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ケノコト独自の視点から、様々な人や場所、物を取材して、WEBをはじめとする色々な場所で公開します。

エッセイ・コラム 2018.11.22

akari’s life style『第1話 山型食パン』

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フードスタイリスト”akari”です。
いつもレシピ記事をお読みいただきありがとうございます。
お陰様で、私のレシピ記事も2年目に突入することができました。皆様がいつも応援して下さるおかげです。感謝の念に堪えません。今後も初心を忘れず、簡単で普段作りできる温かみのある料理、四季折々の旬の食材を取り入れたレシピをお届けできるよう尽力致しますので、宜しくお願い致します。

さて、今回からレシピ記事とは別に不定期でエッセイの執筆をする運びとなりました。その名も「akari’s life style」。
私の想い入れのある食べ物や、暮らしの中で大切にしているものをテーマに据え、それにまつわるエピソードを綴っていく、そんなライフスタイルエッセイです。ぜひお楽しみください。

 

第1話『山型食パン』


パン屋さんに行けば簡単に手に入るけど、手作りは美味しさが違うでしょ?冷めても温かみがあるでしょ?
なんで食パンを焼きたいかって、この人に渡したいから。
パンが大好きで、毎朝欠かさず食パンを1枚食べている“ばあちゃん”に。

ばあちゃんは御年87歳。
私が結婚するまでは実家で一緒に暮らしていたけれど、離れて暮らしている今はなかなか会えない。
87歳になっても毎朝、カリッとトーストした食パンに甘いジャムを塗って食べているばあちゃん、お洒落だね。私もそんなおばあちゃんになりたいな。

ばあちゃんは優しい。
ありきたりな褒め言葉だけれど、本当に優しいのだから仕方ない。
ばあちゃんが怒った姿を見たことがない。
自分勝手で傲慢な私が、欲求を言いたい放題「ばあちゃんあれ食べたい、これ欲しい、あそこに行きたい、これ買って。」どんなに言っても怒らなかった。
学校から帰ってきて、「お帰り」の声を冷たくあしらっても、「これ食べる?」と持ってきてくれたものを「そんなものいらないよ!」と突き返しても、ばあちゃんは一度も怒らなかった。

どれだけ嫌な思いをしただろう。
自分が親になって痛感しているが、子供の欲求に付き合うには気力も、体力も、お金もいる。
未熟な母親である私は子供達に「いい加減にしなさい」と、すぐに感情をぶつけてしまう。私がばあちゃんと同じようにされたら、すぐに叱ってしまう。いや、怒ってしまう。
ばあちゃんのようなことはできない。

ペットショップの前で「うさぎが欲しい!」と駄々をこねたら、「だめ!」と断るのではなく、うさぎを連れて帰って一緒に母に怒られてくれたこともあった。
私だけじゃない、家族からのお願いだって、嫌な顔一つせず引き受けてくれた。
だからばあちゃんには皆、何でも話しやすかった。
決して否定したりしないから。

「優しいおばあちゃんね。」誰からもそう言われてきた。
おおらかで穏やかな女性。
皆に愛される女性。
それがうちのばあちゃん。

そんなばあちゃんに食べてもらいたくて、ばあちゃんとの思い出に浸りながら生地を捏ねて、一次発酵、二次発酵。
こんがりふっくら焼けた食パンを持って、子供達を連れてばあちゃんの元へ車を走らす。


秋晴れの一日。
「ばあちゃん、食パン作ったよ。食べてね。」
なぜか涙が出そうで、視線をそらしてしまった。

外にベンチを置いて、ひ孫と一緒に大好きな食パンを頬張ってもらった。
いつものようにトーストして、真っ赤な苺ジャムをたっぷり塗って。

最近は、たまに私の名前も忘れてしまうばあちゃん。
いまこの瞬間、何を想って食べているのだろう。
楽しいと思ってくれていたら、嬉しいな。
言い尽くせないほどお世話になったばあちゃんに、唯一“祖母孝行”できた事といえば、ひ孫を見せてあげられた事だから。
可愛い可愛いひ孫と、大好きな食パンを食べているこの時間、幸せだと思ってもらえたらいいな。

たまに考える。
いつか ばあちゃんがいなくなる現実を。
想像して、涙が出てくる。
今のうちに祖母孝行しなくちゃと思うけれど、洋服をあげてもアクセサリーをあげても、どこに片付けたか忘れちゃうみたいだし。何をあげたら良いのか分からなかった。

私には「料理」という好きな事があって、
その料理を食べて美味しいと言ってくれる人もいて、
だからばあちゃんにも、私の料理をたくさん食べてもらおうって、最近になって気付いたんだ。
自然溢れるこの場所でばあちゃんが優しく育ててくれたおかげで、
こんなに丈夫な人間になれたお礼を、恩返しをしなくては。

ばあちゃん、ありがとう。
もう少し、長生きしてね。
今度は私が、ばあちゃんの我儘をたくさん聞く番だから。

さよならは、まだしばらく言いたくないからさ。

 

エッセイ 執筆/ akari

1プロフィール
4歳、1歳 兄妹の母。浦和「kurasu_life料理教室」主宰。フードスタイリスト、食育メニュープランナー。野菜をたくさん取り入れること、旬のものを食べて四季を楽しむこと をモットーに毎日料理しています。中国在住経験がある為、中国料理・アジアン料理も好きです。Instagramには、家族の為に作った日々の御飯を投稿しています。

instagram
http://instagram.com/kurasu_life

 

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