「人をつなぐ感覚」が面白いと思いました。「別の文化で生きている人たちを引き合わせると面白い」というのは、今でも信条にしています。

——10年後の自分はどうなっていると思いますか? あるいはどうなっていたいですか?

社長業を楽しんでいたいです。こんなに楽しい仕事は無いと思っていて、自分ですべて決めて自分でPDCAを回せるからこそ、(大変さももちろんありますが)やりがいもひとしおです。コンサルタントとして「誰かのサポート」だけでなく、自分で社長として判断・実行もして、その経験をコンサル業にも活かしていきたいです。具体的に今後やってみたいこととしては、今、梶賀町で取り組んでいる6次化のスタイルを、梶賀モデルとして広げていきたいです。そのために、今は地元の方々からたくさんインプットさせてもらっています。

⑥梶賀漁港にて
▶梶賀漁港にて。本マグロ水揚げの様子

——働いているときのあなたを「色」にたとえると?

青です。静かに落ち着いているけど、大きなエネルギーを秘めている・・・・・・。そんな風になりたいです。趣味のひとつがスキューバダイビングなのですが、梶賀の海の青色にはいつもパワーをもらいます。

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▶趣味で続けているスキューバダイビング。梶賀の海で見つけたアオウミガメ

——2018年始まったばかりですが、今年の活動情報を教えてください。

引き続き、「梶賀のあぶり」をメジャーにしたいという思いで、取扱店舗を全国的に広げていきたいと考えています。今も色々なところにおいてもらっていますが、東京なら日本橋の「三重テラス」、築地魚河岸海幸橋棟にある「築地音幸」にもあります。もちろん三重県内にも販売拠点はたくさんあり、安濃サービスエリアには上下線ともに販売しています。

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▶「梶賀のあぶり」安濃サービスエリアの陳列

ーーーーーーーーーーーーーーーーー
居心地の良い土地やコミュニティから外に出るのは不安がつきもの。でも、中川さんは「迷いはなかった」と言います。自分の専門領域に固執せず、どんどん殻を破って越境していく中川さん。うわべだけの「町おこし」ではなく、ちゃんと土台になる経済活動を基盤にして人を誘致する「産業振興」がしたいと熱く語る彼女の言葉には、強い信念を感じました。
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いろんな女性の働く・暮らすを知ること 『100人100色』は、SAISON CHIENOWAとケノコトの共同記事です。

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