知るコト知るコト

ケノコト独自の視点から、様々な人や場所、物を取材して、WEBをはじめとする色々な場所で公開します。

道具 2018.06.10

自然が生み出す唯一無二の素朴な美しさ『備前焼』の器

LINEで送る
Pocket

『備前焼』は、岡山県備前市伊部(いんべ)地区周辺を産地とする焼き物です。絵付けがされていないため、素朴で重厚な作風が備前焼の持ち味です。しかし、備前焼の魅力はそこだけではありません。その魅力は今なお受け継がれている伝統技法から感じられます。そんな備前焼についてのお話です。

千年の歴史をもつ『備前焼』

備前焼は別名「伊部焼」と呼ばれています。日本六古窯(ろっこよう:日本代表する陶磁器の産地)の一つに数えられ、千年の歴史を持つ陶器です。平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて、熊山のふもと備前の地で生活用器の椀や皿、盤、瓦の生産を始めたのが備前焼の始まりといわれています。鎌倉時代から室町時代にかけて、備前特有の赤褐色の焼肌を持つ焼き物が広まりました。室町時代末期頃からその素朴さが茶人たちに愛され、茶道具も多く生み出されていたそうですよ。

江戸時代には、安価で大量生産が出来る磁器の登場により、備前焼は茶陶から離れ、鉢や酒徳利など、実用品の生産が中心となりました。しかし、それ以上に有田焼や瀬戸焼などの磁器の生産が盛んになり、備前焼の市場は次第に圧迫されるようになったのです。

その後、明治時代や大正時代でも傾向は変わりませんでしたが、昭和に入って状況に変化がみられました。金重陶陽という陶工の登場により、『備前焼』を現在の繁栄に導くきっかけとなりました。金重陶陽は、昭和31年に国の重要無形文化財保持者(人間国宝)に指定されています。彼をはじめ、多くの人々が努力を重ね、芸術性を高めたことにより、備前焼は人気を取り戻したのです。

ad515956ce4b8bde5bdd0182b24134c8_m

伝統を守り抜いた『備前焼』の魅力

備前焼には大きく3つの特徴があります。

自然の土味を活かした焼き上がり

茶褐色の地肌は「干寄せ(ひよせ)」と呼ばれる田の土と鉄分を含む山土を配合して作られたもので、備前特有の茶褐色に焼き上がり、また、粘り気があるので薄造りにするなど細工しやすいのが魅力です。

釉薬(ゆうやく)を使わない焼き締め

備前焼は古来から一貫して釉薬(陶磁器の表面を覆うガラス質の薄い膜)を使わない技法を守り続けています。 酸化焼成により堅く締められることで、強い赤味が引き出されます。

「窯変」によって生み出される世界に1つの模様

「窯変」とは薪窯では1200℃を超える焼成中に生じる変化のことです。炎と灰により1つとして同じ色、同じ模様にはなりません。

・緋襷(ひだすき):製品を重ねて焼成する際に製品同士がくっつかないように間に藁を置く。この藁が焼けて緋色(ひいろ)に残った跡のこと。
・胡麻:焼成中に薪の灰が飛び、胡麻のような模様になったもの。その色や飛び具合で胡麻だれ、飛び胡麻、かせ胡麻などがある。色は、白や黄、青など様々。
・桟切(さんぎり):灰が溜まりやすい桟の近くに置かれた焼き物が酸化ではなく、還元焼成されることでできた黒みがかった青色の部分。
・牡丹餅:文字通り牡丹餅形の跡がつくこと。焼き物の上に円形のものを置いて焼成することで、そこだけ炎も当たらず灰も降らないことで出来る模様。

土の性質や、窯の温度、灰の降りかかり方の違いにより、焼き上がりがすべて異なり、同じ作品が1つとしてありません。その自然な美しさも備前焼が愛される理由かもしれませんね。

◎ef7d5cd23a0bdcb3f508557735058362_m

「生涯の伴侶」と呼ばれるほど長く使える『備前焼』

備前焼は高温で約2週間焼き締めるため「投げても割れない」と言われるほど堅く、使い込むほどに味が出ることから「生涯の伴侶」と呼ばれるそうですよ。その丈夫さを活かしてすり鉢や、大きなカメ、壷が多く作られていました。現在では、微細な気孔があり通気性に優れているため、切花が長持ちする花びんや、微細な凹凸により、きめ細かな泡ができることからビールグラスとしても重宝されています。

