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教育・子育て 2018.09.21

発達・育児相談室から『「運動会がイヤ」そう言われたら』

スポーツ、文化の秋!! 学校などはソワソワしだし、運動会、学芸会、展覧会などの行事に向かって動き出す季節です。そして私の相談室がにわかに忙しくなるのも、実はこの時期。「子どもが落ち着かなくて…」「爪噛みがひどいんです」「学校に行きたがらない」なんて声がちらほら。一体子どもたちに何が起こっているのでしょう。
シリーズ『発達障害ってなぁに?』では、私は「思いを馳せる」という言葉を使いました。子どもたちの「あら!?」という言動に、私たちの想像力をフルに使って、様々な角度から理解しようと試みる。

さぁ、この時期の子どもたちに思いを馳せてみましょう。思ってもみない「ワケ」がそこにあるかもしれません。

僕の「安定」を壊さないで!

1年生ならもちろんのこと、クラスや先生が変わった子どもたちも、ようやく学校やクラスに慣れるのが10月です。一日の流れや自分が抱く不安にもやっと見通しがついてきて、ほっと一息ついたところに「行事」はやってきます。子どもたちの中には、とにかく安定第一で過ごしたい子がいます。多くは脳機能の特性で、情報の整理が苦手だったり、刺激に弱かったりすることが原因です。さて、この子たちの安定を壊すのはどのようなことなのでしょう。 

ざっと思いを馳せてみても…
 ・行事の練習などによるスケジュールの変更
 ・教室、体育館、校庭などがいつもとちがうなどの環境の変化
 ・先生のピリピリ感(他の子を注意している声が自分のことのように聞こえるなど)
 ・子どもたちのピリピリ・ワクワク感(クラスがざわつくなど)

とにかく「いつも」の状態でいたいのに、行事はそうはさせてはくれません。ものすごく苦痛を感じて学校に行きたくなくなる子もいるし、逆にワクワクしすぎてコントロール不能!になる子がいても不思議ではありませんよね。

うでにつけるポンポンがイヤ!!

Aちゃんは1年生。運動会の練習をし始めたあたりから、様子が変です。お家では爪かみがひどくなり、お母さんがとても心配していました。Aちゃんと会って話をしてみると、運動会がとても楽しみとのこと。ただ、ダンスで腕が重くて上にあがらなくて、先生に怒られるというのです。腕にケガはなさそう…。ピンときたのは、ダンスの時に腕に着けるポンポンです!

子どもたちの中には、独特な感覚を持つ子がいます。私たちには思いもよらない感じ方をするために、学校生活で辛い思いをすることもあります。

この時期で言えば、
 ・大きな音(スピーカーからの音楽、スタートのピストル音)が耐えられない
 ・はだしでの活動がイヤ(足の裏が刺すように痛いと言っていた子がいます)
 ・マイクから聞こえる先生の声が怖い
 ・体につける装飾が痛すぎる
 ・展覧会で使う絵具のにおいが苦手。ねんどが触れない。

思いを馳せれば馳せるほど、辛そうです。

番外編 ~独特な考え方、自分ルール~

私が出会った子の中で「へぇ!」と思わされのたが1年生のB君。運動会の練習に急に参加しなくなって学校中をふらふらし、先生がとても困っていました。よくよく話を聞くと、「もうできるようになったものを、なんで毎日毎日練習しなきゃいけないの!?」と本気で憤慨しています。「そんなこと言っても、みんなやってるでしょ!」は、まるでB君には通用しないと考え、私は「なるほど!」と膝をうち、「できると思ったことの練習はしなくていい。でも何か新しいことがあるといけないから、そばで練習を見ていた方がいいと思う」と話すと、しぶしぶ納得し、好きな本を1冊持ってみんなのそばで見学することになりました。

独特の考え方や自分のルールが学校のルールと一致しなかった場合、B君のように先生にしてみたら困った子になってしまうことがあります。脳機能の特性による独特な考え方を捻じ曲げたり、我慢したりしてまでルールに従うには、まだB君は幼すぎます。

辛さを本当に理解する

「たったこんなことで…?」「全部話を聞いてあげてたら甘やかしにならない?」よくこんな声を聞きます。確かに私たちからしたら些細なことですし、B君のように「もうできてるから練習しない」なんてことを皆が言い出したら学校は成立しませんよね。
でも、国語の時間が突然運動会の練習になることが、行きつけの店でコーヒーを飲んでから会社に行くのが日課なのに、予告なくお店が閉店していたのと同じインパクトだったら!? たかが絵具のにおいといっても、それがドリアン級の臭いだったら!? そして、自分の考え方や価値観を真っ向から否定される状況で、誰からも理解されないと絶望したら?? ただ事ではないのです。

そして、このような社会との思考や感覚のズレから来る困った行動は、そう長く続きません。
基本的な特性は変わりませんが、少しずつ慣れたり発達したりしていくなかで、周りと自分をすり合わせていくことができるようになります。3年生になったB君は、今では練習に参加しています。自分でもなぜ今は参加するのかはわからないそうですが、「1年生のとき、練習しなくていいって言ってくれて嬉しかった」と何度も私に言ってくれます。

思いを馳せたら~何ができるか一緒に考えよう~

さて、ではこの時期に子どもたちに心配な変化があったら、どうしたらよいのでしょうか。まずは「自分の思いもよらない大変さがあるのかもしれない。」と思うこと。それが大切です。その次は、頭のアンテナをびんびん立てて、なんとか自分と環境のすり合わせをしてきた勇者をお家でゆっくり休ませてあげましょう。そして目に見えて辛そうな場合や子どもからSOSを出して来たら、じっくり話を聞いてあげてください。

練習の様子を見せてもらったり、先生と話をしたりすることで、思いもかけない辛さに気が付くこともあるかもしれません。気づくことができたら、それを速やかに取り除いてあげること。事前にスケジュールをわかる限り伝えたり、音なら全ての音をカットしない耳栓を使ったりもできます。ボンボンやお面をつけられなくても元気な踊りが見られればそれでOK! 直接肌に飾りがつかなければ大丈夫な子もいました。

でもなにより、辛さを共有して寄り添い、一緒に考えてくれる誰かが一番の助けになります。
どの子にもそんな誰かがいてくれたら…今日も願ってやみません。

文/臨床発達心理士 三浦 静
記事/ママトコタイム
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