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ケノコト独自の視点から、様々な人や場所、物を取材して、WEBをはじめとする色々な場所で公開します。

取材 2018.05.09

純粋な「好き」「楽しい」から生まれる『手作りのものづくり』

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「わりと手先が器用なほうなんだと思いますよ」
革製品をほぼ手縫いでつくる洋俊さんは、控えめにそう語る。ピノワークスは、佐藤夫妻が営むレザークラフトのキャンプ道具ブランド。金属製の道具がまだ主流だったキャンプ道具のなか、革製の道具を先んじて生み出し、多くのファンを獲得していった。今回は自宅の一角をDIYしたというアトリエにお邪魔し、そのマイルドな中に秘めたものづくりへの情熱を語ってもらった。

8ピノワークスの佐藤洋俊さん

自分が欲しいものを作ったら、みんなが欲しいものだった

——ピノワークスはご夫婦でやられているとうかがいましたが、もともとはどんなお仕事をされていたんですか?

社会人のはじめは店舗のカウンターなどを作る家具屋をやっていました。その仕事がしたくて就職したかっていうとそうではなく、自然な形で働きはじめたんですよね。そのあと内装の仕事を長年やって独立しました。今は基本的にはこのピノワークス1本で仕事をしていますが、仕事歴で言えば内装の仕事が一番長いです。
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——キャリアとしては革の道ではなかったんですね。ピノワークスはどの商品も革で作られていますが、そこは何かこだわりがあったんでしょうか?

むかしから革が好きで靴にはすごくこだわっていたんです。匂いも好きだし、手入れも好きで磨きだしたら止まらない。前世は靴屋だったかもしれないですね(笑)。もうボロボロではありますが、ダナーライトは20年くらい使っています。
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——革好きが高じてそのままブランドへ?

キャンプ仲間でこういうのあったらいいよねってキャンプ道具の話をしていくうちに自分で作るようになったんです。その頃から革を使った道具を作るようになりました。キャンプでは火を使うことが多いと思いますが、熱に強いことが大事って考えると必然的に革になったんですよね。その頃はまだ革を使った道具って見かけなかったので、『ないなら作ろう』って作りはじめました。

——でも最初はレザークラフトもゼロからのスタートだったってことですよね?

はい、レザーの裁断や縫製も特別どこかで学んでいたわけではなくて独学です。本やyoutubeを見て学んでいきました。

——はじめて作った道具はなんだったんですか?

最初はシェラカップのハンドルカバーです。仲間うちでそれぞれ色違いで持ったらいいなと思って作ったんですけど、それをインスタで投稿したら欲しいっていう人が他にもいらっしゃり広がっていきました。

2日々改良を重ねているそうだが、これが初期の頃のハンドルカバー

あとはガス缶カバーも革で巻けそうだなと思い作ってみました。当時は丸い形がなくて、穴のピッチの最適解なども手探りで見つけ出して行ったので大変だったんですよ。
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——当初はブランドを立ち上げようというつもりだったわけではなく、自分たち用に欲しいから作ったんですね。

そうですね、欲しいから作ろうと。それが2014年だったと思います。その年中にブランドとしてはじめました。当時からキャンプ道具の情報を得ようと思うとSNSや個人のキャンパーさんのブログを頼りにすることが多かったんですよね、それでうちの商品も知ってもらえるようになりました。

3家の1階をDIYして設けたアトリエ。基本的に佐藤さんご夫婦はここで手を動かす

——今でこそSNSでのキャンパーの横のつながりは目をみはるものがありますが、当時からコアな方は見ていたんですね。手応えはあったとは思うんですけど、ブランドとしてやっていくことに不安はなかったのでしょうか?

独立してからは1本で行けるかどうかわからないけど、やるしかなかったんです。キャンプ道具を作るっていうのは自分が好きなことだしキャンプ自体が好きだから、やっていて苦じゃない。納期があってやらなきゃやらなきゃってなるけど嫌にはならないんですよ、作ること自体が根本的に好きなんでしょうね。

革はキャンプの思い出とともに育まれる

——革についても伺いたんですけど、革の良いところって改めて考えると何だと思われますか?

使うと愛着が湧いてくるし、思い出になりますよね。一緒にキャンプに行って色が変わったり汚れたり味が出たり。ただの道具っていう気がしなくなってくるんです。同じ時間を共にしたっていうのが味となって出てくるんですよ。それに、色が育ってくると新品の時よりもカッコよくなりますよね、そうして育てていく楽しみもあると思っています。

——革は使うごとに味が出てくるというのはよく聞く話ですが、それがキャンプとも相性が良いということですね。日常ではなく仲間との特別な時間であったり思い出深い時間を共に過ごしたものが、革にも通じてくるというか。

アウトドア道具もあくまで道具なので、使ってなんぼですからね。道具として蓄積された時間が革には反映されていると思います。
1

——逆に、アウトドアと革で相性の悪い点というのはあるのでしょうか?