乾いている状態の備前焼は、本来もつ美しい姿の半分ぐらいしか魅力を表現出来ていないそうですよ。そのため、ご使用前には水に浸すか煮沸してくださいね。

5ab8402ed992c86573d4ba4ab2799393_m

備前焼は使い込むことにより表面の微細な角が段々と取れ、使えば使うほど落ちついた味わいになってきます。この味わい深い佇まいと偶然が重なってできた神秘的な焼き色を暮らしの中で感じてみてください。

記事/ケノコト編集部

その他のおすすめ記事

日本の陶磁器生産量No.1!日常に深く溶け込む『美濃焼』

057

人々の心を掴んで離さない。上品で華美な様式美の『有田焼』

90c36d5d631c405b0a58b4a3c91de129_m

素朴な味わいで生活用品として長く親しまれてきた『越前焼』

5fd06be3b23c86436202af403fbe7422_m

LINEで送る
Pocket

コメント

instagram-iconみんなのInstagram

人気の記事

2018.08.15

日本の暮らしの言葉『夏真っ盛り「暑さ」と「涼しさ」を表す言葉たち』~葉月の暮らし~

2018.08.14

クリーム溢れる!ふわっ、しゅわっ『生シフォンケーキ』

2018.08.13

台所育児エッセイ「暮らしに恋して」『08 梅シロップのジンジャエール』

2018.08.08

夏のひんやりおやつ『抹茶のくずもち風』

2018.08.06

台所育児エッセイ「暮らしに恋して」『07 みつはしさんちの冷やし鶏』

2018.08.03

旬の野菜を食べよう!甘くておいしい『とうもろこしごはん』

2018.08.02

日本全国文化旅!『長崎県〜独特な風習やしきたりを知る〜』

2018.07.31

小学生の自由研究におすすめ!一日で出来る『貝殻を使ったハーバリウム』

2018.07.30

素材で選ぼう『作り置きにぴったりな保存容器の種類』

2018.07.29

発達・育児相談室から『それぞれみんながんばりすぎている』

編集部おすすめ記事

2018.08.17

作り置き常備菜シリーズ『レモン酢シロップ』

2018.08.07

レトロな喫茶店風『昔ながらのたまごサンド』

2018.08.07

家にある鍋を有効活用しよう!使い方によって調理時間も料理のおいしさも変わる『鍋』

2018.08.07

編集部おすすめ『週に1度の作り置きレシピ「かぼちゃ」の常備菜』

2018.08.04

ひんやり冷やして大人のデザート『ピンクの桃のポタージュ』

2018.08.01

【ケノコトInstagram企画】8月の「日常のコト」を『#葉月のコト』で投稿しよう

2018.07.28

まぐろレアステーキとアボカドをサラダ丼仕立てに『まぐろステーキアボカドサラダ丼』

2018.07.27

いつものキャベツにインドの風味を『さっぱりクミンキャベツ』

2018.07.14

健胃、ダイエットにも!『キャベツとグレープフルーツのビューティージュース』

2018.07.13

だしがらでもう一品『しっとりふりかけ』

月間人気記事

2017.03.15

管理栄養士が教える『デトックスウォーターの美容効果と注意点』

2018.07.12

知らなかった!こんなにも多い『ウリ科の野菜の種類とあれこれ』

2017.04.01

脇の下を押すと痛くない?『脇コリの解消は 肩こり解消にもつながる』

2017.07.16

こんな症状は危険かも『スマホのウイルス感染症状7つをチェック』

2017.09.19

編集部おすすめ『週に1度の作り置きレシピ「なす」の常備菜』

2017.09.14

指先のカサカサを直したい!『指先の乾燥の原因とケア方法』

2017.04.06

どんなおやつを選択してる?『低GIなお菓子を選んでみよう』

2018.03.26

元美容部員が教える『自分の肌に合う化粧水の選び方』

2017.10.28

押し麦、もち麦、丸麦…種類によって異なる美味しさ『麦ご飯の種類とあれこれ』

2018.08.08

なす、トマト、ピーマン、ししとう…あの野菜も?!『ナス科の野菜の種類とあれこれ』