
かつての川と人との関わりを示す大切な『川開き』隅田川花火大会のルーツ
目次
夏になると「山開き」「海開き」というように自然に関わる場所へと入る時期の区切りとして「○○開き」と呼ばれる日が設けられている場所が多くあります。
山開きは山が元々神聖な領域とされていた時代の名残。霊場である山に修行に入れるのは修験者のみで、夏の一時だけ入山が許される時期の区切りだったのだとか。
海開きはそれに比べると比較的新しい行事で、海水浴がレジャーとして一般化して「海に入って泳ぐ」という風習ができた事によって安全を祈願する行事として行われるようになりました。トイレや更衣室と言った海水浴に必要な施設を設置し利用できるようになる日の事でもありますが、多くの場所では神職による安全祈願が行われます。
川開きって知ってる?
今では「○○開き」で一番有名なのは「海開き」かもしれません。
ですが、古い時代の海水浴は海で泳いで遊ぶのではなく海水に浸かるのは健康法のような扱いでそれほど一般的な事ではありませんでした。昔の人達にとって身近な水辺と言えば海より川だったのです。
川は海よりも人の生活に密接に関わっていました。河川を利用した運搬力はとても大きな物で、陸地で同等の作業を行えるようになるには、なんと列車の登場を待たなければならなかったのだとか!古代文明は基本的に大河の側で生まれていますが、いかに川が人間に与えてくれる恩恵が大きかったか伺えますね。
山や海と同様に川でも「川開き」という言葉が使われていました。
この言葉が指すのは海水浴のための海開きと近く、かつて夏の暑い日の夜に「川涼み」と言って川辺の桟敷や川舟に乗って涼む行事があった時代にそれを行う時期が来た事を言ったそうです。これは「納涼始め」の儀式であり、同時に花火大会が行われる事も多いようですよ。
鎮魂の儀式でもあった川開き。古典作品との関わりも
川開きが楽しみのための納涼と結びつけられる以前は、元々は旧暦の6月に行われた水神祭が元になったと考えられています。川が暮らしに密接に関わっていたという事は水難事故なども多かったので、安全祈願と水難事故で亡くなった方の鎮魂供養の意味合いが強かったそう。
7月の最終土曜日に行われ、江戸川区花火大会と並んで東京二大花火大会と言われる「隅田川花火大会」ですが、この行事は元々江戸時代に行われていた両国の川開きの日に行っていた水神祭での花火が源流と言われています。
東京はかつて江戸と呼ばれた時代、水運で栄えた都市でした。江戸湾は遠浅で砂がたまりやすいため、大きい港の設置が難しく、大型の船舶が港に接岸する事ができませんでした。そのため佃島の沖に停泊した大型船に小舟で乗り付けて荷物を受け取り、川を使って都市の奥まで直接荷物を運搬する事で流通の効率化を図り、都市として隆盛を誇ることになったのだとか。
また、この両国の川開きですが、旧暦の5月28日に行われていたそうです。この日は日本三大仇討ちの一つ、曾我兄弟の物語に縁の日です。曾我兄弟が親の仇を討ったとされるのが5月28日で、後に二人は罪に問われて斬首されます。その後、兄の恋人だった遊女の虎御前が悲しむため5月28日には雨が降るとされ、その雨は「虎が雨」と呼ばれる事があります。
偶然かもしれませんが水にまつわる謂われがある日に水神祭が行われ、それが後に「川開き」とされていたのですね。
生活様式の変動によって川辺で涼をとる風習は以前ほど盛んではありませんが、それでもやはり暮らしの場に近い所にある水辺はどこか涼しげな気分にさせてくれる物。
特別なイベントがない場所でも安全に気をつけて川辺の夕涼みを楽しむのも季節の楽しみですね。
記事/ケノコト編集部
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