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食のコト 2018.10.22

10月 季節の和菓子 優しい甘さの『栗蒸し羊羹』

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秋の果物を使ったスイーツがお菓子屋さんを華やかに彩る季節となりました。見た目も華やかな洋風スイーツも素敵ですが、素朴な和菓子のしみじみした味わいも捨てがたい物。今月ご紹介する和菓子は旬の栗を使った「栗蒸し羊羹」です。

実は歴史が一番古い「蒸し羊羹」。日本人が大好きな小豆のお菓子。

「羊羹」と聞いてイメージするのはどんな物でしょうか。するりとした口当たりの軽やかな「水羊羹」でしょうか。それとも少し粘りのある弾力で黒文字を押し返す「煉羊羹」でしょうか。

一口サイズに切り分けられた生菓子扱いの物は別として、きっちりと包装された羊羹は日持ちのするお菓子という認識が一般的かと思います。実は、ある物を使って羊羹を固めているから日持ちするのです。そのある物とは「寒天」です。寒天は元々テングサという海藻を煮出して固めたところてんを凍らせて作ります。寒天は凝固力が強いので砂糖をたくさん入れて練った小豆の生地を固める事ができます。糖度が一定以上の食品を密封する事で煉寒天や水羊羹は日持ちするのです。

ところが日本の食文化の歴史の中で寒天が登場するのは江戸時代の事です。それまでの羊羹は寒天ではなく、小麦粉などのつなぎを使った生地を蒸す事で凝固させる「蒸し羊羹」だったのです

そもそも「羊羹」と漢字で書いた名前を見るとちょっと不思議な気がしないでしょうか?「ようかん」の「よう」の部分が「羊(ひつじ)」、かんの部分は「羹(あつもの/スープの事)」という字が当てられています。漢字の意味をそのまま読めば羊羹とは羊肉のスープ、という意味になります。

実は元々、羊羹とは中国でコラーゲンの多い羊肉のスープが冷えて固まった物を煮こごり料理として供した物だったそうです。鎌倉時代から室町時代辺りに中国から来たお坊さんによってレシピが伝えられた物の、日本での仏教は肉食禁止だったため肉の代わりに小豆を使ったお菓子に変化して蒸し羊羹の原型となったとされています。

 

日本人の大好きな小豆と栗。


小豆も栗も、古くから日本人の食を支えてきました。栗は採取時代の縄文の頃から、小豆は登呂遺跡などから出土しており、原始農耕の時代から栽培されていたと推測されています。
小豆は最初、薬としての扱いで煮汁が解毒剤として扱われていた時代もあったのだとか。現代でも漢方では生薬として扱われ、むくみや便秘に良いと言われている食材です。

また、中国から入ってきた文化の中で赤い物は魔除けになるとして小豆は厄払いの食べ物としても珍重される事になります。今でもおめでたい時にお赤飯を食べたり、お彼岸などにおはぎとして小豆を食べるのはその名残だそうです。縁起物としてだけでなく、小豆は日本人の好みにあったようで、鎌倉時代には餡に加工されるようになります。最初は塩で味付けした塩餡、砂糖が使われるようになって来たのはずっと後で江戸時代頃になってからです。小豆その物にほのかな甘味がありますので、蒸し羊羹が生まれた頃の人達は豆の味を楽しむ食べ物として味わっていたのかもしれませんね。

砂糖をふんだんに使った甘みの強い煉羊羹が高級品として注目される一方で、砂糖が控えめで素朴な味わいの蒸し羊羹は目立たない時代もあったようですが、大正時代頃になると「これまでにない味わいのお菓子を」という職人さんの手によって蒸し羊羹と栗の甘露煮を合わせた栗蒸し羊羹が考案されます。砂糖が多い物ほど上物、という時代からやがて自然な味わいを大切にするという感覚へと変化して来た今、やさしい味わいの栗蒸し羊羹は秋に味わいたい素敵なお菓子です。季節の栗を丁寧に下ごしらえして作った甘露煮をあしらった栗羊羹。熱いお茶と一緒に楽しんでみて下さい。

記事/ケノコト編集部

 

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