
もっと知りたい日本の郷土料理ー鹿児島県ー『白くま』
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名前がかわいらしい夏の氷菓「白くま」。発祥は鹿児島県鹿児島市と言われています。
最初にこのスイーツが作られたのは1932~33(昭和7~8)年頃。甘味屋さんが考案したのではなく、夏に暇になる綿屋さんが副業として営業していた氷屋さんで、練乳をかけたかき氷を新商品として販売する時に、練乳のパッケージである缶に白くまの絵がついていたので「白くま」の名前で売り出した……という始まりなのだとか。
もう一つの説は、1947年(昭和22年)に鹿児島市の喫茶店「むじゃき」で、同じく練乳をかけたかき氷にみつ豆の材料の三色寒天、羊羹、小豆やフルーツなどを彩りよく飾った物をメニューとして考案し、トッピングに含まれたレーズンが目のように見える事から「白くま」と呼ばれるようになったという物。
白くまは喫茶店などのお店で食べるメニュー以外にも、カップアイスやアイスバーの形で全国的に販売されていますが、メーカーによって上記の二つの白くまのルーツのいずれかを採用しているようですよ。
「白くま(しろくま)」という名前のかき氷は商標登録などで使用を限定されていないので、発祥地である鹿児島では色々なお店でオリジナリティのある「白くま」が作られています。フルーツがたくさんトッピングされたお店もあれば、名前の通り動物の白くまを象った物などオリジナリティが豊かです。食べ比べも楽しめそうですね。
味わいの秘密は練乳ベースのシロップのレシピ
イチゴミルクやレモンミルクのように色鮮やかなシロップと練乳がセットになったフレーバーのかき氷は、全国的に食べられています。お家で作るかき氷に練乳をかけて食べる事もありますが、本当の「白くま」とは見た目からしてまったく違いますね。
実は「白くま」のレシピでは練乳をそのままかけているのではなく、特別なミルクシロップが使われているのだとか。家庭で作る場合はみぞれシロップをベースに練乳とブレンドしたレシピで本場に近い風味が楽しめますが、本場ではお店がそれぞれに工夫されています。
ミルクベースの真っ白な物の他にフルーツシロップと組み合わせた物や、フレッシュフルーツやプリンなどをトッピングして、ミルク風味との組み合わせを楽しめるようになっています。
口当たりの違いは氷と削り機にあり。本場のふんわり食感はカンナ削り
スーパーやコンビニで手に入る「白くま」もミルク風味のかき氷やアイスバーとフルーツ、小豆のコンビネーションの味わいが楽しめますが、本場のお店の白くまの写真を見るとボリュームの違いに驚きます。
あんなに大きなサイズで食べきれるの?と思いますが、ボリュームの秘密は氷の形状とかき氷器。白くまに限らず、専門のかき氷はふんわりしている物が多いのですが、それは大きなブロック氷をカンナ型の刃で削る事によって作られます。
小さな氷を砕くように削ると氷の粒子が細かくなってガリガリ、という感じのかき氷に。屋台などに多い、クラッシュアイスを砕いて作るタイプのかき氷屋さんだとガリガリした食感となります。
カンナの刃で削る大型のかき氷器でけずった氷は、花かつおやとろろ昆布のように薄く長い氷がふんわり層をなして積み上がるので、空気をたっぷり含み、口溶けもふんわりとしてボリュームが出るのです。
これはいわば氷と空気のマリアージュで生まれる食感なので、できたてでなければ味わう事ができません。量販店での市販タイプはミルクベースの風味は楽しめますが、口に入れた瞬間にすっと消える味わいはお店限定の美味しさですね。
鹿児島に行った時は食べ歩きするのも楽しそうですが、全国各所のカフェや喫茶店でも白くまのかき氷が食べられる事もあります。また、百貨店の催事などで鹿児島の物産展あれば、食べられるチャンスもありますので本場に行けない時はそういった機会を狙ってみるのもおすすめです。
人間は古代から冬の氷を保存して夏に楽しむ事を最上の贅沢としていたのだとか。夏でも手軽に氷が味わえる今、新しい伝統の味としてぜひ白くまを楽しんでみて下さい。
記事/ケノコト編集部
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