色の問題は多少ありますよ。1日2日くらい外に置いているだけでヌメ革の色がだいぶ変わります。だから大変なのはイベント出店時なんです。日が当たるとリアルタイムで色が変わってきますから。だから日向に展示している時は定期的にしまったり向きを変えたり。おもて面だけ色が変わってくるからひっくり返したり。ビニールに入れていても色は変わりますし、中で汗かいて水分・結露したりすると袋から出して乾かしたりも。あとは、革は濡れると柔らかくなってしまう、という点もキャンプでは注意しなければいけないポイントですね。
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——確かにアウトドアイベントでの扱いは大変そうですよね。商品だからケアをしなければいけませんし。

とは言っても、基本的には革は丈夫なのでアウトドアと相性はいいはずなんですよね。綺麗な状態でずっと使おうと思わず、道具としてガンガン使うっていう前提であればすごく良い材だと思いますよ。

——商品のアイディアというのはどのように思いつくんですか?

基本的には、実際にキャンプをやっているときですね。現場でアイディアが生まれて、帰って構造や形などを考えはじめます。アイディアを求めてキャンプをしているわけではなく、いつも通りキャンプしているときに何気なく生まれてきたものがプロダクトになるんです。自分たち用にまずは作ったつもりでも、それを見た人がほしいって言ってくれるんで、結局商品になるっていうか(笑)

——最近の商品でお気に入りはありますか?

このカーミットチェアですね。カーミットチェアの張替えって色々なブランドやお店でやってるので、そのまま座面を革にしても面白くないなぁって。ぼくは椅子って聞くとソファをイメージするんです。だからソファのような座りごごちのカーミットチェアを作ろうと思ったんですよね。小さくクルクルはできず二つにたたむだけにはなってしまうんですけど、僕はこっちの方が好きです。
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バージョンアップではなく、新しいものを作る

——instagramの投稿を見ていると、お客さんからのリクエストで作っていることもあると思うんですが、そういうケースは多いんですか?

多いですね。最近はコットとか椅子を革張りにしてほしいっていう注文も増えてきているんですけど、スノーピークのtakeチェアロングの座面を革張りにしてほしいという依頼が大物では初だったと思います。

——でもそれって完全にオリジナルになるわけですよね?効率を考えると避けがちなことだと思うんですが。

結局商品化になることが多いんですけど、その人用のプロダクトを作る、というのはウェルカムですよ。ただ、オーダーのものは型は作らないんです。1回きりだと思って寸法くらいしか残していません。だから、また作るってなると型を作っておけばよかったって思うことはあります(笑)

6ミシンも活用するが、細かな作業が多いため基本的にはひとつひとつ手縫いで作っている

——ということは二度と同じものは作れないと。

はい、もう一回作ってくれって言われても難しいですね。これってどう見ても非効率なんですけど、お客さんからのオーダーは今までにない新しいものだから楽しいんですよ。そして勉強になる。同じようなものを作ることになった場合に、その経験が糧になるんですよね、形が違っても縫い方や穴の開け方が同じプロダクトって往々にありますから。

それに、こういうオーダーを受けて新しい刺激を受けていかないと、新しいものというのは生まれてこないと思うんですよね。世の中にはかっこよくなったとかバージョンアップっていうのは多いですけど、ぼくは新しいものを作りたいっていうのが第一にあるので。
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——最後に、ご自身の夢というか、最終的にはこういうものを作ってみたいって考えていることはありますか?

最終的にはやっぱりブーツとか靴を作ってみたいです。売り物になるとは思ってないけど自分用として作りたいなと今でも思っていますよ。
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終わりに

好きからはじまり、ないから作る。そのために独学でここまでやってきたピノワークス。好きな革とものづくりについて語ってもらった洋俊さんの表情は、少年に戻ったようで印象的だった。ピノワークスの生む新しさは、この純粋な好奇心と情熱からやってきているのだろう。

取材後に、洋俊さんのご好意で財布を作らせてもらった。
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「これは単純な作りなのですぐできちゃいますよ」と教えてもらったが、お世辞にも手先が器用とは言えない編集部は、何度か失敗をして部品をダメにしてしまったりも。おそらく洋俊さんが作る何倍もの時間をかけてできあがった。

自分で作ってみて改めて知る、ものづくりの大変さとプロの偉大さ。道具ひとつひとつに魂が宿っていることを感じながら、これからのキャンプを楽しみたい。

ピノワークス

—ウェブサイト

https://pinoworks.net

—instagram

https://www.instagram.com/pinoworks

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