
旬食材『牡蠣』ー 海のミルクと言われる栄養豊富な冬の味覚 ー
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冬が近づいてくると通販サイトやグルメツアーに「牡蠣」の文字を頻繁に見かけるようになります。冬においしくなる海の物の一つとして牡蠣のシーズンを楽しみにしている方も多いのではないでしょうか。
地域によっては牡蠣のシーズンは夏?種類によって異なる牡蠣の旬
一般的に多く言われる牡蠣の旬は11月頃からになります。これは秋に出産を終えた牡蠣が再び太り始めて味がよくなって来る事、生食に向いたシーズンが冬である事などからのようです。冬が旬とされているのはいわゆる「真牡蠣」という種類の物で広島、宮城、岡山が有名な産地となります。
牡蠣の旬を表す有名な言葉に、英語圏では「Rの付かない月に牡蠣は食べない」という物があります。5、6、7、8月(May, June, July, August)はダメ、という事ですがこれは牡蠣の産卵期に当たるので味が落ちるから…という理由があるそうです。
ところがこれは真牡蠣の話。日本海側で取れる「岩牡蠣」の場合、旬は春から夏です。実際、岩牡蠣をよく食べる地域だと真牡蠣は遠くの産地からパック詰めされたものなどを食べる事になるので「よその地域の旬食材」というイメージが強い方も少なくないそうです。
野菜が栽培方法の発展によって旬だけでなく年中食べられる物が増えたように、岩牡蠣以外でも夏に食べられる牡蠣が作り出されるようになり、通年食べられる食材として扱われつつあるそうで英語圏でも「Rの付かない月に牡蠣は食べない」という習慣が廃れつつあるそうです。
欧米から逆輸入された牡蠣の生食文化。ヨーロッパとの意外なつながりも。
牡蠣は世界中で食べられている食材の一つで、日本でも縄文時代の貝塚から貝殻が見つかったり室町時代には既に養殖されていたのだとか。ところが、産地から消費地である大阪や江戸に送るまでに今よりずっと時間がかかったためか牡蠣はほとんど生食される事なく加熱調理される食材として扱われて来ました。古くから伝わるレシピは土手鍋や酢締めなど、細菌などによる食中毒を防ぐ方法で調理されています。
実は牡蠣の生食文化は明治以後にヨーロッパから伝わった物なのだそうです。発祥はおそらくフランスで、あのナポレオンも生牡蠣が好物だったのだとか。生牡蠣はフレンチのオードブルの代表でもあり、アメリカでもフランスから移り住んだ人達であるケイジャンの料理として牡蠣を生食する「オイスターバー」のようなレストランがあるほどです。
フランスの牡蠣と日本の牡蠣は実はつながりがあります。かつてフランスではヨーロッパヒラガキという地元原産の牡蠣が食べられていたのですが1970年代以降、寄生虫などで激減したため日本から真牡蠣を輸入して養殖し始め、今では日本から持ち込まれた真牡蠣がその大部分を占めているそうです。そんな縁もあって東日本大震災で宮城の牡蠣養殖に被害が出た時、フランスの牡蠣養殖業者の方達が宮城の牡蠣養殖の復興を支援して下さったそうです。意外な所でご縁があったのですね。
栄養豊富で低カロリーな牡蠣。ただし食べ過ぎには注意
牡蠣は「海のミルク」と呼ばれる事もあります。これは牡蠣が栄養豊富である事が経験的に知られていたからではないかと思います。牡蠣に多く含まれる栄養の一つがグリコーゲンです。これは動物デンプンで、分解されて筋肉でのエネルギー源として使われる物です。
他にも鉄分や造血に関わる成分のビタミンB12など貧血を防ぐ栄養を豊富に含んでいます。
低脂質、低カロリーなので安心してたくさん食べたくなりますが、牡蠣に含まれる亜鉛は不足すると味覚障害や免疫力の低下を招く一方で過剰摂取すると体調不良の原因となる事も。目安としては1日4~5程度で一日に必要な亜鉛が摂取できるそうですよ。
牡蠣はおいしいですが「あたりやすい」とも言われています。体調が良くない時はしっかり加熱して食べるのが安全です。ぜひ体調を万全に整えて旬の味覚を楽しんで下さいね。
記事/ケノコト編集部
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