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得するコト 2020.04.19

日本人に長い間受け継がれている桜を愛する心

「世の中に たえて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし(桜という花がなければ、春をのどかな気持ちで過ごせるのに)」――と、平安時代の歌人 在原業平が桜に浮足立つ人々の心を詠んでいます。桜が昔から日本人を魅了していることがわかりますね。そんな、日本人に受け継がれている桜を愛する文化について調べてみました。

お花見ブームは平安時代に始まる

日本の歴史上はじめて桜を思わせる記述が出てくるのは、古事記にも日本書紀にも書かれている「木花之佐久夜ひめ」(このはなさくやひめ)という神様です。富士山の守護神で上空から種をまき、花を咲かせることが仕事のひとつでした。この花が「サクラ」だったとか、「さくやひめ」の「さくや」が「サクラ」になったとも言われています。
また、とても美しい女神さまでしたが、短命で若くして亡くなったことも、桜の木を象徴する神さまと言われる由縁です。

奈良時代に編集された「万葉集」には、「桜」という言葉が出てきますが、当時は花見と言えば「梅」でした。人々が、梅よりも桜を好むようになったのは平安時代中期から。遣唐使が廃止になり、中国よりも日本古来の文化が注目されるようになったからです。嵯峨天皇が812年に日本で初めてのお花見を催し、831年には天皇が毎年花見の宴をおこなったという記録があります。当時の貴族は屋敷の庭に桜の木を植えて楽しみました。

鎌倉時代以降、武士や一般層にもお花見を楽しむ習慣が広がります。「貴族は桜を上品に楽しむが、田舎者は桜の木の下で大騒ぎをする」――吉田兼好の「徒然草」には、このように花見の様子が記されています。

飲んだり食べたり、現代の宴会スタイルの花見を始めたのは豊臣秀吉。有名な「吉野の花見」では5日間で5000人も出席し、仮装芸も披露されたそうです。「だいごの花見」の参加者は約1300人。各地の名産の食べ物が持ち寄られ、「花見だんご」がふるまわれました。こうした盛大な花見が行われた後、京都の寺社では花見ブームに乗って、桜の木が植えられ始めます。

川沿いに桜が植えられているのはなぜ?

江戸時代には、三代将軍徳川家光の時代に、上野の山を奈良の吉野山に見立て桜の植樹を行いました。数十年ほどで上野は江戸随一のお花見スポットとして知られるようになり、これが上野公園のはじまりです。さらに、八代将軍徳川吉宗は、浅草、飛鳥山などに庶民が花見を楽しむ場所を提供しました。

また、吉宗公は桜を治水工事に利用します。当時江戸を流れる隅田川は、長雨による氾濫を繰り返していました。隅田川全体に堤防を作るには、莫大な予算がかかります。そこで吉宗が考えた方法が、川沿いに桜の木を植えることでした。花見客が大勢集まり、多くの人が歩くことで地面が固くなり、天然の堤防の役割を果たすようになりました。全国の桜の名所が川沿いに多いのは、このような理由があるのです

優雅で風流な「桜ことば」

日本人は昔から、桜の花や花見の様子を美しいことばで表してきました。日常でも使える「桜ことば」を紹介します。

<天候に関する桜ことば>

花曇り
桜の咲くころの薄曇りの天気

花冷え
桜の咲くころ、寒さが戻って冷え込むこと

桜雨
桜が咲くころに降る雨。

桜流し
桜を散らしてしまうような雨。

<花の様子を表す桜ことば>

花がすみ
遠くに群がって咲く桜が、白くかすみのように見える様子

桜影
水辺に咲く桜が、水面に映る様子

花あかり
桜の花の白さで、周りが明るく見えること。

零れ(こぼれ)桜
満開になって、散り零れる桜の花

桜吹雪
吹雪の時の雪のように風に舞い散る桜の花びらの様子

花いかだ
水面に散った桜の花びらが、風により吹き寄せられ流れてゆく様子

花の浮き橋
花いかだとなって流れ着く先にあるのが「花の浮き橋」。水面に散った花びらが敷き詰められた様子

<花見を表す桜ことば>

桜人
花見に訪れる人、桜を愛でる人

桜狩り
桜を訪ね歩いて鑑賞すること

メールや日常会話の中にも「桜ことば」をとり入れ、温かく穏やかな春を心に迎えましょう。

記事/杉本雅美

日々の生活の中で、無理のない程度に四季の変化を感じ、ひと手間かけることを心がけて夫とふたりで暮らしています。フリーのライターとしてインタビューやイベントレポート、暮らしに関することなど、多様な情報をお届けしています。

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