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エッセイ・コラム 2019.01.28

台所育児エッセイ「暮らしに恋して」 『26 小豆島、醤油トリップ』

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私は食に対し、大人になり自分の目で食材を選んだり疑問を調べることで腑に落ち安堵することが多かった。
好き嫌いはなく食べることが大好きだった私。
でも実は苦手なものはいくつかあった。ただそれに対して嗜好だからと問題視をしなかった。
ただ寿司や餃子、ラーメンという熱烈にファンの多い食べ物が苦手な自分の理由を掘り下げることには興味があった。そうして掘り下げると、寿司に関しては醤油が苦手と気付く。その塩っぱさに負けてしまうから食材が可愛そうと思っていた。
似たような理由で揚げ物にソースを絶対かけなかった…脱線してしまったが、要は単体で美味しいと思えなかったのだと振り返る。
あれやこれや少しばかり否定的に醤油について人より意識して考えてきてしまったからこそ、その出会いに感動して止まなかった。名誉のために、母が料理に疎かったことはない。でもごく一般的なものだった記憶だ。主婦の日々の食事は穏やかな美味しさで充分、ビックリマークがつく「旨い!」はハレノ日や外食で良いのだと思う。でも、ヤマロク醤油に出会い、可能な限り家族にこれを使いたいと思った。事情が許すときはネットで購入し小瓶のまま食卓にあげる。ビックリマークがつく醤油がある頼もしさ。お浸しにしなくても、肉豆腐にしなくても、食材と醤油で1品だ。毎日の食卓に高価な醤油を使うのは現実的ではないが、10回に1回でも選びたいし、服を買うより髪を切るよりそれを選びたい私なのだ。

そして、日本人だもの、醤油ひとつで人生変わるというのは大袈裟でない。ここまでは自分軸であるが、発酵や日本文化を学んできたのでそれらしいことを並べてみる?伝統的な製法で作られたものがもつ旨みや栄養は計り知れない。効率を上げるために自然の営みではなく人工的に発酵を促す。ゆっくりと醸されたもののような旨みを欠く分、人工的な旨みを加える商品も多い。そしてヤマロク醤油のような木桶仕込みは今にも失われそうなのだ。自分が心底美味しいと思って止まないから、家族に食べて欲しいから。そういう理由での消費行動でも、買う行為は存続へのエールのひとつになっていて。昔、木桶で何年もかけて醤油を作っていて、たいそう美味かったそうな。そうなったらさみしい。我が子が大人になって家族を持ち、調味料を選ぶときにその選択肢がなくなっていたらと考えると胸が苦しい。家庭の味、こどもの味覚を作るものだから。家族で想いをより重ねられたらと夏休みの旅の行き先に選び蔵を訪ねた。

その魅力は私にはとても言葉に出来ないので是非「菊醤」「鶴醤」を試して、蔵にも足を運んでいただきたい。醤油作りのみならず、木桶の存続にも先頭に立ち注力されているヤマロク醤油。蔵は働く方の誠実さと誇りに満ち温かで穏やかで、そうありながらも一本の信念で凛とした場所で。

こどもも大人も息を呑み桶を見上げ、菌の存在や自然界を体感する。
この日から醤油はご馳走だと我が家皆が解釈した。高級なハレノ日のものだという解釈ではない。文字通り、美味しいもののために思い馳せ材料を探して奔走してくださったもの、月日をかけなければ作れないもの、自然と共存しこどもを見守るかの如く大切にされているもの。我が家の夕飯が刺身の日は冷奴を添えるのは子供達の発案。刺身醤油があまったら豆腐にかけて最後まで使いたいそうだ。安くて大量に作られるものを否定するような親ではありたくない。こうして日々の食卓を通し、蔵や蔵の人を思い出すたびに幸せになる気持ちだけ。だから私は台所育児を大切に想い、食卓を愛して止まない。

エッセイ/みつはしあやこ

家時間好き4児の母。台所育児エッセイ「暮らしに恋して」を執筆。子育てのゴールは親がいなくても生き抜く力を育むこと=自炊という信念。仕事は暮らし関連全般で多岐に渡るが一応料理家、「和食育こころ」主宰。誰でも簡単に作り置きできるおやつの著書もある。心地よく巡る暮らしの工夫をインスタグラムで毎日更新中。
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