
『茶の湯の世界へようこそ』ー12. お茶とタイムスリップとパワースポット
目次
おとなの遠足
先日、以前からいつか行ってみたいと思っていたアート施設に思い立って行ってきました。
現代アーティストである杉本博司さんが自身の集大成として作った施設で、“小田原文化財団 江之浦測候所”といいます。
写真の“海景”シリーズが代表作として有名な方ですが、彫刻、造園、建築、料理など多岐にわたる活動をされており、お茶も長年親しまれているようで、こちらの施設には千利休作とされる茶室で国宝の“待庵”を“一分の違いもなく写した“雨聴天”があります。
こちらのにじり口(入り口)からは、春分・秋分の日の朝、茶室の前にある鳥居(古墳時代の石を使用)を通して海からの朝日が差し込む設計となっているそうです。たった2畳の究極のミニマル空間になんというドラマチックな仕掛けが隠れていることでしょう。
“測候所”?
こちらの施設、建築を楽しむことをメインとしたアート施設だと勝手に思っていて、なぜ“測候所”という名前なのか深く考えもせずに訪れたのですが、先述の春分・秋分の日以外でも夏至、冬至の日の出がそれぞれ差し込む構造がありました。
入館の際にいただいたパンフレットの冒頭に杉本さんの言葉でこのようにあります。
「新たなる命が再生される冬至、重要な折り返し地点の夏至、通過点である春分と秋分。天空を測候する事にもう一度立ち返ってみる、そこにこそかすかな未来へと通ずる糸口が開いているように私は思う。」
新しい遺跡
施設内にはこのように太陽に関連する建築の100メートルあるギャラリーや冬至の光が通る道以外に、現代の技術を駆使した光学硝子舞台や海を望む野点席、室町時代の門や井戸、藤原京の石橋、飛鳥時代の礎石、古墳時代の石、縄文時代の石棒、さらには5億年前の化石などなどがいたるところに配置されており、季節を感じることはもちろん、時代や空間を超えたタイムスリップをするような、壮大な遺跡を訪れたような、とても不思議な体験でした。
ある意味ものすごいエネルギーが凝縮されたパワースポットのようなものだと思えますし、実際に私もとても心が満たされた訪問となりました。
お茶をやっていると、日々のお稽古では規模はささやかですが、これに似た体験をすることがあります。
例えば、貴重なお道具は時代を超えて使われますし、外国から渡ってきたものもあります。
着物一つとってみても祖母が数十年前に着ていたものを変わらず私が着ることもあります。
そして、季節を中心に自然をありのままに楽しむこともその一つだと思います。
杉本さんのように壮大な視点で表現することは到底できませんが、気づけばお茶のことと結びつけて解釈している自分に気づきました。
これからも自然とお茶を通して人生を豊かに楽しんでいきたいものだと改めて思います。
こちらの江之浦測候所、機会があればぜひ訪れてみてください。
コラム/すずきりさ
約20年に渡り東京から世界を飛び回る生活をて、結婚・出産を機に地元新潟にUターン。
自然の中での子育てと家族の時間をのんびり満喫する中で、改めて新潟の魅力に気づく日々。茶道の勉強も再開しながらライフワークバランスを模索中。
茶道表千家講師。
その他のおすすめ記事
『茶の湯の世界へようこそ』ー11. 風炉と炉”
『茶の湯の世界へようこそ』ー10. 茶道にも遊びの要素
『茶の湯の世界へようこそ』ー9.お茶菓子のこと
このカテゴリの記事

簡単!ビストロ風ガレットを食材2つで♪『まるごとれんこんのガレット』

やさしい暮らしのヒント『献立を考えるコト』19. 栄養たっぷりの鍋のつ...

大忙しの師走のころ。年末に大掃除をするのはなぜ?

【食育のコト】子どもと楽しむ!おうちでクリスマスパーティー
関連記事

色を暮らしに活用しよう『安らぎカラー”緑色”がもつ秘密ゴト』

太っていても、痩せていてもみんなOK『美しさは人と比較するものではないことに気づくコト』

100人100色―赤ちゃんとパパ・ママの心をハッピーにする手助けを。ベビーマッサージ&サイン講師ー木村佐知子さんのお話し

愛され続ける普段使いの器『DURALEX デュラレックス』のグラス

『茶の湯の世界へようこそ』ーお茶が教えてくれることー

コメント