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まめ知識 2019.03.23

日本の暮らしの言葉 春の訪れを知る『桜前線』

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3月も末頃になると「桜前線」という言葉が聞かれるようになります。この言葉が聞かれるようになるとようやく寒さも和らいで春になったと実感するのではないでしょうか。

桜前線は春の訪れを知る唯一無二の気象観測装置

「桜前線」の日時を発表するのはかつて気象庁が行っていましたが、「桜前線」という言葉は正式な名称ではありません。気象用語で前線とは「2つの気団が接触したときに生ずる不連続面」の事を指しますので植物に対して使用する表現ではないからです。
気象庁で行う桜の開花予想については「さくらの開花予想の等期日線図」というのが正確な名称だったそうです。ですが、同じ日に桜が咲くと予想される地域を線で結んだ図解の様子は気象予報での前線図と似ているためマスコミが報道する際に「桜前線」という名称を使い始めてそれが定着して現在に至ります。実際に次々に開花していく桜の様子を伝える図にはしっくりくる名前ですね。

桜前線は春の訪れを知る手がかりとしてかなりの精度を持つ気象観測装置となり、これは世界で他に類を見ないと言って良いものです。一つに、植物を観測の目安にする場合、条件が同じ、あるいはかなり近い物を観測点に置く必要があります。
桜と一口に言っても色々な品種があります。ヤマザクラと八重桜では同じ土地に植えても開花時期が異なってきます。
桜前線の観測を可能にしているのは日本全国に植えられたソメイヨシノの数の多さです。ソメイヨシノは江戸時代に東京都にあった染井村と呼ばれる植木職人さんが多く住んだ土地から作り出された事によって命名された、と言われています。この桜は若木のうちから花を付け始める事や接ぎ木でのみ増やせるなど環境整備のために植樹する上でメリットが多かったため、明治時代に全国に広まりました。これによって、同一品種による多点観測が可能な条件が作られて行ったのです。

「開花」と「開花間近」はどう判断するの?

桜の開花について最初に観測が行われたのは冷害など気象条件からくる被害を防ぐために植物の育成状態などから長期の気象予報を行うためで、開花情報は研究情報の扱いとして発表のために調べる物ではなかったようです。
後に関東地方から桜の開花予報を行う習慣が広まり、北海道の一部や沖縄ではソメイヨシノの代わりの品種を観測対象として全国的に桜の開花予報が行われるようになります。

現在では気象庁に代わり、民間の気象予報会社が桜の開花予報を行っていますが、実際に開花した日がいつかも観測された上で発表されています。
「開花」と判断する定義は会社によって異なるようで、気象庁では5~6輪開いた場合を「開花」、数輪だけ開いた場合は「開花間近」としていました。開花予報を提供しているウェザーニューズでは1輪でも開いた場合を開花としているそうです。

以前、ニュースで桜の開花について特集された中で興味深い出来事が取り上げられていました。その年は冬が長く、春の訪れが例年より少し遅れていて、開花の観測は測候所の近辺の桜が対象となっていたのですが、開花予想日になっても「開花間近」の状態であると発表されました。ところが、午後になって測候所に一般の方から観測に使っている桜が開いているようだからもう一度観測して欲しい、と連絡が入り測候所の方が再度確認すると朝は開いていなかった花が開いており「開花」と判断されその日の午後に改めて「開花」と発表した、という内容でした。

その日の朝は「開花」とならなかった桜は翌日になれば「開花」と判断された事でしょう。けれど、その日のうちに再度の観測を願わずにいられなかった人がいる程に、日本人に取っては桜の開花は待ち遠しいものなのです。
桜の開花は単なる自然現象ではなく、まるで春から人間への寿ぎのようにさえ感じられます。
桜前線はもうすぐそこまでやってきています。満開に咲く桜の景色が見られる日を心待ちにしながら、お花見の計画を立ててみてはいかがでしょうか。

記事/ケノコト編集部

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