知るコト知るコト

ケノコト独自の視点から、様々な人や場所、物を取材して、WEBをはじめとする色々な場所で公開します。

暮らし・スローライフ 2018.11.12

台所育児エッセイ「暮らしに恋して」『 19 整理整頓なんて』

LINEで送る
Pocket

はっきり言ってクローゼットの中まで人に見せられるかは全く気にして生きていない。

我が家にはラベルを貼っている箱も引き出しもない。導線を考えて物を置くことで暮らしを巡らせることをイメージしているはいるがそれすら徹底していない。人から見れば何故薬箱ではなくヘアゴムと爪切りがここにあるかなどと思われそうな配置だがお構い無しである。

説明すると、まず髪を結う必要があるのは次女だけである。そしてほかの子供3人は爪が伸びてもあまり気にすることなく平気で過ごすが、次女は習慣としてコンスタントに切りたい人である。だから爪切りは次女が場所を把握していれば問題なく、ほかの子供は次女の姿を見て爪を切ろうかなと自発的に感じて我が家は巡っている。親である私の意志でもタイミングでもない。

服も、すっかり背が並んだ長女と私のものが混ざらないようにとか、長男が園にスムーズに行けるかくらいは考えるが、人様に迷惑でなければ問題としない。迷惑とは部屋が乱れて不快になったり不衛生になることなど、家族目線でのことを指すのではない。何かが見つからないことで約束の時間を守れないことや、その日1日他者を巻き込む忘れ物をすることを指す。

そうでなければ、別に良しとしよう。

親に支度や洗濯・片付けを任せれば、常に心地よく整った部屋になるのかもしれない。その心地よさを知り、親の背を見て整理整頓を学び真似ることもあるだろう。それでも私はまだ小さな彼らに委ねたいのである。

我が家では、「洗濯機へ入れる・干す・乾いたら自分のかごに納める」この一連を各々が全うしている。性格や年齢で、籠の中はまぁ見られたものでもないけれど、例えば靴下が埋もれてしまわないように立てて納めるとか、下着は手前とか、自分のルールを決めているのが伺える。

親が決めたルールでこなすことは、「指示されたつまらない手伝い」。でも自分で工夫して籠にぴたりと納まったら、毎日のことなのに毎度ひとつの「達成感」に繋がるように思う。

続かないことには理由があり、かえってそこから意義を見出せたりする。例えば「パジャマを脱いだら畳む」ということがなかなか定着しなかった。冬場毎日は寝巻を洗わない我が家なのだが、脱いだらかごに入れれば良いというふうにハードルを下げた。畳むというワードが外れただけでそれは日課になった。そしてそのかごに新しい下着を加えて風呂場の脱衣所まで運び風呂あがりに着たら、かごには日中着ていた服を入れて洗濯機へ向かう習慣となった。ハードルを下げたはずが、一気に暮らしが巡りだしたのだ。そして自分で干してかごに納めているのだから、もう本当に我が子ながら大したものだと思わされる。

ほこり除けや来客時に備えてなどという理由では続かなかった各々のかごに布の蓋をするという行為も図らずも定着したひとつだ。知り合いが泥染めと手仕事で仕上げてくれた風呂敷に変えると、「お気に入り」だから自ら使いたくなったようだ。結局は人は皆、特に子供は「気持ちいい」とか「心地いい」のが最優先なのだから、例え親から見れば乱れて映る引き出しの中でもそこに心地よさがあるのだと思うから見守る心持ちでいられたらと思うのだ。人に迷惑をかけないのは生きる上でかなり重要に違いないが、人に迷惑をかけて初めて心底身に染みて、自分なりに改訂しながらやっていくよりほかないのだから。

私は子供に最高の教育や本物に触れる経験などは遺せない。だけれど、最低限のことはもう既に託せたように思えている。4人も子供がいても子育てに気負いがないのは私の長所であろう。明日私がここにいなくても、味噌汁とご飯を用意し、困らない程度に衣類や身なりを整えて暮らしていく子供たちが想像できるのだ。

要領が悪くても、愛想がなくても、太陽のように周りを明るく温かく包めなくても。
自分の心身を大切に灯火つきる日まで命を全うしてくれたなら。

大きな船を仲間と知恵を出し合い作りあげて航海する人生、小さな船でも自分好みを貫き己で漕いでいく人生。誰かが切に何か望んでも祈っても、人生は本人のもので、傍目にどう映ろうと本人しか「望んだことなのか」「幸せか」は判断できない。親がどんなに子を思おうと、可能な限りのあらゆる経験を与えても、だ。

