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食のコト 2018.10.25

もっと知りたい日本の郷土料理-山梨県『ほうとう』-

山梨県の『ほうとう』と言えば全国的に知られている郷土料理かもしれません。鉄鍋、そして彩り良い煮汁からのぞく太めの麺がいかにも寒い季節においしそうなお料理です。山梨でほうとうが生まれた背景には地域の農業の事情が関わっているそうですよ。

養蚕を行うために桑の裏作として作られた小麦が小麦食文化を生んだ


山梨では古くから養蚕が行われていましたが近世に養蚕が特に盛んになった時、田畑で莫大な桑を栽培する必要ができたため、裏作として主食になる麦の栽培が広まりました。そして収穫された麦を食べる料理が生まれます。水田での稲作が難しい地方では麦の栽培による粉食文化が根付いていますが山梨の場合は茹でたさつまいもなどを潰して粉と混ぜた「おねり」、小麦粉の皮で野菜の餡を包んで焼いた「おやき」、そして野菜を入れた汁で煮込んだ「ほうとう」が米の代用食として広く食べられていました。中でもほうとうは汁で煮込むため小麦粉が膨らんで量が増すため経済的という意味でも広まったとされています。

諸説あるほうとうの名前の由来


「ほうとう」という名前については山梨ご当地の偉人である武田信玄公が陣中食として刀で材料を切ったので「宝刀(ほうとう)」となった、という俗説がありますが「ほうとう」という名前自体は大変古く、奈良時代の書物にも登場しているそうです。現代でも中国の陝西地方の言葉ではいわゆる「ワンタン」の事を「ホウトウ」と呼んでいるのだとか。もし、古代に大陸から伝わった小麦料理の名前が郷土料理の名前として残っていたのだとしたらなんだかロマンを感じてしまいますね。

「ほうとう」のおいしさは「汁に溶けた粉のとろみ」

ちなみに山梨以外の地方の人だとほうとうを「幅広のうどん」と捉えているケースも多いのですが、山梨の人にとっては「ほうとう」はあくまで「ほうとう」であってうどんとは全く違う、という感覚なのだそうです。小麦食文化が根付いている日本各地には他にも小麦を練って汁で煮込むスタイルの物がありますが、「すいとん」や東北地方の「ひっつみ」のように「小麦で作った主食を汁で煮る」という扱いで「麺料理」とは少し違うジャンルの食べ物というべきでしょうか。

ほうとうが一般的な麺類と特に異なるのは汁に溶け込んだ粉が多く、とろみが味のポイントになっている点かもしれません。市販のほうとうの麺は生地に多めの打ち粉が付いた状態で包装されていて、とろみの素として打ち粉も鍋に入れるよう説明がなされています。

家庭で作られる場合でも下茹でなどはせずに練った生地をのしてザックリと太めに切ったらそのまま鍋に入れて生の段階から煮込み始める作り方が基本になっています。この作り方は茹でた麺に澄んだ出汁をかける一般的なうどんやそうめんとは全く異なっています。

ほうとうは煮崩れた野菜と打ち粉、溶けた麺から出たとろみが混じり合う事でなんともいえないコクのある口当たりが独特の美味しさを生んでいるのです。また、一般的な麺類はできたてを食べきらないと伸びてしまいます。ですが、ほうとうが残った時は翌日温め直すとできたてとは違ったおいしさを楽しむ事ができるのです。出汁がしみたほうとうと、とろみが増した汁の味わいは二日目の方が好きだと言う人がいるのがわかるしみじみした味わいです。

味の決め手はコクのある甘みが特徴の甲州味噌とカボチャ。


ほうとうの味を決めるのに欠かせない物が甲州味噌とカボチャです。山梨のほうとうはカボチャが入っている事が多いのですが、カボチャの甘みととろみがあるかないかで味わいがかなり違っています。また、味付けに使う甲州味噌はこの地方独特の物で米麹と麦麹が両方使われています。寒い地方の味噌は辛口が多いのですが甲州味噌は麦麹が入っているので甘口の味わいが楽しめます。

山梨の『ほうとう』は地域で取れる麦と野菜を使って、寒い冬にあまり手をかけずに温まる事ができるように考えられた合理性や実用性から生まれた郷土料理と言えるかもしれませんね。

 

記事/ケノコト編集部

 

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