私はというと、ひらり落ちて流れに身を任せ気持ちよく浮遊する木の葉のように生きていてもこんなにも幸せなものだから…。見たことのない景色をと未知の世界を求めるだけが正解ではないと思う。

沈んでも海の中にしかない景色もあるし、光を求め上がろうなどともがかずともその場での心地よさを見つけられると思う。

心地よい暮らしはそれぞれで、家族とはいえ個の集まりだから、家を整えることに固執することはない。

いつかは散り散りになる個の欠片が部屋のそこかしこに散りばめられた「我が家らしさ」に包まれる幸せを今、私は存分に感じている。

記事/みつはしあやこ

家時間好き4児の母。台所育児エッセイ「暮らしに恋して」を執筆。子育てのゴールは親がいなくても生き抜く力を育むこと=自炊という信念。仕事は暮らし関連全般で多岐に渡るが一応料理家、「和食育こころ」主宰。誰でも簡単に作り置きできるおやつの著書もある。心地よく巡る暮らしの工夫をインスタグラムで毎日更新中。
Instagram
みつはしあやこHP
こころ

その他のおすすめ記事

台所育児エッセイ「暮らしに恋して」『16 へたくそ、てきとう。』

台所育児エッセイ「暮らしに恋して」『16 へたくそ、てきとう。』

台所育児エッセイ「暮らしに恋して」『17 10月としあわせの話』

台所育児エッセイ「暮らしに恋して」『17 10月としあわせの話』

台所育児エッセイ「暮らしに恋して」 『18 育児終了』

台所育児エッセイ「暮らしに恋して」 『18 育児終了』

LINEで送る
Pocket

コメント

人気の記事

2019.07.06

やさしい暮らしのヒント『献立を考えるコト』-5.こんな時なに食べる?日常的な不調への対処-

2019.07.05

優しい甘さの夏おやつ『白桃ヨーグルトアイス』

2019.07.02

季節の手しごとしませんか?『らっきょう漬け』のアレンジ2種

2019.07.01

もっと知りたい日本の郷土料理―宮崎県―『冷や汁』

2019.06.29

やさしい暮らしのヒント『献立を考えるコト』-4. 献立の量-

2019.06.23

シンプルな美味しさ!手が止まらない『ハッシュドポテト』

2019.06.21

バター醤油が食欲をそそる!『ガリバタ醤油チキン』

2019.06.20

【食育のコト】魔法のジュースで夏バテ防止『赤紫蘇ジュース』はいかが?

2019.06.19

材料3つ!一度は作りたい『プリンケーキ』

2019.06.17

台所育児エッセイ「暮らしに恋して」『40 究極のお重』

編集部おすすめ記事

2019.07.04

超簡単!一度は作りたい濃厚『ガトー・テリーヌ』

2019.06.30

初夏のおかずに!具沢山の『味噌炒り豆腐』

2019.06.27

季節の草花『紫陽花のコト』魔除け・縁起物にも重宝された花

2019.06.26

日本の言葉『梅雨』にまつわる季語あれこれ

2019.06.25

まるできな粉そのもの?!『きな粉のほろほろクッキー』

2019.06.20

『茶の湯の世界へようこそ』ー5."花は野にあるように"

2019.06.12

なかなか聞きづらい『ボーナスのコト』~気になる使い道は?~

2019.06.11

ふんわり安らぐ思い出の味『マグロと茄子のみぞれ煮』

2019.06.07

季節を感じる贅沢、雨の日は『梅仕事』を始めてみませんか

2019.05.26

夏野菜レシピにランクイン!『なすと豚肉の旨炒め』

月間人気記事

2018.07.12

知らなかった!こんなにも多い『ウリ科の野菜の種類とあれこれ』

2017.07.16

こんな症状は危険かも『スマホのウイルス感染症状7つをチェック』

2017.03.15

管理栄養士が教える『デトックスウォーターの美容効果と注意点』

2017.04.01

脇の下を押すと痛くない?『脇コリの解消は 肩こり解消にもつながる』

2018.03.26

元美容部員が教える『自分の肌に合う化粧水の選び方』

2018.08.08

なす、トマト、ピーマン、ししとう…あの野菜も?!『ナス科の野菜の種類とあれこれ』

2017.09.14

指先のカサカサを直したい!『指先の乾燥の原因とケア方法』

2018.03.31

編集部おすすめ『週に1度の作り置きレシピ「玉ねぎ」の常備菜』

2017.08.23

季節の手仕事『自家製キウイシロップ観察日記』

2018.07.01

漬けて使う・合わせて使う『梅味噌の活用レシピ』